願い事
舞は、昨日は変な一日だったなーと学校に向かいながら思っていた。倉田君の噂はよく聞いていたけど、実際に話したの初めてだったなーと考えていたところで、倉田と出会った。
倉田は早歩きで進みだした。なので、私はゆっくり歩いていくことにした。時間にはまだゆとりあるし。
少し進んでいくと、前に倉田がおばあさんの隣で大量の荷物を持っている姿が見えてきた。その瞬間、倉田の持っている荷物が崩れ落ちそうになった。
「あぶない!」
私は、落ちるすんでのところで拾うことが出来た。
「すみません。」
倉田がおばあさんと、私に対して謝る。しかし、おばあさんは、
「なに言っているの、むしろ私が助けてもらっているのに…あなたもありがとう。」
と笑顔でお礼を言われ、舞は嬉しくなった。
「これは、私が持つわね。」
「俺、一人で持てる。」
倉田が言い返してきたので、
「さっき落としたじゃない。」
と言った。すると倉田は、女に荷物を持たせるなんて…と少しうなっていたが、頼むと言ってきた。
「ここで大丈夫だわ。荷物持ってくれてありがとう。貴方達本当に仲のいい恋人ね。」
「「恋人じゃないです!」」
そんなとき予鈴の音が遠くから聞こえてきた。おばあさんに見送られながら、私達は走り出した。
二人で走って、教室の扉を思いきり開けた。ギリギリセーフ。と安心して目をあげてみると、教室の皆がこっちをみている。たしかにめっちゃ走ってきたが、そんなに注目を集めるほどではないと思う。なんだなんだ、と思っていると、近くの男子が話しかけてきた。
「二人仲良く登校!!やっぱり付き合ってるってのは本当だったんだ!」
「「は!?」」
「ほらほら恥ずかしがるなよ、昨日も二人で仲良く帰ったんだろう。」
そういって、携帯を開き、二人の一緒に帰っている姿の写メを見せてきた。
「「誤解だ(よ)!!」」
その言葉とほとんど同時に、先生が入ってきて皆の誤解をとくことも出来ずに着席させられた。
「今日はショートホームルームから、一限ぶち抜きで、席替えを行うぞー」
とんでもなく嫌な予感しかしない。
窓際でかなり後ろの方の凄く良い席になった。しかし、嫌な予感は当たるもので、隣は倉田だ。
「お前らズルしたんじゃないのかー?」
「「違う!」」
昼休みになり舞のもとにいつもご飯を食べるメンバーが集まってきた。舞は急いで準備しようとした。すると、
「私達の事気にしないで良いから、倉田君と食べてね☆」
と、満面の笑みを浮かべすたこらと去っていった。
「ちょっと話がある。」
倉田にそう話しかけられ、話の内容は予想出来ていたので、ついていくことにした。校庭の隅の目立たないところにいき、腰を下ろした。
「昨日と今日といい、あの人の言ってた縁結びって話は本当!?」
舞は、周りには聞こえないように気を付けながらも、思っていたことを口にした。
「あー俺もそれについて話そうと思ってたんだが…」
「でも、偶然にしては出来過ぎてるよ!絶対本物だよ。どうしよう…」
倉田は顎に手を当て少し唸ってから、
「もう一度今日、神社に行ってみよう。」
と言った。
放課後、人目の付かないように、二人で神社に向かう。周りに人がいないのを確認してから、倉田が声を出した。
「おい!昨日のやつ出てこい。」
「神様をそんな呼び方するなんて。」
誰もいなかったはずなのに、どこからともなく光輝きながらその人は現れた。それを見た舞は、
「やっぱり、本物なんだ…」
と、少し足がすくんだ。倉田は案外平気なように、神様に向かって話しかけていった。
「昨日俺たちに変なことしただろう。」
「変なことって失礼だな、縁結びしたの。昨日そう言ったでしょー」
「今すぐ、戻せ。」
「願いは1000000人目のときのしか聞けないの。てか、二人とも恋人が欲しいって願いだったんだから、良いじゃん。」
そんな無責任なことを言ってまた、光とともに神様は消えてしまった。
んっ神様が言っていたことがひっかかる。二人とも恋人が欲しいって願った?確かに私は、恋人が欲しいと願ったが、あの倉田君が恋人欲しいなんて願うのか?
「倉田が恋人欲しい…?」
倉田が、下を向く。
「えっうそ?なんで?百選練磨でなんでしょ?」
「うるせー!悪かったな!俺はそんな経験豊富じゃねーんだよ!噂ばっか先行して…恥ずかしいから恋人くらいつくりたいけど、恋人いないなんて今さら言えないしで、余計恋愛から遠のいて…」
「私と、一緒だ。私も恋愛マスターとか言われてるけど全然経験なくて、焦るけどなんにも出来なくて…」
「マジかよ!だからお前も神頼みか…」
二人で話していたら、日も陰ってきた。
「また誰かに見られでもしたら面倒だから別々に帰ろう。」
倉田がそう提案してきて昨日とは違う道でふた手に別れた。しかし、またしても、水道工事がしているらしく迂回を余儀なくされた。その道を進んでいくとやはり倉田と出会った。
「あいつの言っていたこと本当なんだな…」
もう諦めて二人で帰ることにした。