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語られた神話
昔この世は何もなかった。
そこに神は降り立ち、一粒の種を埋めた。神はその隣で一眠りしようとした。神が眠っている間に種は芽を出し、一晩であれよと伸び、天をも覆う葉を茂らせた。
神はそれを喜び、木に食べ物をと望んだ。木は一晩の間にたわわな実をつけた。次の朝起きた神はそれを食べ、今度は木に温かなベッドを望んだ。そしてまた一晩過ぎると、木はその枝と葉の間にベッドをつくった。
神は次々に望み、木は願いを叶えた。寿命がつきるその時まで神は木に願い続け、木は叶え続けた。
死ぬ間際、神は今まで自分に与え続けてきた木に自分の身を与えた。
木は神の身体を養分として、この世の支配者となった。
木によって吸収されなかった二十の爪は一組のつがいの動物となった。手の親指の爪がこの世に生まれた初めての人間である。
こうして、動物は木を居住区として暮らし、すべてを木から得、死ねばすべてを返すようになった。
これがムンドの民の神話である。