奴隷の恋
Aという国が在った。隣国にBという国が在った。二国は戦っていた。或る日の戦いでは、A国が勝利を収めた。戦に負けたB国の姫は、そのまま拉致され、奴隷に堕ちた。姫は名を甲という。
A国の若き将軍、名を乙という。彼が王城に召された時に、玉座の脇に控える甲を見つけた。甲も乙を見つけた。二人は恋をした。然し、甲は奴隷で、乙は将軍。まさかこの恋が認められるわけもなかった。
乙を想う人が居た。A国の王女、名は丙という。丙は乙が又戦へ出向き不在の際、自室に甲を呼んだ。丙は甲に対し、
「乙はお前の国の軍によって殺された。」
と虚偽を述べた。丙は嘘を吐いた。丙は乙が誰かに恋している事に気が付いていた。そして、啜り泣く甲を見て、甲が乙を愛していることに確信を持った。丙は怒り狂い、憎悪に燃えた。
暫くして、乙が無事戦から還った。A国の王は、勝利の褒美は何が欲しいかと乙に言った。乙は捕虜達を王の眼前へと連れ、彼らの解放を願った。王は其れを許した。甲は捕虜の中に、自らの父を見つけた。B国の王である。王はその身分を隠し、B国の王は死んだと虚偽を述べた。
A国の王は、解放には条件があると言った。平和と安全の証として、甲の父が人質にとられた。
又、王は乙に対して、
「娘である丙と結婚せよ。」
と命じた。王が娘の恋心に気が付いていたのか定かではない。然し勝利の褒美として娘を差し出したのは、王の多大な好意の表れだった。丙はひどく喜んだ。反対に甲は激しく絶望した。
乙と丙は、後日、祭司長と共に神殿に入った。二人は此処で愛を祈る手筈だった。
然しそこに、人目を盗んで甲が現れた。甲は、
「これが貴方との最後の別れと言うのならば、私は、この大陸を流るる○川に身を投げましょう。」
と嘆いた。又其処に甲の父が現れた。父は甲に対して、乙からA国の情報を引き出せと命じた。甲は苦悩しながらも、祖国の為に想い人を裏切った。
其れからすぐに、王から全てを知らされ、乙は自分が祖国を裏切ったことに気が付いた。そして其れを後悔した。
其処に、丙と祭司長が現れた。甲とその父は逃げおおせたが、乙は捕らえられた。丙は乙に対し、
「私に一切の愛を注ぐなら、私は貴方を救いましょう。」
と言った。然し甲を愛する乙は其れを断る。乙は死罪となった。墓の中に、乙は生き埋めにされた。
なんと、其処には甲が居た。甲は乙の境遇を予見して、ここで待っていたのだと言う。そして甲は、
「貴方の腕の中で死にたい。」
と言った。二人は天国で結ばれることを祈りながら、墓の中で生き絶えた。




