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Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第一章 起承~京都・大阪編〜
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第一話 幕開け

朝起きた時から頭痛がしていた。

薬を飲んでも効かない、またいつもの偏頭痛かもしれない。

でも妙な違和感がある。

地に足が着いていないような、感覚がどこかおかしい。

部屋の電気を消しドアに手を掛けた時、急に目の前が真っ暗になりぐらぐら脳みそが揺れる。

目を開けているのか閉じているのか自分でもよく分からい。

倒れると思いとっさに座ろうと腰を落としたとき!

 

「うわぁぁぁぁ」

 

すぐ床があるはずなのに、ない!底がない?

ずんずんと渦に呑まれるように私は落ちていった。

どこへ?


ひゅるひゅると下に落ちていく。

落ちていることは間違いないだろう。

もしかして私、死ぬのかな?

死ぬ時ってこんな感じなのかな?

そう考えていると、何か聞こえる。音?

いや声、誰かが話す声。

その声が徐々にはっきりとしてきた。

声の主はどうやら私に話しかけているようだった。

 

「瑠璃。聞こえているか?」

「んー」

「瑠璃 これからお前にとある世界に行ってもらう。よろしいな?」

「誰?私は死んだの?」

「いや、死んではおらぬ。」

「何?あなたは誰ですか?」

「詳しく話している時間はない、もう間もなく着く。案ずるな神の導きのままに進むがよい」

「・・・なっ、えっ」


気付くとオレンジ色の塊に包まれ、これまでとは変わってゆっくりと 降りている。

私の両手には小さな光が粒となって入り込んでくる。

そして体には刺すような強い光が!


「うっ、熱い!手がっ、身体が・・・くぅぅ」


意識が遠のく、あの声が小さくなりながら聞こえた。


「その両の手に、・・の未来が・・・っている・・・・」

 

そして完全に意識を失った。


**********


ザーザーと激しく雨が降りつける中、数名の足音がだけが聞こえる。


”キーン、キーン”と幾度となく金属音が響く。


思ったより逃げ足が速く、町はずれの廃墟まできてしまった。

雨でぬかるむ足元、しぶとい輩だ。

逃げたかと思えば、刃向ってくる。

何人か途中で斬り捨てたが、まだ残っているようだな。

残党を一人見つけ、ジリジリと追いつめる。

そして刀を振り上げたその時、


”ガサガサ、ドダッ!” 「うっ・・・」


葉が擦るような音の後鈍い音がし、人が呻く声が聞こえた気がした。

一瞬目だけ向ける。

ん?人か?

 

追いつめられた浪士はその隙に刀を突きだしてきた。


「まだそのような抵抗をするか」


 ”キーン、ズサッ・・”

 男は無言で倒れた。

 

そして人らしきものの側へ寄って様子を見る。

「っ!?」

そこにはどう見ても、誰が見ても女だと分かる人が木の幹に寄りかかり目を閉じていた。

生きているのか?

指を首筋にあて脈を確かめる。

 

「生きているな」

 

見たところその女は丸腰のようだ。

俯いたままの顔をそっと上向かせ前髪を横に払う。

細く流れるように整った輪郭、薄い桃色の唇、長い睫、なだらかな曲線を描く頬、細い首筋。


「天女、か?」


そう思わせるほどに、その女は美しかった。

すると瞼がビクビクと何度か痙攣したように動いた。

気付くかっ、そう思った刹那。

 

「うっ・・・く、んー」


唸るような声とともにその瞳が開かれた。

 


あの声が聞こえなくなってから、私はどこをどう落ちたのか。

ザーザー音がする。雨?外にいるの?起きなきゃ。

 

「うっ・・・く、んー」


目覚めたものの、辺りは薄暗い。

それにやっぱり雨だ。土臭いっ!

視界が次第にハッキリしてきた。

私の目の前には誰かいる!


「あっ、あの・・・」

「気が付いたか」


男の口調は落ち着いていて、顎に添えられていた手はすぐに離れていった。


「ここは?」

「お前はどこから来た。何故ここに倒れている」

「分かりません、目が覚めたらここにいたので」


立ち上がろうと体を起こそうとするけれど身体が異常に重く、思うように動かない。


「うっ、どうしてだろ。身体が動かないっ」


怪訝そうな顔でその男は私を見ていたが、そっと手を差し出してきた。

手伝ってくれるようだ。

私はその手をつかみ何とか立ち上がるも、幹に寄りかかるのが精いっぱいだった。

その時、


”ガザッ”黒い何かが動く、よく見えないけれど殺意を感じた。

私は思わず「後ろ!」と叫ぶ。


すると、すぐに察したその男は流れるような動作で振り向き、その何かを躊躇うことなく斬った。

斬ったぁ!?

そう、その男は手に刀を持っていた。

倒れた何かは人だった。

「ぐはっ!」”ドサッ” 

どうやら、とんでもない所に送り込まれてしまったようだ。

 

「背後から斬りかかろうとは、武士の風上にもおけぬな」

 

その男は静かにそう言い放った。

武士、刀、過去にタイムトリップしたの?ま、さ、か!

しばらくして、その男の仲間らしき人たちがやってきて死体を担いでいった。

みんなその男の事を「組長」と呼んでいた。

 

「組長って・・・ヤクザなの?」


思わずそう呟かずにはいられなかった。

 

「動けるか?」

「えっ、あっ、たぶん」


おぼつかないが何とか歩けそう!って、やっぱり無理だ。


「やっぱり、もう少し此処で休んでから行きます」

「行く当てはあるのか」

「・・・」 


あるわけがない。

するとその男は無言で私を背負った。


「えっ!」

「とりあえず、お前は目撃者だ。参考人として一緒に屯所まで来てもらう。あとの事はそれからだ」


私は屯所という所に連れて行かれるらしい。

あぁ、どうしよう!いやどうにも出来ない!

流されるままに流されるしかない。

だって、身体が動かないのだから。

 

あぁ揺れが心地いい、また軽く睡魔が襲ってきた・・・


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