表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/38

友達?

この丘は王宮のそばにあって、ここからは国全体がよく見渡せる。3つの小さなむらからなるこのネビール王国は本当になにもない。けどいつもたくさんの民が行き交っている。王宮の周りを囲むようにして商業が盛んなむら、畑が広がるむら、牧場があるむら。それぞれ特色がある。中心に王宮があって誰もが訪れやすい雰囲気。商業が盛んな村に接しているのがクラークがいるリューク王国。だからこの前クラークと待ち合わせして話したのはあのむらなんだ。小さい時、よく2人でお店を回っていろいろなものを貰ったりしてたっけ。あの物置の中で遊んでたらいつの間にか閉じ込められてて国中、いや、リューク王国でも大騒ぎになっちゃったこともあった。とにかく私とクラークはネビール、リューク両国で有名な、お騒がせ兄弟みたいな友達なの。それなのに、婚約って、、、。そう言えばあの日のクラークは少し変だった。知っていたのかしら?それで柄にもなくあんな言葉、、、。

今まで友達として接してきたのに今更どうすれば良いのよ。全く知らない人と結婚する方がよっぽどまし。クラークはどう思ったのかしら。私と同じで今頃結婚相手なんて冗談じゃないと思ってるに違いないわ。やっぱりこの話はなかったことにしてもらおう。ええ、それが良いわ。


なぜかその後、商業の村を見て回りたい気持ちになってそこを通ってから王宮に戻ることにした。




「あ、王女様。こんにちは。」


「こんにちは。このトマト、美味しそうね。」


「どうぞ、召し上がってみてください。」


「ありがとう。ん。美味しい!!」


「良かったです。ところで聞きましたよ。クラーク王子とのご婚約の話。」


「ん!?え、ええ。」


「おめでとうございます。クラーク王子はこの国ともよく親交がありますし、私どもも嬉しく思います。」


「そうね。じ、じゃあ私はもう行くわ。」


「はい。お気をつけて。」



しまった。そうよね。クラークが次期国王になることを考えれば確かに適任だわ。私だってそう思う。っていうことで、婚約の話はやっぱり受けることに、、、。ってダメダメ。

今までそんな風に考えたこともないし。今の関係がずっと続くと思ってた。クラークは大事な友達で他の何者でもない。クラークも同じ想いかな?わからないけど、もしここで婚約破棄にすればクラークと二度と会えないってこともあるかも。婚約の話を進めればクラークとは一緒にいられる。けどそれは今までとは違う関係でってこと。単純に考えればこういうことだよね。クラークと離れたくないけど、それは友達として。

でも、なんだろ。この話を初めて聞いた時から今も、頭の片隅でクラークとの未来を想像しちゃってる。ありえないって思ってるのに。

そしたら私はクラークのことが恋愛感情で好きなのかもって思っちゃう。これって錯覚?それとも本当の自分の気持ち?


そもそもこの話が昔からあって、クラークもそれを知っていたから今まで私と仲良くしていたのだとしたら、、、。友達だと思ってたのは私だけ?友達っていうのも偽りだったらやっぱりいよいよ婚約破棄で私たちにはもう何も残らない。全部知っていたクラークは何も感じないで終わってしまう。そんなの嫌。

、、、もう、自分で考えてて訳がわからなくなってきた。


私自身のことなのに、、、わからないや。




この気持ちをそのまま言ったらお父様はわかってくれるかしら。まだ授業が終わるには時間があるし、行ってこよう。仕事中かな?ま、良いか。



――コンコン


「お父様。ニーナです。」


「なんだ?まだ授業中じゃないのか?」


「聞いてもらいたいことがあるのです。」


「またか?」


「はい。婚約のことです。」



私はさっき考えたことをそのままお父様に伝えた。お父様ならどうにか婚約を先延ばしにして私の気持ちの整理をするまで待つとかアドレスをくれるとかしてくれると思ってた。なのに仕事の手を休めてずっと黙って聞いていたお父様が口を開いて、予想していなかったことを口にした。



「まず、婚約破棄はしない。」


「え、でも。」


「そもそも、お前の気持ちでどうこうする気など最初からない。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ