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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

未完結のコメディ2

メカクレ娘のボスキャラとうばつ!

「きゃっほ──ぅ! あたしだ、あたしだ! あたしだぁ──い!」


 閉じられた目に被さる、観音開きのビーム鉄格子。頭の後ろで跳ねる6本セットのビーム刃。深いワインの色を揺らした、長く伸びた髪と髪ドレス。

 幼げな顔のメカクレ(ガール)が、深夜のジャングルを爆走していた。


 もちろん、彼女の頭がおかしくなった訳ではない。今回は目的があって、夜の森を爆走しているのだ。

 ついに彼女は、クソデカ広い切り株へと到着する。木目のグラウンドに、ぐるりを囲む木の皮の壁。そこは天然の闘技場(コロシアム)だった。


 コロシアムですることといえば、何か。そう、コロシアイだ。

 分かりにくかったら説明するが、コロシアムと殺し合い……ころしあ○、という同音異義語をかけたシャレだ。


 さて、話を戻すと、我らがメカクレ娘がコロシアム会場へと飛び蹴りでエントリーを決めたところだ。

 ……ドズゥウウン! 相変わらず乙女には似合わない音と威力を起こしているが、これは彼女の手足指が打撃力を無限に上げるビーム膜に包まれているからだ。決して体重が2トンあるとか、そういう訳ではない。


 とにかく、そんな音と振動を受ければ、この切り株の住民は、いい気分がしない。

 よって、ハイデッカーの森のボスである究極(アルティメット)カカポも、当然の権利として怒りを見せた。


「うお~! 何だ、キサマは!? 我が王国(ザ・キングダム)に何の用だ!」

「久し振り~! 素材、貰いに来たよ!」

「ええい、話す気はないか! ならば、余の雷が天槌をくだす!」

「伝わったのかな? 分かんないか。そりゃそっか、普通は鳥と会話できる訳ないし」

「ポポォ──ッ!」


 究極カカポが前のめりになり、ただでさえデカい巨体を、更に丸くクソデカく膨らませる。

 そして巨鳥は雷を放ちながら、どすんどすんと走り出した。なぜって、カカポは飛べないからね。


「くらえーっ! プラズマくちばし!」

「そんな技……何度も見たよっ!」

「おのれ、かわしたか! しかし、何もない空間を念入りに突いばんでおこう」

「あははっ! かわい~。コイツだけは、何度やっても可愛いね」


 さっと身を翻して、攻撃を避けたメカクレ。彼女が居た空間を、念入りにクチバシで何度も突き込む究極カカポ。彼は鳥なので、避けられたことを忘れるのだ。


「"ネコ爪"でも喰らえ! それっ!」

「いたっ!? う、ウソだろ!? いつの間に背後に!」

「う~ん、怯みやすい! ボスキャラ皆が、こうだったら良いのにな!」


 丸い巨体を揺すって、後退する究極カカポ。メカクレ女は容赦なく、たたみかけるように指カギ爪のラッシュを続けた。


「それ、それっ! てぇーい!」

「うわ~! 羽毛がァ、寝室に羽毛が散るゥ~!」

「えへへっ、掴まえた! キック!」


 怯んだカカポの羽根を掴み、揃えた両足を振り上げる。それに伴ったビームの爪跡が、細デカくカカポを貫いた。


「ギャア~! 余は知っとるぞっ。人間どもは鳥に串を刺して、食らうのじゃ!」

「名付けて、"ネコ足爪"! 待てよ、足ネコ爪の方がいいかニャ?」

「ヒィイイ! 恐ろしい、こ奴は余を「ヤキトーリ」にしようとしておる!」


 カカポはクチバシをくわと開き、体を膨らませてクソデカ雷をまとった。

 小山のようなカカポはスパークを放ち、完全なる雷のバリアを作る。


「あっ、それ! 破るのタイヘンなんだよねえ~」

「それ以上、オレに近寄るんじゃねぇ! もっとも近づいたところで、バリアは誰にも破れんがね」

「なので、仕込んでおきました。ネコ蹴り入れた、"雷"斬り」


 ザキィン! と、斬閃が伸び上がり、カカポが驚愕に目を見開く。

 それもそのはず、放電は弱まり、みるみる雷のバリアが解け始めたからだ。


「な、何だ? 今の音は……それに何だ。余の、余のバリアが……!?」

「さあ、トドメだ! 両手を上げた、サービスポーズでスクショタ~イム!」

「おのれ、キサマか!? キサマが余のバリアに何かしたのだなっ」


 うろたえる究極カカポに、メカクレ娘が剥き出しの両腕を振り上げる。

 その頭髪から胸を覆う髪までビームがはしり、裸の横乳と腋を伝って、頂点の開いて曲げた両手指へと放電を伴って集中する。


 そして、メカクレは両手を振り下ろし、


「おのれ~! 何をした、ねえ何をしたのっ。返せ、我が雷を返せっ」

「ビームいちばんっ。"ネコ爪"ギロチン!」

「うわあ、眩しい! 返せ、オイ返せ! 何かスゴい攻撃が刺さったから、急いでバリアを張らんと!」


 クソデカいビームの爪が突き刺さり、しきりに喚く究極カカポ。

 ひとしきり彼は騒いだのち、


「──えっ。攻撃が……刺さってるゥ!? う~ん……」


 自らの体の状態に気づいて、ショックを受けて気を失った。

 究極カカポの体が爆裂し、辺りに綺麗な羽根が舞い落ちる。メカクレは急いで羽根を掴み、使えそうなやつを選んだ。


「へへっ。今回は3つも取れたぞ! それじゃあ、また後でねえ」


 数分後、メカクレは砂漠地帯に居た。

 今度は宝玉ガナフに用があるのだ。太く短い龍を模した機械の体を持つ彼は、すぐに地面に潜る強敵だった。


「"ネコ爪"! 外したっ。ねえ、潜らないでよ~!」

「損傷率30パーセント……問題ありません。戦闘を続行します」

「クソッ。動きを止めたいな……少し怖いけど、まあいいか。この辺りに他の人は居ないし、こいつはボスだから人間じゃないし」


 何やらブツブツ呟くと、メカクレ娘は目もとを覆う仮面──鉄格子のビーム扉に両手をかけた。

 斬撃音が鳴ると、あっさりと扉は開き、バコンと観音開きでメカクレ娘の両目を晒す。こいつの呼称どうしよう。


「急激なビーム値の上昇を確認。先手を打って攻撃します」

「君、フラガラックとか持ってないよね~? じゃあ、とくと見よ。我が呪われし宇宙色の眼を!」

「音速突破。キバ槍ボンバー」


 警戒のため地面から抜け出し、中空を舞っていた宝玉ガナフが、尖った口を向けて突撃する。その加速たるや、当たれば砂嵐を掻き消す威力だ。

 もっとも、それは当たればの話。元メカクレ娘は目をカッと見開き、透明な厚い睫毛に飾られた、2つの眼を見せつけた。


 娘の眼窩には、常に蠢く宇宙が、眼球のように膨らんで入っていた。チカチカと星々が瞬き、闇が辺りを支配する、あの宇宙だ。

 宇宙には当然、太陽がある。娘は開かれた扉に両手を添えて、目から強烈な熱閃を放つ。


「虹彩認証を開始。個人情報を開示します……失敗。彼女の眼は人間ではありません」

「闇を切り裂け! (くる)るフラッシュ!」

「センサー類が故障しました。彼女は人間ではない……敵性実体の再定義を中断します。損傷修復」


 ボカァン! 空中で宝玉の目を爆発させて、よろめき地に潜る機械龍ガナフ。

 気が済んだので目を閉じて扉も閉じたメカクレ娘は、もちろん怒って扉を開ける。


「ちょっと、潜らないでってば!」

「損傷率65パーセント……問題ありません。潜行を続行します」

「続行すんな、そんなもん! 再び見さらせ、宇宙眼の神秘!」


 バコンと開かれ、宇宙が露出する。その目から無数の熱線が放たれる。

 たちまち地面は泡立って、砂煙と共に龍を吐き出した。


「損傷率95パーセント。甚大な被害です……自己修復。失敗」

「宇宙線による、あぶり出しバースト! 待てコラ、逃がすか!」

「逃避行動を開始。地面への潜行が有効です」

「"空間"斬り。ハッ!」


 扉を閉じたメカクレ娘は、控えめな胸の端に両手を添える。

 すると胸の前で長デカい斬閃がはしり、地に潜りかかった宝玉ガナフの尻尾を、凄い勢いで引っ張り始めた。


「機体後方に異常な引力を確認。脱出不可能」

「斬られた空間が、埋め合わせを欲している。そんなに潜りたいなら、僕の胸においで?」

「脱出、不能。戦闘の続行、不能。計測、」

「なんちゃって。クロスチョップ"ネコ爪"! え~い!」


 バギィン、ズバンッ! ビームの爪跡がバツ字に交差して、ガナフの装甲が欠片となって飛び散る。

 彼は一言、「──ガ」とだけ残して、爆発四散。世を去った。


 メカクレ娘は折り曲げた指を、ナイフのように舐めて、ゴキゲンに唸る。チロチロと舌を動かす様は、彼女の脳が完全に猫と化していることを如実に現していた。


「ニャア~ゴ……」


 さて、再び森の切り株。リポップした究極カカポは、メカクレに卵を投げ渡した。


「おのれ、初対面で襲ってくるとわわ~! 喰らえい、たまご爆弾!」

「いい~っ!? 返す」

「うわ~!? 返すな、受け取れ~!」

「わあっ、重い! 持てない! 持ってよ!」

「えっ、可哀想。余は強いから、余が持つよ」


 ヒョイ、と卵を取り上げるカカポ。メカクレは怒った顔をして、たまご爆弾を取り返した。


「ちょっと! それは僕のだ!」

「何!? フザけるな、余のだ!」

「んっ! 僕のだよ!」

「コラッ。返せ、余のだ! ああ、お帰り余の卵ちゃん」


 奪って奪われ、奪われては又奪い……ついにカカポは卵を手に入れ、巨体を活かしてメカクレには届かない位置へ持ち上げた。


「あーっ! 返してよおっ」

「あははは……返す訳がなかろう。さあ、余と共に眠ろう卵ちゃん。うん!」


 足もとのメカクレを押し退け、卵を顔のそばに持ってきて、満足げに頷く究極カカポ。

 すると、彼の顔は一瞬にして爆炎に包まれた。轟音の中に入り混じる両者の悲鳴。


「ぎえ~っ! わ、ワナか! 卑劣、な……」

「キャアアアッ!? ば、爆弾だったの!? 危なかった~……」


 ドパァアアン! 究極カカポが破裂して、木っ端微塵になった。損傷ダメージが、彼の限界を上回ったのだ。

 散らばった羽毛を回収して、メカクレ娘は困った顔で笑う。


「ああ~……3つだ。1個ぶん余っちゃったよ」


 どうせ多くドロップするなら、早めにくれたら良かったのに。そう言い残すと、彼女は闘技場をあとにした。

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