11. 約束のペンダント
呪文を唱えると、ライラの首輪が光りだしました。まばゆいほどの光です。
それからロア、ブレッド、ジュリアン、カジの四人の首に金のネックレスが出現しました。うずらの卵くらいのペンダントがついています。
「安心なさい。そのペンダントは単なる目印です。首輪のようなペナルティはありません。ライラとの間に約束が継続している証明です。約束が破棄されるか、約束が叶えられると消滅します。婚約者の証だと思いなさい」
その説明で「なるほど」と理解したのはロアだけでした。
オネイロスがさらに話しを続けます。
「ようするにですね、ライラは首輪の制約により約束を破れませんが、あなたがた男性陣は『約束を破棄する』ことを選択できるということです。たとえば『結婚をあきらめる』と宣言してペンダントを外したら、それでペンダントは消滅します。3名が約束を破棄して、ペンダントをしているのが残り1人になったら、ライラはその1人と結婚して約束を叶えることができます。あるいは全員が約束を破棄する場合もあるでしょう。ともかくすべてのペンダントが消滅すればゴールということです」
「つまり、ボクがこのペンダントを外さない限り、ライラから一方的に婚約破棄されないってこと? カジと結婚するのを阻止できるんだね?」
ジュリアンがルールを確認しました。
オネイロスが大きくうなずきます。
「その通りです。ただしペンダントが消滅する条件が『約束の継続』なのは注意してください。つまりジュリアン、あなたはライラと交わした『自分の気持ちを偽らない』という約束を破ってはいけません。もしも約束を破ったら、その瞬間にペンダントは消滅し、ライラとの婚約も破棄されるということです。良いですか?」
ジュリアンが「わかった」と答えます。首にかけているペンダントがピカッと発光しました。
オネイロスは続けてブレッドをさします。
「ブレッド、あなたは『喧嘩をしない』という約束を破ってはいけません」
「おう。もう生意気な若造に挑発されてもキレたりしねえよ。そうすればライラと結婚できるんだろ?」
ブレッドがうなずきましたが、ライラが「ストップ」と止めます。
「そうじゃなくて、乱暴しないでって言ってるの。物理的な戦闘を禁止にして。会話による解決を目指して欲しいから口喧嘩は許可する」
「はい。ブレッド、あなたは『戦闘を禁止』します」
ブレッドは「マジかよ」と言いましたが、オネイロスから「約束を破棄するのですか?」と言われるとしぶしぶ承諾しました。ペンダントがピカッと発光します。
「カジ、あなたは『死ぬ』ことを禁じます」
つぎはカジです。カジの命はアンネリーゼに握られています。自分が死ぬとわかっているのです。承諾できずに悩んでいると、ブレッドが横から口を挟みます。
「なんだそれ? そんなの当たり前のことだろ? 死んだら結婚できないのは全員そうだ。オレたちと比べてカジだけ条件が軽すぎる」
「言われてみればそうだな。せっかくだ、違う約束にしないか?」
ブレッドの発言にカジも乗ることにしました。しかしライラは首を横にふります。
「カジは自分の命を粗末にしすぎる。死んでも英雄になると思ってる。そういう態度を禁止して」
ライラがそういうと、オネイロスは「うーん」と悩んでこう言いました。
「そうですね、こうしましょう。カジが死んだ場合には『ベラムールの国民からカジの記憶が消える』というペナルティを追加します。これなら死に花を咲かせようとは思わないでしょう」
カジのペンダントがピカッと光りました。
「絶対に死なないでよ」
「ああ。任せておけ」
ライラの言葉にカジが神妙な表情でうなずきました。
「最後にロア。あなたは『初恋を清算』しなさい」
「ヒック、もちろんだ、ヒック、約束する、ヒック」
ロアのペンダントがピカッと光りました。
「ロアのやつ、やっぱり変だよ」
ジュリアンがそう言いました。全員同じ意見です。ロアだけが「なにが?」と言う顔をしています。
「オレは、アモとかいう女が怪しいと思う」
カジがそう言いました。やはり全員が同じ意見です。
ロアはヤレヤレとため息をついて反論します。
「アモは大丈夫だよ」
「どこが大丈夫なんだ? 逆に聞かせてくれ、オレには大丈夫な所がわからねえ。アモって女の全部が怪しいぞ」
ブレッドがそう言いました。もちろん全員が同じ意見です。
ロアが何か反論しようとしますが「ヒック、ヒック」としゃっくりに邪魔されて沈黙しました。
「まずロアを治そう。アモの正体をつきとめて、なんとかする」
ライラがそう提案すると、ロアをのぞく全員が賛成しました。
「わかったよ。アモにはすぐ出ていってもらうよ」
ロアもしぶしぶ納得します。
怪盗団の目的は、ひとまず「アモをなんとかする」に決まりました。作戦参謀であるロアが変な状態では、これ以上計画は進められません。
ライラたちは、バカになったロアを治すことにしたのです。




