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捨てネコのような私と君  作者: 玉田 響
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第四話

待ち合わせ場所に指定された正門に急いで向かう。


またしても野間先生に捕まってしまい、手伝いを強いられていたので、待ち合わせ時間を十分ほどオーバーしてしまった。


タイミングの悪さは自覚してるけど、この先何度も手伝わされる未来が鮮明に見えてしまう。


「すみません先輩、遅くなりました!」


 バスケ部で鍛えているだけあって、校舎から正門までのダッシュくらいならそう息も上がらない。

「大丈夫だよ。じゃあ行こうか」


「はいっ!」


 正門を出て東の方へと歩いていく。


私の家とは逆の方向だ。


私の家は西側にあるから、登下校どちらも正面から日を浴びることになる。毎日続くと意外とストレスなんだよね。


先輩の家は学校から徒歩十五分の場所にある。だいたい一キロくらいの距離になるかな。


「佐藤さんって何かペット飼ったことあるの?」


先輩が気を利かせて話題を振ってくれる。


「一度もないですね。その代わりスマホで動物の動画見たりして癒されてますよ。先輩は何か飼ってたんですか?」


「いや、俺も一度もないよ」


「じゃあ子ネコたちの世話大変じゃないですか?」


「昔よく遊んでた友達がネコを飼ってたから、全く分からないわけじゃないよ。それに飼い方は調べようと思えば調べられるからね」


「子ネコの種類って分かってるんですか?」


「拾った子たちだから絶対じゃないけど、調べた限りだとロシアンブルーだと思うよ」


 ロシアンブルーは、銀色の光沢を放つ毛並みとエメラルドグリーンの大きな目が特徴。


飼い主に忠実で、犬と似た性格と言われている。


口角が上がってほほ笑んでいるように見える点から、その表情は「ロシアン・スマイル」とも呼ばれる。


「いいですねロシアンブルー!」


「三匹ともロシアンブルーだったし、大きさも同じくらいだから三つ子じゃないかなと思うんだけど」


「先輩は名前の候補何かあるんですか?」


「ネーミングセンスには自信がないからね。こういうのは女の子の方がいい名前つけられると思ってね」


「そうでもないと思いますよ・・・」


 ネコの名づけの話があった後に、糸央里は自分と彼氏(ミナト君)の名前を合わせた「いなり」って名前を推していた。


糸央里の惚気に巻き込まれる子ネコが不憫すぎるので即却下したけど。


「まぁ実際に見てみないとイメージ湧かないよね」


「そうですね。性格から名前が思いつくこともありますし」


その後他愛のない話を続けること十分。先輩の住むアパートに到着した。


 白を基調とした外装には、目立った汚れは見られない。


そのアパートは一階と二階に三部屋ずつの計六部屋。


先輩の部屋は二階の奥にある。


(先輩、もっと綺麗な一戸建てに住んでるイメージだったけど)

 もちろん「こんな古くて汚いアパートには入れない」なんてこと思ってない。


上品さすら感じる先輩の立ち振る舞いを見て、

良いところのお坊ちゃんといったイメージを勝手に持って島ていた。


 ガチャ


 先輩が扉の鍵を開ける。


「さぁ、上がってよ」


「お邪魔します」


 内装は1K。部屋とキッチンをつなぐ引き戸は空いていて、玄関からでも様子が窺えた。


八畳ほどの広さで、床はフローリング。


靴を脱いで上がるとテレビ、机、ソファ、テーブル、ビッドと必要最低限の家具だけが置かれていて、テーブルの下にはカーペットが敷かれているけどは黒一色というとてもシンプルなデザイン。


綺麗にしているというよりも生活感があまりないように見える。件の子ネコは部屋の奥にいた。


「飲み物入れてくるから、適当にくつろいでてよ」


「ありがとうございます」


 先輩がキッチンへと向かったので、私は子ネコに近づいた。

「こんにちは~」


 二週間ぶりのネコとの触れあい。どうしても頬が緩んでしまう。

「佐藤さん、紅茶は飲める?」


「はい、大好きです」

 お湯を沸かしている音が聞こえる。キッチンの音ってなぜか落ち着くんだよね。


ネコと触れあい始めてから五分。紅茶を入れた先輩が戻ってきた。


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