俺と幼馴染の過去
「来たぞ」
「ああ、ありがとな」
俺は聡太と会う約束をして、あの話をすることになった。
「じゃあ話してもらおうか」
待ち合わせした場所の近くにあったカフェに入り話をすることにした。
「ああ、少し長くなるけど」
「大丈夫だ」
俺は一回深呼吸をし、覚悟を決めて、話始めた。
「俺と結衣ってずっと一緒にいたんだ。向こうの家も色々あって結衣は、よく俺の家に来ていたんだ」
「うん」
「それで小学校の頃もよくうちに来て、泊まったりなんかもしていた。ああ、もちろん俺の親や、妹が居たけどな」
それで寝る場所を取り合いしてたりしたな。
「小学校の頃はそれでもよかったんだ。二人でずっと仲良くしていれば……。でも」
「中学か……」
俺は聡太の言葉を聞き、頷いた。
「結衣が、モテるようになったんだよ。いきなり成長して、雰囲気も変わった。中学一年の最後の方だったよ」
たった一年足らずで、見違える程に変わったからな。元から可愛かったが、それは子供を愛でるような可愛さだった。
でも中学からは、恋愛対象としてみられる可愛さに変わっていた。
「対する俺は、何事に対してもズボラだったから肌も荒れて、髪もボサボサ。そんな男が、学校で1番モテてるんじゃないかってくらいモテてた結衣に近づいているんだ」
「嫉妬……か」
「そう。最初は何も言われなかったし、何もされなかった。でも俺はなんとなく気づいてたんだ。このままいたら結衣の迷惑にもなるって。だから俺は結衣と距離をとった」
そこから結衣とは喋らなくなるつもりだった。
「でも、結衣は、俺の方へずっと寄ってくるんだ。まるで自分が可愛くなったことに気づかずに」
だから結局は距離をを取ることは出来なかった。
「それから二年生の夏休みに入る前だったかな。ちょっとしたいじめを受けるようになった……」
「物を隠されたりか?」
「うん」
最初はそんな物だった。物を隠されたり、多少の暴言を吐かれたりするだけだった。
それくらいならって俺は耐えていた。
「でも結衣に寄るなって強くは言えなかった」
「…………」
「いじめを打ち明けるなんてもっての外だった。それにこれくらいだったら、結衣の悲しい顔を見る方が辛かったし」
あの時は本当に軽かった。いじりと言われても差し支えないくらい。
「でも、俺が結衣から離れないって知るとやることが過激になった」
「暴力?」
「それもあった……。他には、弁当の日に弁当の中身を全部捨てられてたり、筆箱の中身が何も残ってない時もあった」
「…………」
聡太は聞くに耐えないような顔をしながら、聞いていた。
「それから、俺は結衣を完璧に無視するようになった。結衣に何かされたら嫌だったし。二年生の十一月くらいかな。それくらいからは結衣はなかなか笑わなくなっていんだ」
もう二度とあんな顔は見たくはない。
「それでも、俺は最低でも結衣がいないところで、いじめを受けていた。あいつら、結衣のことが好きだからな。嫌われたら駄目だからだろうな」
「クソだな」
聡太はそう言って歯を食いしばった。
「いや、でも俺はありがたかった。結衣にバレるのだけは阻止しないとって。そうしながら俺はいじめを受けていた。しかし、三年生の体育祭の予行練習の時だったな」
「…………」
聡太はなんとなく悟ったような顔をしていた。
「うちの学校って土曜日に予行をやって、日曜日に本番をするんだよ。だからその日は弁当が必要だった。でもその弁当を捨てられ、俺が持ってきていた水筒の中身も全て捨てられたよ」
あの時は本当にやばかったな。
「しかも朝に。俺が押さえつけられて、目の前でトイレに流された」
「…………」
「それでも、予行練習はやらなくちゃいけなかった。でもお茶なし飯なしはキツかった」
「せめて水道水は飲めなかったのか?」
聡太はそう聞いてきた。
「せめてそれだけでも飲みたかった。でも、俺が何処かに行こうとすると、跡をつけてきて、水道水を占領するんだ。その結果俺は予行練習の最後の方で倒れた」
「…………」
俺はもう途中から予行練習の記憶は残っていなかった。最後の閉会式をする直前で倒れたと聞いた。
「俺は、熱中症だった。あとちょっと遅かったら後遺症があったかもしれないって」
「だろうな」
聡太は怒っているような、悲しそうな複雑な顔をしていた。
「そのあと色々聞かれたけど家族に迷惑をかけたくないし、結衣にバレたくなかった。だから自分のせいだって俺はそう言った」
あの時はしんどかったな。本当に。いろんな人にどうしたんだって聞かれて。
「でもやっぱり付き合いが長いと隠し通せるもんじゃないよな。1番隠したかった、家族と結衣にバレた」
「それは……」
「それから、親はここから離れた場所の学校紹介してくれた。他にも色々やってもらった。本当にありがたかった」
「結衣さんは?」
「結衣は本当にヤバかったよ。「私のせいだ」って言ってずっと落ち込んでいた。本当に鬱になりかけってレベル」
「ああ……」
「それでも毎日俺のところには来てたんだ。その時は入院していて俺は学校に行けなかった時だった。それでもずっと結衣は病院に居たんだ」
本当にずっと学校を休んでまで。
「俺は大丈夫だって言ったんだ。でも私のせいだからと言ってそれだけは譲らなかった」
あそこまで頑固な結衣を見たのは初めてだったな。
「それから俺は変わろうと思った。こんなにも家族を心配させて、結衣を悲しませて……」
「それでかっこいいって言われるまでになったのか」
「ああ、結衣に頼んでいろいろな事を教えてもらった。肌をきれいにする方法とかをな。それでずっと一緒に居るようになってから結衣も少しずつ、自分を取り戻していったんだ」
「それを踏まえて今があるってことか」
「ああ、結衣は別に俺と同じ学校に行く必要なんてなかったんだ。でも来るって言って聞かなかった」
「まぁ、そりゃ心配だろうな。それにお前をいじめた奴と同じ学校に行くなんて嫌だろ」
「まぁな。——まぁこれが大まかな俺の、いや俺と結衣の過去だ」
俺は全てを言い切り「ふう」と大きな息を一つついた。
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ようやく二人の過去を書けました。ここからどうなるか見届けてくれると嬉しいです




