勇者PTで調子乗る。2
「ぎゃはははは! 俺最強!」
あー、気分良いな。余裕で試験突破です。
途中から周りの冒険者も状況が分かってきていたようで、驚愕していたし、もう、超絶美少女のこと忘れられないよな? 心に刻めよ?
「吃驚したよ。防具も着けていないみたいだし、そのコートが防具だったり? あぁ自己紹介がまだだったね。Bランクのカイだ」
イケメン君が、まーた話しかけてきたよ。俺のこと好きなの? 俺はイケメン嫌いなので無理ですけどね!
「あいつら終わったかなー どこだろ?」
「ん? 仲間が居るのかい? じゃあ探そうか。前衛? 後衛?」
「後衛はどこ?」
「あそこかなー」
イケメンが指さす方向に俺は歩いて行くことにした。なんかイケメンが付いてきてるけど気にしない。後衛班……あそこだな、みんな弓持ってる。杖みたいなのは魔法使いかな? フレイヤは目立つからすぐ見つかるとは思うけど……それにしてもエルフいないな。エルフの里のエルフ達って貴重な存在だったんだなー。
「あそこ、凄い人が多いよ」
「んー? 思ったより目立ってるな」
「君もすごい目立ってたけどね」
人垣を目指していたら、あっちも気付いたのか、フレイヤが出てきた。なんか疲れてる?
「フレイヤどうした?」
「いや、試験は簡単に終わったんだが……弓の技術やエルフのことを、みな聞いてきてな……答えてたら疲れたな」
「アルファ探しに行こうぜ」
やっぱ試験余裕だったか、Aクラスのおっさんで、あのレベルだしな。後はアルファだけど、それも楽勝でしょ。回復魔法で言えば最大レベルまで使えるしな。
「ところでお嬢様。そちらは?」
俺の後ろを付いて来ていた、イケメンを指してフレイヤが問う。そちらはと言われても……
「冒険者のカイです。初めまして。エルフの方とは初めて会いました。お綺麗ですね」
はっ? 何で敬語なわけ? 敬うなら俺だろ? これだからイケメンはー しかもフレイヤを口説くとか! 許せん!
「無視していいよ」
「ふむ……ただの虫か」
……まぁいいや。アルファ、アルファ。
「回復職の班はどこだ?」
「あそこだな。お嬢様」
流石千里眼持ち。スキル使わなくてもアーチャーだし目が良いね。フレイヤの案内に付いて行きながら考える。回復職の試験ってなんだろう? ……もしかして人間はないにしても、動物とか傷つけて、さぁ! 治してください! みたいなのじゃないよね? ……グロいのは勘弁してほしい……行かない方が良いかな
「お嬢様。痛い光景はないようだぞ? 安心しろ」
「お、なら安心だ」
「回復職の試験は試験官が魔法を見るだけだったかな」
一人煩いのがいるが気にしない。アルファ、アルファと……お、丁度試験かな?
「はい、では一番得意な回復魔法を見せてください。私がそれを見て判断しますね」
優しそうな、おばあちゃん先生だった。おばあちゃんの言葉でアルファは迷っているみたいだ……何を迷ってるんだ? 適当なの使えばいいじゃん。
「アルファ! サッサと終わらせろ!」
俺は焦れったくなってアルファに聞こえるよう声を上げた。するとこちらを向いたアルファが頷くと、詠唱に入る。――やっとかよ。
「お嬢様……アルファの詠唱……」
「なんだ?」
「長くないか?」
「!?」
あれ? 長いな! 詠唱時間もう30秒以上経ってるぞ! 回復魔法の詠唱はそんなながくねぇ!
「あぁ……あれレイド用の広範囲の設置回復魔法じゃん……」
「となると?」
「天使が来るな!」
俺の言葉にフレイヤも、やれやれと首を振る。分かっていないイケメンは「天使?」と呟くのみ。
アルファが詠唱を終える。すると周囲が煌めき、天が割れ、光が降り注ぎ、4枚羽の天使がゆっくりと降りてくる。まぁ天使って言ってもなんていうかな。人ってよりはモンスターぽい非人間的な奴なんだけどね見た目。で、降りて来たら周囲30メートルは回復ゾーンになるのね。そこそこ使える魔法なんだけど……さすがに目立つな……俺とフレイヤ以外固まってんぞ?
「アルファ! さっさと解除しろ!」
「……りょかい」
アルファが一歩踏み出すと、天使が消え、降り注ぐ光も霧散して元通りの訓練場へと戻る。そうなんだよねー。あれ動くと解除されちゃうんだよ。だから即死ギミックの多いボスだと使えないんだよなー。それがなかったら大活躍の魔法なんだが……
「……合格?」
まだ呆けてるおばあちゃんにアルファが聞いている。あんま刺激すんなよ。死んじゃうだろ?
「ご、ごうかく……」
それを聞いたアルファが俺に向かってピースしてきたから、俺もピースを返してやった。うむ。アルファも可愛いな!
「アルファ。何悩んでたんだ?」
「……ふつうにやるか……エンターテイナーするか」
「で、目立つのにしたんだな」
「……うん」
良いと思うよ! 俺だったらそうする! 周り固まってたもんな! アルファも気分が良かったことだろう!
「んじゃ帰るか」
「これで合格したから次は王宮での試験だな」
「王宮行く過程早くね?」
「この試験でほとんど落とす気なのだろう」
「ふーん」
「……お嬢様なら……よゆ……」
「あたりまえだろ!」
楽しく配下2人と会話をしながら、訓練場をあとにする。ケビンはテキトウに王都観光してるだろうから、俺達も観光するかな。
「待ってくれ!」
また来たよイケメン君。石化は溶けたのね。
「話があるんだ。さっきの試験だけど……君たちの実力は飛びぬけている……最後の回復魔法なんて僕の常識では考えられない。あの神々しさ……それにあれは神の御使いか? 僕は決めたんだ」
「ナンパなら他所でやれ」
これ言ったの俺じゃないからね? フレイヤだからね? 俺は有能だから何となく分かるよ。てか気付いてたよ? だってさー。おっさんばっかの冒険者の中に一人だけイケメンだぜ? でもなー。こう、もっと試験突破して、俺すげぇやりたかったんだけどなぁー。
「そう言うなフレイヤ。どうせこいつが勇者だから。それで俺たち見て、PTメンバーに決めたってやつだよ。冒険者とかは嘘だな」
一瞬目を見開くも爽やかに笑ったイケメンは
「バレてたか……そう言うことだ。試験はこれで終わり。PTメンバーは君たちに決めた」
なんか格好付けていってるけど……せっかく試験やってんだから最後までやったら? って俺なんかは思うわけ。だって俺に勝つ可能性はないにしても、1次試験突破して喜んでるやつもいるだろ? それなのに本人が出てきて、勝手に決めちゃうって……いや、まぁオーディションだと思えば、そんなものか? あれ? まぁいっか。手間が省けたと思えば。
「私とお嬢様に嘘を付いていたということか。勇者の名も信用ならないな」
「え?」
あっれー? フレイヤさん怒ってる?
「フレイヤ。勇者って名前に憧れてた? もしかして……」
「気になっていただけだ」
「……ふれいや……正義感だから」
あー。正義感のフレイヤさんは【勇者】の名に、古き良きTVゲームの勇者のような聖人を想像してたのね。そりゃ確かに違うなー。このイケメンも勇者だと言えばそれっぽいけど。ちょっとキザなとこ入ってるしなー。イメージ的には主人公勇者のライバルで隣国の勇者である。みたいな感じだもん。
「えっと……すいません」
「謝罪はハッキリと聞こえるよう」
「はい! ごめんなさい!」
「よろしい」
フレイヤが、イケメン改め勇者に指導してる……なんだこれ?




