工藤桜子 旧雨今雨
「ひゃ~蒸してきたよう~。エアコン入れないの?」
ガラガラと桜子が保健室へ入ってくる。
「工藤さん、ここはね・・・」
たしなめるように北斗が言っているのを桜子は全く聞いていない。
ガチャリと相談室のドアが開き1人の生徒と誠史郎が出てくる。
「あ、先客かあ?」
思い切り不機嫌な顔で桜子と視線が合う誠史郎。
「あ!誠ちゃ~ん」
桜子の問いかけを遮るようにコーヒーを口にする誠史郎。
「あのさぁ、竜ちゃんのお姉さんがさぁ~」
「時間外」
ぴしゃりと誠史郎が言い切る。
ぷう。と頬を膨らませて桜子がイスに腰かける。
「いーもーん。大声で独り言言うも~ん」
くるくると椅子を回しながら桜子が言い出す。
「あのね~竜ちゃんのお姉さんがね~、トモダチとの間で孤立しちゃって
友情って何~って悩んじゃってるみたい~」
保健室中に聞こえる声でガアガアとしゃべる。
「うるさい。小ガモ」
誠史郎が突き放す。
「あのね工藤さん。友情って言うのは作られていくもので、
作っていくのとは少し違うのよ?」
なだめるように北斗が言う。
「コミュ障?」
「それは自分勝手に振舞っているキミそのものだよ」
「だいたい友情と言うのは情けを友に向けるものであって、
友達同士の善意の精神で成り立つものだ。
1人でがんばるものではない」
「でもさぁ、友達って大事だよ~」
「あたしは友達と遊びとカレシで成り立ってるも~ん」
桜子がしたり顔で言う。
「なぜ勉学で成り立たない」
誠史郎が呆れる。
「てゆーかさぁ、ぶっちゃけどーなの?誠ちゃん?」
桜子が眼鏡の奥の誠史郎の瞳に問いかける。
ふー。と誠史郎が眼鏡に手をあてる。
「『ぶっちゃけ』をそのまま返すよ。孤立したならそれはそこまでの友人だよ。
人は交際する相手によって左右される。お姉さんは人生の機微に立っているだけだ。
ふるいにかければ残るものがある」
「え~残らなかったら?」
「それはそこまでの人間関係。友人関係も人生を生きるための社交。
無理して100人友達作らなくてもいい。量より質だろう」
「何か、今日ちよっと厳しくない?」
「だから時間外と言っているだろう?対人関係は一生の問題なのだから、
所々でそういう場面に出くわすのだから仕方ない。
それより第2ボタンまで外すのはやめなさい」
「え?何、気になる誠ちゃん?」
にかっと桜子が問いかける。
誠史郎がびしっと一言。
「不潔」
「なんだよー!こういうのはセクシーって言うのー!」
「じゃあちゃこちゃん、ちょっと職員室へ行ってきます」
わめいてる桜子を見ようともせず。ぺったらぺったらと
誠史郎は保健室を後にした。




