俺は、絶対にモテない!
今日からの高校生活。
俺は絶対にモテるわけにはいかない。
女にも、男にも……。
「母さん! それじゃ行ってきます!」
「ごめんね海人、お母さん仕事で。本当は行きたいんだけど……」
「大丈夫だよ、母さん。もう心配要らないから」
「お兄ちゃん! コウコウセイ、ガンバってね」
「あぁ、久美、お兄ちゃん頑張るから、久実も小学生頑張ってくるんだぞ」
「うん!」
今日から俺は宇美第一高校に入学する。
近場というだけで選んだ学校だ。
この三年間、俺は堪え忍ぶ必要がある。
確か学校はこの角を右だったな。
ガン!!!
俺は角を曲がった際に、他人とぶつかってしまった。
「きゃっ!!」
そこに居たのは、知らない女子高生だった。
おい。
おい、おい、おい、何だこのベタ過ぎる展開は~!
まずい。
これは恋に発展する可能性があり得る。
どうにかしなければ……。
「あの……すみません、私急いでて、大丈夫ですか?」
ここの選択肢は重要だぞ。
普通ならば、『大丈夫ですよ、そちらこそお怪我はありませんか』とでも言うだろうが、俺はそういかない。
ここは悪く、そしてなるべく傷つけないような配慮を。
「俺に話しかけるな。お前のせいで時間を無駄にしてしまったな」
「ひぃっ!!!」
己に発せられた言葉に処理が追い付かず、固まった女子高生を横目に、俺は学校へ向かう。
退屈な入学式も終わり、クラスの顔合わせがあるらしい。
まぁ、どんなやつがクラスメイトだろうと、どうでも良い話だな……。
「宮瀬中学校から来ました九条美咲です。趣味は読書です。よろしくお願いします!」
わー、普通の挨拶だこと。
まぁ、どうでもいいんだが、俺は普通じゃあいけない。
俺の目指すは、クラスで一番低評価の男。
立派なことや、普通じゃいけねぇ……。
「若松中学から来ました、矢野海人といいます。趣味は人をバカにする事です。どうか俺に話しかけないで下さい。以上です」
よ~し、これで完璧だ。
俺の評価は地に堕ちたはず。
皆が俺を見てはいるが、そこに高評価の眼差しは無い!
「えっーと、冗談だよね……」
前の女性が話しかけてきた。
なんだ、この俺の言葉に怯まなかったのか?
まずい、こいつに止めを差す必要がある。
なんでもいい、世の女性に軽蔑される一言を!
「黙れこのメス豚が!」
「なっ!」
ちょっと言いすぎたか……。
どうだ……。
まぁ、仕方あるまい。
「おい、矢野君、あとで職員室に行こうか」
何!?
先生が反応してきた。
これは予想外だ!!!
まさか、先生がここで突っ込んでくるとは……。
目上の人には礼儀を守らねばならん。
だが、ここで良い生徒を演じては水の泡か……。
はぁ、なんか疲れてきたな。
まぁいいや、先生には素直に答えるか……。
「わかりました、先生」
クラス全員の自己紹介が終わり、皆が家に帰る。
俺は先生と共に職員室へ向かった。
「よし矢野、ここに座れ」
「はい」
「お前なぁ、初日であの言い方はないぞー。なんかムカついたのか?」
ん?
どうやら先生は、俺が八つ当たりでもしたのかと考えているのか?
「すみません先生、初日ということで緊張してしまって……」
「お…おぅ、まぁ気を付けろよ」
「はい、僕気を付けます」
「よし、何かあれば先生に相談しろよ、いいな」
大人に対して態度が悪いと、逆に心配されて、余計にやりづらくなる。
先生に対しては、模範態度でいく。
さて、帰るか……。
校門を出て、家へ向かう。
職員室へ行っていたせいで、クラスの皆とは帰る時間が少しズレたようだ。
俺にとっては好都合。
誰とも合わずに済むからな。
うん?
あれは!?
道端に黒い皮財布が落ちている。
高そうだな。
うわ! 中も現金やら身分証が入っている。
これはすぐ、交番に届けなければ。
「おーい! 矢野、何してんの?」
「!!!」
なぜこいつらがここに!?
まだ帰っていなかったのか……。
マズイ、俺が財布を交番に届けると言えば、俺は真面目な生徒なんだという噂が広まるやもしれん。
ここは、悪い印象を何とか与えなければ……。
「貴様らか、財布が落ちてたんで、中身を抜いていた所だ」
どうだ、我ながら悪い演技ができたものだ。
これで、こいつらが俺を不良とでも思えば、好都合。
「駄目だよ矢野君! ちゃんと元の状態で交番に届けないと、持ち主も困っちゃうよ!」
「そうだよ矢野、やめときなって」
くそ、思いの外怖く感じなかったのか。
普通にマジレスされたんだが……。
「ふん、仕方がないな……」
しょうがない、ここは渋々交番に届けるという事で手を打とう。
確かこっちに交番があったはず
「すみませーん! 財布が落ちてたんですけど!」
「ん? おぅ、ありがとな君! 今どき立派な高校生だな。えっと、じゃあここに落ちていた所と名前くれるかい?」
名前を書く
財布の持ち主は実は同じクラスの人物
警察が俺の名前を持ち主に教える
持ち主が子供に俺の名前を教える
クラスで、俺が真面目なウワサが流れる
それはダメだ~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「あの、匿名希望でお願いします!」
「あっ! 待って君!?」
俺は全速力で帰った!




