神崎隼人はストーカー?
僕の名前は神崎隼人。
三歳の頃からサッカーボールを蹴り始め、中学では神童とも呼ばれていた。
毎日、毎日、凡人達よりも倍努力し、食生活にも気を付けていた。
これだけストイックだったのだ。
中学では、キャプテンに選ばれ、夏の県大会準決勝まで勝ち上がった。
ここまでは当然の結果だ。
僕は才能があり、努力しているわけなんだから。
「神崎キャプテン! 今日勝てば決勝ですね!」
「あぁ、僕達なら必ず行けるさ!」
「それにしても、すでに高校からスカウト来てるんでしたっけ? やっぱスゲーやキャプテンは」
「そんな事ないさ、来年はお前にも必ず来るさ、俺が保証する」
「本当っすか! くぅ~!なら頑張らなきゃですね!」
「これより試合を始めます!一同礼!」
相手は無名の中学だった。
練習試合も組んだ事なかったということは、弱小チームのはずだ。
試合は前半を三点リードで折り返した。
守りは練習しているが、攻撃は甘い。
後半にもう一点を入れ、残り十分に差し掛かっていた。
「よし、この試合はもう十分だろ」
「神崎! 下がって田中を入れる!」
僕の温存か。
正直まだ、物足りないが、ハットトリックもしたし、大丈夫だろ。
僕は勝利を確信して、フィールドを後にし、ベンチに下がる。
「選手の交代をいたします。五番赤松君に代わりまして、十八番矢野君」
向こうも交代か。
おそらくベンチの三年を思い出作りにでも出したか。
その時点でお前達は気持ちで負けてるんだよ!
最後まで勝ちに拘らないと、勝てるわけないんだから。
「矢野! 頼んだ!」
何だ?
向こうの陣形が、矢野のワントップどころか。
矢野以外全員ディフェンス寄りじゃないか!
いくら守った所で意味が……。
「へっ! そんなんじゃすぐに取られますよ! こんな風に!」
「よし! もう一点!」
後輩は、矢野から完璧にボールを奪取し、そのまま敵陣へ攻める。
あの矢野という男はボールタッチをみたところ、ほぼ素人。
今さら追い付けんだろ。
「!?」
なぜだ。
違和感がある。
敵チームの選手が誰一人プレッシャーに来ない。
素人だからか?
「すいません、今日勝たなくちゃいけないんで、ボール奪います」
いつだ。
僕が敵チーム後方へ目をやった瞬間、矢野はすでに、後輩の目の前まで戻りきっていた。
そんな馬鹿な。
後輩も、足が遅いわけないんだ。
小学生と高校生がやってるんじゃないんだ!
そんなすぐに、差を詰めれるわけ。
「くそっ!」
後輩はフェイントをしながら矢野をかわす。
矢野はフェイントに引っ掛かりながらも、左足を地面に突き刺し、強制的に右へステップする。
そして、ボールに足を引っかけて奪う。
「なんだコイツ!?」
「止めろ!」
矢野は止まらなかった。
足運びは完全に素人だ。
コイツ、目で見て反応だけでかわしてやがる!
前に出たキーパーをかわしてシュート。
終わってみると、五点入れられ逆転負けした。
「キャプテン! 俺たちっ!ごめんなさい!」
みんな泣きながら謝ってきた。
確かに悔しい気持ちは僕にもあった。
だけど、それより僕は興奮していた。
あれぞ、まさしく天才!
誰も敵わぬ天より授かりし力。
僕はこの上なく興奮していた。
「宇美中学、矢野海人…」
翌日、僕は県大会決勝を訪れた。
矢野は必ず全国へ行く。
アイツのプレーをもう一度見たい。
「キャプテン、アイツ何処にもいないですよ!」
「そんなはずない、トイレでも行ってるのか?」
僕達は会場中を見渡したが、試合が終わるまで、彼の姿を見ることはなかった。
宇美中学は決勝で負けた。
なぜだ、なぜ出ない………。
「矢野~~~!!!」
後日、僕は宇美中学を訪れた。
学校でもアイツは有名らしく、聞き込みに苦労はしなかった。
「矢野君は私達と同じクラスだよ~!」
「本当! 今どこにいるかわかる?」
「うーん、今日は休みだったし、私も家までは知らないしな~」
「彼って、どこの高校に行くか聞いてる?」
「確か、近くにするって言ってたから、宇美第一高校じゃないかな」
「なるほど…ありがとね!」
サッカーでは無名校だな。
アイツはサッカーやらないつもりなのか…。
そんなの嫌だ。
アイツと同じピッチの上に立って、最高の舞台に上がりたい。
「お母さん!ただいま~!」
「お帰りなさい、隼人。どう、高校は決めた?いろいろ推薦の話は来てるけど?」
「うん、お母さん…ごめんなさい、僕…公立高校に行きたいんだ」
「別にお金の心配はしなくていいのよ隼人。学費免除の高校もあるんだし、サッカーに集中できる環境がいいと思うの」
「うん、ありがとうお母さん。でも、もう決めたんだ…俺、宇美第一高校に行く!」




