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お金儲けで調子乗る。5


 俺がこの街に来てから既に1週間が経った。


 「おう、お嬢様よ。へへっ、今日もだいぶ儲けて来ましたぜ」


 そう言って俺とケビンが滞在している、ちょっとした高級宿に入ってきたのは、指輪の売人と成り果てた元冒険者のおっさんだ。いい感じにダサくて高そうな服を来てやがる。染まって来たな。


 「ご苦労」

 「ご苦労であります」


 俺とケビンはフカフカのソファーでふんぞり返って応対する。高そうなグラスに高そうなお酒を、宿屋の紹介で来てもらった女の子達に入れてもらう。なかなかだろう? ただえろいことは出来ない……そこまでしてくれる可愛い子達を呼ぶにはまだ資金が足りない!


 「まぁ座れおっさん。酒でも飲むか?」

 「お、おう。いただくぜ。悪いねぇ」


 悪い事をしてる高揚感の為か、アイテムボックスからファッションアイテムのサングラスを出して俺は付けてみる。いいね。雰囲気が出る。女の子に囲まれた、ゴスロリ金髪サングラス幼女なんて見たことあるかい? 俺のことさ!


 「ケビン様どうぞ」

 「食べさせてくれであります」

 「はい、あーん」

 「ふぐふぐ、おいしいでありますなー。それにしても君、可愛いであります。今夜どうでありますか?」 

 「そういった仕事はしていませんので」

 「……お嬢様ぁああああ!!」

 「うるせぇ!」


 そんなの俺が一番に試したに決まってるだろ! この子達。超可愛いけど超仕事人なんだよ! 隙も油断もありゃしない! 金だ! お金が必要だ! 俺ならできる! なんたって超絶美少女だからな。


 「それでお嬢様よ。どこから話が漏れたか分からねぇが、隣町の大きな商会から大量の発注が来てるぜ。まだ残りあるかい?」


 冒険者だった姿はどこへやら、手でゴマをするおっさんがそこにはいた。こうはなりたくないものだ。なるなら俺の様にならないとだな。それにしても――


 「お前が話持って行ったんだろ? まぁいい、300までなら出せるな。いいか全額現金で手渡しだ。それ以外は認めねぇ」

 「へへ了解です。もちろん分け前は」

 「もちろんだ」

 「ありがとうございます!」


 それにしても、このおっさんも来るとこまできたな。これは引きずり込むしかない。


 「みんなちょっと話があるから出ていってくれていいぞ」


 俺は女の子達に声をかける。


 「「「「お疲れ様でしたー」」」


 「あ、うん、おつかれー」


 ……うん。おい! ケビン! そんな顔すんな! 分かってるよ。稼いだらこんなんじゃなくなるはずだ!


 で、部屋の中には俺とケビンとおっさんの3人である。


 「おっさん。ひとつ言っておかなくちゃならないことがある」

 「ん?なんだ?」

 「その指輪、補正ないから?」


 おっさんが俺から買って身に付けている指輪を指して言う。


 「はぁ?」

 「ただの石の指輪ね」

 「……」

 「簡単に言うと失敗作。偽物」


 おっさんの顔がどんどん青ざめていく。気付いただろう? それが偽物ってことはだ。もちろん他の指輪も……てな。

 いいかー。逃げるなよおっさん。もうお前は最初に渡した分で味を占めて追加分も売ったんだ。で、お前はその報酬で楽しんだんだろぉー? もう冒険者になんか戻れないよなぁー?


 俺はおっさんの肩に手を置いて


 「いいか。商会には絶対に悟られるな」

 「でも商会が鑑定魔導具持ってこないわけがない……」

 「俺に任せろ。何とかする」

 「断るってのは……」

 「他の街に逃げるのに、今ある金だけで良いのか? 最後に大金稼ぎたいだろ?」

 「……分かった」


 今まで会話に口を挟んでこなかったケビンもここで


 「もう逃げられないであります」







 そして商談当日。場所はちょいと高めの飲食店を貸し切ってだ。俺が座るテーブルの向かいには、いかにも出来るイケメンな青年がいる。あれが商人だな。護衛か……5人、屈強そうな男を控えさせていた。それに対し、俺の後ろで控えてるのは、もちろんケビンとおっさんだ。

 挨拶もそこそこ終わったところで。


 「それでは指輪を見せてもらいます」

 「どうぞ」

 

 俺は出来るだけ優雅に、テーブルの上へと石の指輪を出す。


 「では魔導具をここに」


 青年の言葉で男の1人が動いたところで、


 「ヒドイ! 私のことが信用ならないと言うんですか?」


 お、青年は困ったという顔に一瞬なる。


 「申し訳ありませんお嬢さん。ですが商売とは確認も必要なのです。あくまで確認です」


 ほぉ、流石に冷静か


 「返してください!」

 

 俺は、机の上に置いた指輪を取ると自分の指に嵌める。この時、目に涙を溜めるのも忘れない。


 (お嬢様。只のアホみたいであります)


 ケビンがコソコソとうるさいが関係ない! 現実は勢いなんだよ!


 「信用ならないと言うのなら、私が実践します!」

 「は?」


 青年、今度はあっけにとられた顔してるな。 俺は拳を振り上げ


 「えーいッ」


 と、拳をテーブルに振り下ろす。攻撃力30000越えの俺が攻撃の意思を持って振り下ろして、テーブルが粉微塵になるのは実験済みだ! 叩き折るではなく、爆発する音が響き、テーブルが粉々となった。青年とケビン、それにおっさんは呆け顔だ。護衛の男たちは戦闘態勢になっている。さすがだ……。それに比べ、元冒険者のおっさん……


 「ほら! こんなに強くなります! この腕を見てください! こんな白くて細い、可憐な腕でこんなことが出来るとでも? 出来ません! これはこの指輪の力です! これで証明しました!」

 「え? えーと……」

 

 俺はここで、息もつかせず青年に詰めよる。


 「ここまでしても、まだ私を疑うというのですか?」


 青年は護衛の下まで、ずるずると下がって行き。男の1人に目配せをする。


 「金を渡せ」

 「いや、しかし」

 「いいから」

 「はっ」


 青年がこっちを見て当初のスマイルを取り戻す。男が道具袋から出した木箱の蓋を開けた。お金がギッシリだ……勝った! 可憐な俺を舐めるなよ! 勢いで美少女が詰めよれば大体は折れるんだよ!


 「どうぞ、お金です。指輪の方をお願いします」

 「はい」


 俺も木箱に入れておいた。大量の指輪を取り出す。指輪とお金の入った木箱を交換する。これでミッションコンプリートだ。俺は木箱をアイテムボックスにしまうと別れの挨拶をして店を出ようとする。


 「ではまた何か機会があれば」

 「えぇ」


 そして俺達が出口の扉に手を掛けたところで


 「偽物です!」


 あ? 今の短時間で鑑定したの? 早くない? いや……クソっ! 超絶美少女を信じろよ! あほ青年! だがぁああああああああ!!!! これも想定済みだ!


 「にげるぞぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

 「ひぇえええええええええええ!!!!!!」

 「待ってくれー!!!!」



 俺とケビン、おっさんは逃げる――あ、おっさん捕まった。足遅いな……てかスペックの問題か、俺とケビンなら余裕で逃げ切れる。


 「よしこのまま城に逃げるぞ!ケビン」

 「ハイであります! お縄はごめんであります!」

 

 余裕、そう思っていたら、どこからか弓やら魔法やらが飛んでくる。てか魔法あんのかよ! 魔導具あるんだしそりゃあるか!! 商会ってなんだよ……こんな戦力あんの?


 「でもぉーー!!! 俺最強なのでぇー!!!」

 「お嬢様守ってくださいであります!」

 「同胞の盾!!」


 俺はスキルを発動させる。PTメンバーの受けるダメージを俺が肩代わりするスキルだ。肩代わり分は仲間の防御力依存になるので、HPが低いとすぐに溶けるのが痛いけどね。俺のHPは923000ある余裕だな。てか俺に当たってる弓とか魔法は防御値を貫通出来てないので食らいませんが! 肩代わり分は減ってるけど、うーん秒間ダメージ20ってところか……自然回復で。、すぐ消えるからよく分からん。要するに雑魚だ!


 「あ! 服に焦げ目が! 水が! ふざけんなよぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 「早く逃げ切るであります!!!」


 そうして俺達2人は追っ手を振り切り、ワイバーンを待機させていた場所まで戻って来た。この辺は森に入りかけだ。ワイバーンどこ行った? ……ワイバーン?


 「なぁケビン。俺、ワイバーンのこととかすっかり忘れていたんだけど……」

 「……餌もなしで放置してしまったであります……」


 ヤバい! 帰れない! どうする?


 「ん? あれ!!」


 森の方からワイバーンが歩いてきた。おぉ! これで……


 「お嬢様……」

 「ケビン……ワイバーンの横……何に見える?」

 「爺やであります!!!」


 さて……どうするか! ここはあやまる……わけないっ!!


 「おじょうさまぁああああああああああああああああああ!!!!!」


 お怒りの爺やが現れた。



 

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