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大海賊時代より……美少女船長の生・配・信! ─West India Company─  作者: 海凪ととかる@沈没ライフ
事業拡大編

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サミエラは警備部門を立ち上げる

なかなか書き終わらず、長くなって遅くなったorz

 サミエラが奴隷商人のジョージ・パーシグから奴隷購入のおまけとして貰ったショーゴたち3人の私物と武器は無事に3人の手元に戻り、身を切る思いで一度はそれらを手離していた3人は感極まって涙を流す。


「もう二度と(まみ)えることは叶うまいと思っていたこの刀をよもや取り戻せるとは……」「ははっ……わしのパイプじゃ」「姫様、ほんまに返してくれるん? 姫様所有のまま貸与でもええのに……」


「かまわないわ。あなたたちの武器は特殊すぎてあなたたち以外ではまともに扱えないでしょうしね。たぶんジョージさんもそのつもりでこれをアタシにくれたんでしょうし。……良かったわね、ジョージさんがこういう物を収集する好事家じゃなくて。特にショーゴの刀はかなりの業物だから一度手離して戻ってきたのは奇跡に近いわ」


「む、姫様はこの刀の価値をわかっておられるのか」


「修理に預けた鍛冶師では日本刀の分解と組み立ては出来ないからね。鍛冶工房でアタシが分解と組み立てをしてきたから銘もこの目で確認したけど、これは古備前派の流れを汲む福岡一文字派の名工、助真(すけざね)の手による物ね」


「なっ!? そこまで!?」


「これほどの名刀になると家宝のはず。それを持っているショーゴは一族の中でもかなり高い立場だったんじゃない?」


「はっ。俺は能島村上(のしまむらかみ)家の跡取り、ここにいる権之助と漣もそれぞれの家の跡取りの筆頭と目されておりました」


「ゴンはその八咫鴉(やたがらす)の紋からして雑賀衆(さいかしゅう)よね。土橋家って確か鈴木家と並ぶ雑賀の豪族だったと記憶しているのだけど?」


「おう、その通りですじゃ。袂を別った鈴木家は幕府の鉄砲指南役になり、わしの土橋家は毛利家の庇護下にありましたじゃ」


「なるほどね。ナミがくノーなのはその装備を見れば分かるけど、その訛りからして伊賀の流れかしら。どこの家の出なの?」


「うわぁ……訛りまで理解しとるって姫様ほんとに何者なん。確かにうちは伊賀の藤林家の末裔やけど」


「藤林……百地、服部と並ぶ伊賀の三上忍ね。ふふ、村上水軍に雑賀衆に伊賀忍者なんてずいぶんと懐かしい顔ぶれだこと」


「え? それってどういう……」


「ああ、こっちの話だから気にしないで。それで、なんで村上、土橋、藤林の跡取りたちが揃ってアボットの船に乗っていたのかしら?」


「それは──」


 そして、ショーゴたちの口から周防衆の成り立ちから、ショーゴたちがアボットの船に乗り組んだ経緯、オランダまでの大航海、ヴェルデ岬沖での海賊との戦いとその後の嵐での船の沈没までが語られる。

 なお、1人だけ日本語が分からないロッコにはサミエラが同時通訳した。


「はー、そりゃまた遠い国から来たんだな。日ノ本ってなぁ東洋の果ての黄金の国ジパングと東方見聞録でマルコ・ポーロが紹介してたとこだろ? まあ俺にとっちゃ嬢ちゃんが言葉が分かるだけじゃなくてこいつらの文化に精通してるって方がよっぽど驚きなんだがな」


 ロッコの感想にサミエラは肩をすくめるだけで返し、ショーゴたちに向き直る。


「……あなたたち、ずいぶんと数奇な運命と稀有な経験をしながらここまで来たのね。でも、その経験は決して無駄にはならないわ。それに、これほど経験豊かな船乗りたちをこのタイミングで迎えられたことはうちの商会にとっても大きな意味があるわ。これからの働きに期待してるわよ」


「はっ。我ら全員を迎え入れ、ここまでよくしていただいたご恩、我らのこれからのご奉公によってお返ししたいと存じます」


「いいわ。さて、あなたたち3人はそれぞれの一族の戦の術を継承しているのよね?」


 サミエラの問いかけに3人が揃ってうなずく。


「ならここからは仕事の話よ。うちの商会はこれからもっと大きくなるわ。隠すべき秘密も増えるし、敵も増えるわ。だから商会を守るために警備部門を設立するつもりよ。あなたたち3人にはその隊長格を務めてもらうわ。まずショーゴ」


「はっ」


「あなたは元々この3人の中ではリーダーよね。あなたを警備部門の責任者に任命するわ。今は3人だけだけど、これから人数を増やしていくからしっかり訓練を施して勇敢で強い海兵を育て上げて、きっちり統率しなさい」


「仰せの通りに」


「次にゴン、あなたの銃は口径が一般的なマスケット銃と違うし、そもそも弾その物が特別仕様だから他の銃と同じように運用するのは難しいわ」


「そらそうじゃな」


「だから、うちの商会で使う銃を全部ゴンの銃の規格で統一することで効率よく運用できるようにするわ」


「な……んじゃと?」


「今回、鍛冶工房を買い取ったから。そこでこれからゴンの銃と同じ口径で同じ弾を使える新型マスケット銃と専用の弾を生産してもらおうと思ってるわ。警備部門の新人のうち、素質のある者を選んで訓練して銃士隊を組織しなさい」


「おうっ! 姫様には驚かされることばかりじゃ。じゃが雑賀銃が評価されるのは嬉しいのぅ。期待にお応えできるよう頑張りますじゃ」


「次にナミ、あなたには諜報と防諜を担う専門部隊──つまり忍びの育成をお願いしたいと思っているわ」


「……立ち上げからやと形になるまで数年単位でかかると思うんやけどええん?」


「もちろん。アタシもそんなにすぐに優秀な忍びが育つとは思ってないわ。まずは情報収集と情報を広めるための組織を目指してほしいわ」


「それやったらいけるかな。なによりまずうちがイングランド語を完全に習得せなかんけど」


「そこはまあボチボチで頑張ってもらえばいいわ。そもそも、今のうちの商会にはまだ明確な敵はいないからね? あくまでも将来の事業の拡大によって対立するであろう相手への備えとしてお抱えの忍び衆が欲しいってことだから」


「んー、わかったー。やってみるわ。危険のある忍び働きはとりあえずうちがやればええしね」


「アタシは忍びの重要性を知ってるから、忍びを軽く扱うことはしないわ。危険に見合うだけの待遇は保証するし、必要な備品や消耗品はこちらで用意するから、いるものがあるなら遠慮なく言ってちょうだいね」


「……うち、姫様のためやったら死ねるわ」


「気持ちは嬉しいけど、ナミはもうアタシの身内よ。軽々しく死ぬなんて言わないで可能な限り生きて戻ることを優先してね」


「……むぅ、姫様は人たらしやわ」


 頬を膨らませるナミにショーゴとゴンもうんうんと頷く。

 サミエラが全員を見回してオランダ語で言う。


「さて、商会での全員の役割はとりあえずこんな感じだけど、この役割で組織を回せるようになるのはまだ先の話よ。今はまだ人数が少ないから役割は関係なく全員で動くことになるわ。さしあたって、明日はこのメンバーで実際に船を動かしてみるわよ。定数には足りてないけど明日はあくまで近海を少し遊弋(ゆうよく)するだけだからなんとかなるでしょ」


「船はスループでしたかな?」


「ええそうよ。最近ドックに入れて上横帆(トップセール)船首マスト(バウスプリット)を追加したんだけど今までは人がいなくて動かせなかったから試航海もまだなのよ。一度動かしてみて艤装なんかに改善できるところがあるか調べたいのよね」


「ふむ。人数が少なくても動かせるのが縦帆船の強みですからな。それにナミはマストの上だと1人で5人分は働きますから楽しみになさってください。他の若者たちも腕利きの船乗りです。……お前たち、明日はご主人様に良いところを見せるチャンスだぞ?」


「「「ヤー!!」」」


 やる気を見せる奴隷たちにサミエラが楽しそうに笑う。


「ふふ。お手並み拝見ね。楽しみだわ」



~~~



【その時、歴史を動かしたCh 考証解説Vol.7 パーソナリティー:Sakura&Nobuna】


Sakura「村上水軍と雑賀衆と伊賀忍者の組み合わせのなつかしかことねぇ?」


Nobuna「そうじゃのぅ。妾の生きた時代の延長線上ではないこの世界で、村上水軍と雑賀衆と伊賀忍者が揃って部下になるとは妾もワクワクが止まらんのじゃ」


──銃だけでもあれだけ進化してたんだから、ショーゴとナミの能力も期待大wktk

──Ninjyaという響きだけでワクワクが止まらん♪

──それなっ! わかりみしかない

──ニホントウって鉄も斬れるってマジ?

──飛んでくる銃弾を見切って切り捨てるってマジ?

──……


Nobuna「銃弾を切るのは無理じゃが条件が揃えば鉄の(かぶと)を叩き割る達人は戦国時代にはおったのぅ」


Sakura「そんなことして刃は欠けんと?」


Nobuna「達人がやるとなぜか欠けんのじゃよなぁ。妾は出来んかったからどうすればそんなことが出来るのか説明のしようがないんじゃ」


Sakura「それはしょうがなか」


──よかよか

──それよりゴンの銃を統一規格にするって言われた時の鳩が豆鉄砲食らったような顔w

──たった1丁しかない高性能銃のために専用の部品や銃弾を作るのが現実的じゃないなら、いっそ全部高性能銃にしちゃえってね

──鍛冶工房まで買い取ってハードごと入れ替えるなんて普通思わんわな

──経営の多角化と統一規格で無駄を省くんやな

──……


Sakura「サミエラさんは干し果物にせよプレハブ小屋にせよ銃の製造にせよ、同じもんば作ることに徹底しとらすね」


Nobuna「そうじゃの。じゃが、機械化による産業革命以前のすべて手作業のこの時代に統一規格を導入する意味は大きいのぅ。例えば銃の場合、一応口径が決まっておっても工房毎に微妙にサイズが違うから性能にばらつきがでるわけじゃが、ゴールディ商会では同じ工房製の銃と弾丸で揃えるから性能のばらつきがでんし、いざという時は共食い整備も出来るわけじゃ。戦場における部品の互換性の高さは馬鹿に出来んのじゃぞ」


──WWⅡ時代のアメリカがそれやってたな

──統一規格で効率よく大量生産するわ、戦場でもニコイチ整備ですぐ復帰させるわ、敵からすると悪夢だよね

──日本の場合、同じ零戦でも三菱製と中島製では部品の互換性がなくてニコイチに出来ないこと多かったし(太平洋戦争を日本側でプレイ済み)

──M4シャーマンはええぞ(太平洋戦争をアメリカ側でプレイ済み)

──チハタンばんじゃーい!!

──よろしいならば戦争だ

──……




この時代はマスケット銃にしろ大砲にしろ、規格が大雑把にしか決まってないので弾のサイズをあまりタイトにすることができませんでした。ある砲にぴったりサイズの弾でも別の砲にはキツすぎて入らないということになってしまうので。実際に発見された沈没船にはイギリス製、フランス製、オランダ製の大砲が一緒に積まれていたこともあります。


なので大きめの砲控に小さめの弾を入れ、隙間を布で塞いでいましたが、それでは当然、発射の際の火薬の爆発力に無駄が出てしまうのでどうしても性能は下がります。


砲と弾の規格統一により、砲控にぴったりサイズの弾を運用出来ることになるので、サミエラが多少無理してでも鍛冶工房を買い取って規格を揃える価値がありました。


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