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偽ワールドカップ2026

 2026年スイスワールドカップ。日本は決勝トーナメントにて、ベスト4をかけ、現在私の目のテレビで戦いを繰り広げている。思えば日本も強くなったものだ。2022年はベスト8であった。今年こそはやってくれる優勝の可能性も大いにある、というのが世界の認識だ。しかし現在の相手はフランス、強豪中の強豪だ。ミエルにトーマス、最強の2トップはもはや誰にも止められない。日本最強のキーパー、川口能活(51)でも止めることはできず、前半が終わった時点で「日本1-2フランス」だ。


 日本も得意の細かいパス回しから、藪瀬岡やぶせおかの鋭いクロスが相手ディフェンダー、チョトスのケツにあたり、オウンゴールではあるが一点をもぎ取っている。ボールポゼッションでは、圧倒的に日本が優位で62パーセントとなっている。ただ、シュート数は2(0)だ。フランスは12(9)だ(括弧内は枠内シュート)。それでも、前半終わって2失点しかしていないことは川口のおかげといっても過言ではない。と言いたいが、そこは日本最強のスイーパー、阪上山さかがみやまのおかげだ。なんと阪上山は枠内シュート9本中5本を止めている。ピンチの時はキーパーの後ろにポジションをとり、その優れた反射神経でボールを掻きだすのだ。実況のおっさんがその度に「お前がキーパーやれよ。」ってつっこんでいたのが印象的だ。お、そろそろ後半が始まるな。


 後半は圧倒的にフランスペースだ。さすがフランスだ。2022年、ウィーンワールドカップで優勝しただけの事はある。しかし、再三のチャンスも、阪上山を中心とした最強ディフェンス陣がことごとくシャットアウトしている。すごいぞ。


 そして後半29分日本は最大のビックチャンスを迎えた。ゴール正面22メートルの位置からフリーキックだ。蹴るのはもちろんこの男、島村谷しまむらたにだ。笛が鳴った。決めろ、島村谷!おっとトリックプレーだ。島村谷サイドに待機していた藪瀬岡にパスだ。「おいーー!!!」さすがに実況のおっさんも怒っている。「藪瀬岡、フリーで敵陣を突っ切る。そして鋭いクロスを上げた。待っているのは元ブラジル人の長身フォワード、マルセイオロス南元晴みなみもとはるだ。南元晴飛んだ。密着マークをしていたフランスのチョトスも飛ぶ。……………決まった!ゴール!決めたのはこの人、またしても、チョトス(のケツ)!またしてもオウンゴールだ!チョトス項垂れている。この大舞台で二度のオウンゴール、二度のヒップアタック。これはフランスが負ければ戦犯扱いは否めないでしょう。それにしても日本、見事なトリックプレーから同点弾を叩き出しました。」うむ。実況の言うようにチョトスが可哀そうだ。なんにしても同点。時間はあと15分ある。日本、勝てるかもしれない。


 試合が動いたのは後半ロスタイム。逆転弾は日本お得意の細かいパス回しから生まれた。20本ぐらいの細かいパス回しから島村谷がワントップの南元晴にキラーパスを送った。しかし、南元晴、チョトスの猛烈なタックルを受けパスを島村谷にリターン。島村谷はそのボールをスルー。後ろにいたのはボランチの藤山本ふじやまもと。藤山本はシュートを打つと見せかけ、サイドに流れていた藪瀬岡にパス。藪瀬岡、更にサイドを切れ込み、ゴール前に鋭いクロスを上げた。しかし、このクロスはフランスの守護神トレーゼンゲがファインセーブ。延長突入かと思われたその時、奇跡が起こった。なんとキーパーの弾いたボールが、何も知らずに南元晴を密着マークしていたチョトスのケツにヒット。もうお分かりのようにボールはそのままゴールに吸い込まれていった。


 大歓声が鳴りやまない。キックオフとほぼ同時に試合終了の笛。日本は初めてベスト4に駒を進めたのだ。世界でも初であろう、逆ハットトリックを決めたチョトスは、フィールドで倒れたまま起き上がれない。まるでいつかの日本の英雄、中田を見ているようだ。対照的に日本のイレブンは大はしゃぎだ。藪瀬岡は俺が決めた、みたいな顔で監督や選手に抱きついている。いや、でもすごいわ。私は感動で胸がいっぱいだった。しばらくしてヒーローインタビューが始まった。最初は藪瀬岡だった。


アナ「おめでとうございます。初のベスト4ですね」

藪瀬「いやー、やったわ。これはすごいわ。」

ア「藪瀬岡選手がすべての得点の起点となりましたね。」

藪「いやー、あれは、こう言ったら何なんですけどラッキーですわ。」

ア「すべてがオウンゴールを少し煮え切れない結果でしたね。」

藪「いやー、そういうこと言うなや。勝ちは勝ちや。」

ア「………次の試合に向けての意気込みをお願いします。」

藪「いやー、次もいっしょや。勝つために戦うわ。」

ア「ありがとうございました。」


 藪瀬岡はニヤニヤしながらカメラに向かってガッツポーズを決めた。その顔は、まさに天狗であった。そして、次のインタビューは日本代表の監督だった。


ア「続きまして、東西北ひがしにしきた監督です。監督、おめでとうございます。」

監「うん、ありがとう。」

ア「すべてがオウンゴールと少し煮え切れない結果でしたね。」

監「まあサッカーは勝った者が強いからね。そこはどうでもいいと思います。」

ア「しかし、日本は結果シュート数3、枠内シュートは0でした。」

監「……………いいじゃないですか。勝てば。」

ア「……………次の試合に向けての意気込みをお願いします。」

藪「いやー、次もいっしょや。勝つために戦うわ。」

ア「なんでお前が答えんだよ!」

藪「!?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 肩甲骨先生、作品、読ませてもらいました。チョトスの笑える不幸が、会心の一撃ですね!この戦術?が、もしか世界で流行りだしたら、サッカーの歴史が変わるかもしれません(汗)尾底骨って大切ですね(笑…
2009/02/28 08:31 退会済み
管理
[一言] 肩胛骨トミエさん、はじめまして。 「勝ちは勝ちや」「いいじゃないですか。勝てば」 本当にその通りですよ。 日本がワールドカップでベスト4!そんなシーンを見てみたいですね。 ジャンルが“戦記…
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