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幼馴染との同居生活  作者: 鳴子
付き合ってからのお話と、聡太と有紗

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聡太の決意

「お邪魔します」


 俺は、そう言ってから有紗のお父さんがいるリビングに入った。今までで一番真剣なんじゃないかくらいの声を発した。

 その時、雑誌を読んでいる有紗のお父さんの指が、ピクッと少し動いた。しかし、それ以外は何も反応せずにそのまま雑誌を読み続けていた。


(俺の話なんてもう聞きたくないってことか……)


 そう思い、少し弱気になっていた。すると、それに気づいたのか有紗が耳元で囁くような声で話しかけてきた。


「大丈夫よ。だから少し落ち着いて」

「おう」


 有紗の励まし答えるように俺は、小さくそう返した。


(弱気になるな! 山吹聡太! 俺は覚悟を決めたはずだろ)


 俺はそう自分を勇気づけるように、心の中で呟いた。そして頬を叩いて気を引き締めた。


「有紗さんのことで話があります」


 俺は有紗のお父さんに真剣な面向きで話しかけた。前のヘラヘラしていると思われた時とは、全く違う顔だ。

 それに気がついたのか、有紗のお父さんは読んでいた雑誌を置いて、


「……何だ」


 と、聞く体勢をとってくれた。

 俺は話を聞いてくれるという嬉しさがあったが、断られた時のことを思い出して、ありえないほどの恐怖と緊張で心臓の音がバクバクと鳴り響いていた。

 この場にいるのは、俺、有紗、有紗のお母さん、そして有紗のお父さんだ。

 その四人がこの場で沈黙を貫いている。皆んなは、俺の言葉を待っている。しかし肝心の俺は、緊張やら恐怖やらで、体が動かない。


『有紗さんとの交際を認めて下さい!』


 その一言だけで良いのに、その一言が出てこない。金縛りにあったみたいだった。

 不安に思ったのか有紗はこちらに顔を向けてきた。しかし声はかけてこなかった。声をかけることができなかったと言うべきか。

 この場で喋って良いのは、俺と有紗のお父さんだけ。そう思わせるほど重たい空気が漂っていた。


「話さないならもう行くぞ」


 俺が何も話さないと思ったのか、有紗のお父さんは席を立った。行ってしまう。

 こんなにも支えられて、応援されてここまで来たのに、何もせずに終わってしまうのか。


 嫌だ! 絶対にそんな事、してはいけない。

 俺は圭人に助けられた。有紗は結衣さんに助けられた。そして有紗は俺が言葉を発するのを待っている。

 その思いを踏みにじる事はできない。

 もしそんな事をしたら、圭人と結衣さんは罪悪感で俺たちに近づきにくくなる。ここまで用意したのに失敗を生んでしまったという罪悪感だ。

 そして有紗は失望するだろう。一番信用している人に裏切られるみたいなものだ。

 そんな状況で、俺は何もせずに終わろうとしているのか。皆んなを裏切ろうとしているのか。そんなことをしたら絶対に悔いが残る。

 そう思うと体が勝手に動いた。


「待ってください!」


 この重たい空気の中、俺の言葉が響いた。その時に一瞬だけ有紗の顔が見えた。

 不安そうな顔ではない。まるで望んでいたことが実現したような、嬉しそうな顔だった。

 俺はその顔を見て完全に決意が固まった。

 俺は誰も裏切らない! 絶対に今回の問題にけりをつけてやる。

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