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協力中の敵と暗躍

土魔法で作った穴に、全力疾走していた他班の生徒達が落ちていく姿を見て、ソフィーはにやりと笑みを浮かべた。

持ち前の身体能力と《身体強化》を駆使したソフィーは、既に砂漠を抜けて森に入っている。


「《幻翼》を使ったら早いんだけど…仕方ないなぁ」


なるべく使わないで!と厳命されていたことを思い出し、なるべく静かにその場でジャンプをした。


「前方に魔力反応が1、2、3ヶ所…とりあえず、潰しておこう」


魔力を込めた眼で生徒がどこにいるのかを何となく確認し、事前に見た地図と照らし合わせて、近い場所から順に奇襲の計画を立てる。


「ソフィーなら1人でも出来るでしょ、かぁ…」


誰よりも…もしかしたら自分よりも自分のことを理解しているかもしれはい姉からの、揺らぐことのない信頼を力に、ソフィーは駆け出した。



ソフィーが罠作りを終え、奇襲作戦を始めようとしていた頃。


湖の水面に薄い氷を張り、その上を走って渡ってから、他班の位置を確認したのだが。


「…やけに反応が偏ってるなぁ」


湖側からの襲撃は、今の所ない。

砂漠側から攻めて来た人数から考えると、まさかとは思うがー


「複数の班が手を組んでいる…?」


対抗戦に参加しているのは99人で、内5人は仲間だ。

残る94人全員が仲良く共闘するとは思えないが…班員の上限は10人で、地図に書かれていた丸は12個(私達を含む)あった。

その半分の6班くらいが協力していてもおかしくはない、か。


「作戦のつもりなのかもしれないけど…探す手間が省けたよ」


気配を消して、1番反応が大きかった場所へ近付く。


向こうは隠れる気がないようで、しばらくすると声が聞こえてきた。


「ーおい、本当に上手くいくのか?」


「大丈夫だろ。流石の特待生も、数十人を相手には出来ないはずだ」


「しかも、たったの5人しかいないしな」


ーやっぱり、手を組んでたね。


こっそり様子を窺うと、数人が円になって外側を警戒しているのが見える。

円の内側には、それぞれ違う色の布を腕に巻いた生徒が7人いて、彼らの手には宝となる魔法石が握られていた。


ー7つの班が協力態勢…


各班2人ずつ自分達の宝の防衛に回して、他全員で私達を襲撃したのか。

たったの14人、こっそり無力化することは可能だが、それより簡単な方法がある。


「ーアイス」


小さな氷の礫を創り出し、宝の1つに向かって思い切り投擲した。


「うわっ!?」


パンッと手元に当たり、驚いた生徒が宝を取り落とす。

もちろん失格になる条件は、宝を他班に奪われるか、距離が1m以上開くか、なので、その場に落としたくらいでは失格にはならない。

だがー


「おい、今の誰だ?」


「は?知らないけど」


「そっちの方から飛んで来たぞ」


「いや、俺は後ろ向いてたし…」


「お前、氷属性持ってなかったか?」


「持ってる人なんてたくさんいるだろ!」


協力態勢といっても、所詮は敵同士。

互いを信頼していない状態では、関係は小さなことで瓦解する。


あっという間に、手を組んでいたはずの14人は2人ずつバラバラになった。


「ーアイス」


宝を拾い上げた手を狙い、氷を投げ付ける。

今度は別の人に嫌疑がかけられるように。


「お前か!?」


「何言ってんだ!俺じゃない!」


「嘘吐くな!」


誰も詠唱していなかったとか、今裏切る理由がないだとかを冷静に考える余裕が、彼らからは既になくなっていた。


「…疑心暗鬼になると怖いね」


勝手に潰し合いを始めた7つの班を見て(同じような実力なので、長くなるだろうと思われた)、そっとその場を離れる。


「事前の地図だと、こっち側に赤色もいるはずなんだけど…」


現在地が不明なのは、残り4班。

ここまで時間が経過していると、地図はあてにならないかもしれない。


「ソフィーがいくつ見つけたかな…もうそろそろ…」


何となく空を見上げる。

直感は的中し、花火のような光が遠くで打ち上がったのが見えた。

続けて2度、空が光る。


「おぉー、ぴったりのタイミングだったね」


あの魔法の術者はソフィーだ。

宝の奪取に成功した回数分、光を打ち上げる予定だったので、向こう側には3つの班がいたということになる。


「よしよし、っと」


巨大な丸い氷を創り、空に向かって風で飛ばした。

これも事前に打ち合わせていた合図の1つで、意味は「ソフィーは3人の援護に向かって」だ。

他に用意してあったのは、星の形で「至急救援求む」とか、三角で「引き続き捜索よろしく」とか、四角で「範囲型殲滅魔法の使用許可を出す」とかだ。


ノエルとネージュに仲介してもらえば、こんな面倒なことをしなくてもいいし、《連絡鳥》等の連絡手段を使えば楽なのだが、傍受される可能性を考えて、やめておいた。


「皆は大丈夫かなぁ…」


ソフィーが行くまで持ち堪えてくれれば良いのだが。

とりあえず、残る1班を消してから合流しよう。




一方その頃。


「ねぇ、数が多過ぎない!?」


「僕もそう思います…!」


基本魔法を乱発しては、《治癒》の魔水晶で回復する。

上限10個の魔水晶は、エマ、カレン、クルトが3個ずつ持っていた。


「あっ!」


「光った!3回!」


振り返ると、上空に月のような球体が浮かんでいる。


「ソフィアさんが来てくれますね!」


「もう少しだー!」


罠だらけの砂漠を突破しそうな先頭の生徒に全力で氷の球を投げ付け、カレンが地面を弄って下半身を埋めた。


「投げるのって、魔力の消費量が少ないから助かります!」


「私は詠唱変えただけで、だいぶ楽になったよ」


大丈夫そうかも、と2人が気を抜いた瞬間。


バッシャァァン!と何かが水に落ちたような音が背後から聞こえた。


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