表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛と幸せを一つに結ぶ 理創郷の七星物語  作者: 天无
ロールプレイングゲーム星
4/36

レオとの出会い

 俺たちは腹を満たすと、休んでいた廃墟から外に出た。

 食べ物は手に入ったが他は何もなかったな。

 廃墟を探索するのは止めて、別の場所へ進んでみるか。

 結愛を連れて当てもなく歩き始めた。

 こんなことなら、ガブリエルにこの世界のことを聞いておくんだったな。


「どこへ行くんですか?」

「うーん。特に目的地がある訳でもないからなあ」


 ガブリエルは世界に物語が存在すると言っていた。

 だから簡単に言えばその物語を結末へ導けばいい訳だ。

 ただ肝心なこの世界の物語が何なのかが分からない。

 前の世界ではドラゴンという明確な障害があったから、それを乗り越えればいいと分かった。

 この世界にも明確な目的が見つかればいいのだが。


「あっ。あそこに誰かいますよ」

「本当だ」


 誰かが廃墟の壁に寄りかかり、腕を組んで考え込むような素振りをしている。

 少し怖そうな風貌だが、同時に強者のようにも見えた。


「あの人に話を聞いてみたら何か分かるかもしれません」

「そうだな」


 確かにここでは会話が重要な情報源となるので、結愛の言う通りに話しかけることにした。


 その人物は俺と同い年ぐらいの男性で、凛々しい顔立ちをしている。

 程良く筋肉質な体には、俺が持っているものよりも大きい剣と立派な盾を装備していた。

 彼もドラゴンのようなモンスターと戦っているのだろうか。

 側まで近づいたので彼を呼びかけてみる。


「おーい、そこの人……」


 直後、爆発のような音が響き渡る。

 地面は激しく揺れて、辺りに砂ぼこりが立ち込めた。

 突然の出来事にとっさに両手を地面に突いて、倒れないように身を固める。


 揺れが収まると、砂が目に入らないよう薄目で音がした方向を確認する。

 するとそこには、えぐれた地面から飛び出す大蛇のようなモンスターが現れていた。


「何だ、あれは……」


 その廃墟を超える巨大さと、蛇とは似つかないゴツゴツとした胴体に俺は驚愕した。

 おまけに立派な角を生やしていて、その姿はモンスターと呼ぶに相応しい。


「そ、そんな」


 不意な出来事に結愛は狼狽えていた。

 彼女のそんな姿を見て俺は思い出す。

 結愛のことは俺が守らなければならない。

 俺は剣を抜き出し、モンスターの動きを見据えた。


「結愛、俺の後ろにいろ」

「はっ、はい」


 奴の様子を見るがこちらを気にしていない。

 さっき話しかけようとした男性に狙いを定めているのだろうか。


 するといきなりモンスターは叫び声を上げて暴れ始めた。

 そう、彼がモンスターを剣で斬りつけたのだ。


 彼は手慣れた動きで相手の攻撃をかわし、次々に剣で斬りつけていく。

 いつの間にかモンスターの体には何箇所にも傷がついていた。


 彼は剣を手前に引くと、トドメを刺すかのように奴の胸の中心を貫く。

 刃を抜くとモンスターは倒れて動かない。


 彼はしばらくの間、その亡骸を静かに見つめていた。

 俺たちはそこへ歩いていくと、彼の背中に声をかける。


「あのー」


 話しかけると、彼は顔だけ振り向いて言った。


「お前、兵士か?」

「いや、兵士じゃないけど」

「ずいぶんと立派な剣を持っているではないか」


 彼は俺の腰にかかっているものを見つめている。


「これは知らない人から貰ったんだ」

「知らない人から? 優しい人がいたもんだな。だが盾を持っていないではないか。それでいざという時にどう自分の身を守る?」


 言われてみれば俺は防具を持っていなかった。

 結愛を守ることしか頭になくて気づかなかったな。


「確かにな。でもドラゴンは剣と魔法だけで倒せたよ。魔法があれば必要ないんじゃないかな」

「何っ。お前ドラゴンを倒したのか?」


 彼の表情から驚いていることが分かる。

 ドラゴンを仕留めることは結構すごいことなのかな?


「うん。まあ初めての戦いだったからまぐれかもしれないけどね」

「初めての戦闘でドラゴンを倒しただと?」


 それを聞いて彼は不機嫌そうな顔つきになる。

 こちらへ近づいてくると、俺を威圧するかのように詰め寄ってきた。


「貴様、どんな手を使った?」

「どんな手って、剣と高く跳べる魔法を使っただけさ」

「それだけで戦闘の経験もない素人が、ドラゴンを倒せるはずがないだろう!!」


 彼は俺を強く怒鳴りつけた。

 しかし俺はなぜ彼がこんなにも怒っているのかが分からない。

 嘘はついていないし、隠し事もしていないのだが。


「さっきのモンスターを見たか? あれは俺みたいに鍛錬を積んだ戦士だったから倒せたんだ。なのにいきなりドラゴンのような大物を倒せるはずがない!」

「でも倒したのは事実だよ。別にいいじゃないか。倒したことにそこまでこだわらなくても」

「良くない!!」


 彼は怒っていたが、同時に悔しそうにも見えた。

 何かこのことに関係する事情でもあるのだろうか?


「なあ、何でそんなに熱くなってるんだ? 何か理由があるのか?」

「……お前には関係ない」


 そう言うと彼は地べたに座った。

 俺は彼にどう接すればいいのだろうか?

 結愛は心配そうにこちらを見ている。


「名前は何て言うんだ?」

「聞いてどうする?」

「名前ぐらい聞いてもいいだろ?」


 俺が答えを促すと、彼は渋々と教えてくれた。


「……レオだ」

「レオか。カッコいい名前じゃないか」


 レオは表情を変えず、返事も返さなかった。

 彼の事情をしつこく追及するのは止めて、当初の目的であったこの場所のことについて尋ねる。


「俺たちこの場所に来るのは初めてなんだ。だから何か知っていたら教えてくれないか?」

「ふん。自慢の次は要求か? いい身分だな」


 レオはそっぽを向きながら悪態をついた。

 この態度、完全に嫌われちゃったな。

 モンスターを倒してもらっておきながら、機嫌を損ねてしまった罪滅ぼしにレオの話を聞くことにする。


「なあレオ。君はここで何をしていたんだ?」

「……」


 レオは話しかけても無言を貫いた。

 だが俺は気にせずに話を続ける。


「さっき廃墟にもたれていただろう。休憩していたのか?」

「単純だ」

「えっ?」


 レオは空を見上げると静かに答えた。


「戦って休んで。戦って休んで。それを繰り返していた。ただそれだけだ」

「なぜそれを繰り返してるんだ?」

「強くなるためだ」


 レオはそう言いながら立ち上がった。


「お前、ここのこと何も知らないのか?」

「ああ。ていうかこの世界へ来たばっかりだ」

「なら目的は何だ? ここで何がしたい?」

「目的は……」


 俺は自分の目的を再確認するために考えを巡らせた。

 結愛を守ること、この場所の情報を集めること、元の世界へ戻る方法を見つけることなど色々と目的は思いつく。


 しかしここでガブリエルの言っていたことを思い出す。

 彼は確か前の世界の物語は終わりを迎えたと言っていた。

 ということはこの世界にも物語が存在していて、それを進めていくことが俺の目的なのではないか?


「俺の目的は物語を終わらせることだ」

「物語?」

「ある人が言っていたんだ。この世界には物語が存在していて、それが結末を迎えたら次の世界へ連れていくと」


 話を聞いてレオは不思議そうな表情をしていた。

 物語のことは知らないのか?


「初めて聞く話だな。その物語はどうすれば終わるんだ?」

「前の世界ではドラゴンを倒したら終わった。だからここでも何かを倒せば終わるんじゃないかな?」

「モンスターならいくらでもそこら辺にのさばっている。どいつを倒せばいい?」

「それは……」


 俺は言葉に詰まった。

 どのモンスターを倒せばいいかなんて分かるはずがない。


「それが分からなければ話にならない。俺に手伝えることもない」


 レオは振り返り立ち去る素振りを見せる。


「待ってくれ! 俺たちも一緒に連れていってくれ!」

「一緒に来てどうする? 俺はモンスターを倒すだけだと言ったはずだ」


 レオは歩みを止めなかったが、俺は引き下がらなかった。


「それでもいい。ここのことは何も知らないんだ。ついて行けば何か分かるかもしれない」

「なら勝手にしろ」


 レオはずんずんと進んでいく。

 俺も結愛を連れて彼について行った。

 こうすることで何か進展があればいいのだが。

 俺たちはレオに加わって三人で旅を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 俺に手伝えることはない……少しは手伝おうかなって思ってはいたんですね( ´∀` )
[良い点] ロールプロイングゲーム星。 果たして如何なる星なのか。 そして新たなキャラが! レオ、これは味方になるフラグか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ