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決意

お、終わったー!!



――コンコン

「失礼します。王女様、次はピアノのレッスンでございます。」


「はいはい。」


「ダメ、でございます。」


「なにが?」


「“はい”は1回、でございます。」


「ああ、、、。わかったわ。」


「では、始めます。」


「なんでよ!!まだ前の授業が終わってから1分も経ってないわ。」


「国王様から時間がないから休憩はお昼休みだけにしろと言われておりますので。」


「それじゃ、やってられないわよっ!!」


「そしてもう1つ、朝は6時起きにしろ、だそうです。」


「えー!!」


「ああ、もう1つありました。むやみやたらに走るな、だそうです。」


「わ、私の特技が、、、。」


「以上です。始めましょう。少し遅れてしまいました。急いでいきますよ。」


「、、、はい。」



この後、ピアノのレッスンを3時間。礼儀作法の指導が1時間。時事の勉強が1時間。歴史の勉強が1時間。

やっとお昼休みになった。

もう!きつきつッ!!

ゆとりって言葉を知らないのかっ!!

っていうかみんな進むの早すぎっ。

はい、オッケー、はい次、はい次―――

って、今まで18年間の和やかムードが嘘のようだ。

今更私の出来なさに危機を感じたのか?



「、、、ニーナ様。お紅茶でございます。」


「クリスー!!もう何年か振りに会った気がするよー。」


「愚痴なら私が伺いますよ。」


「え?」


「今、言っておられてたでしょう。」


「私、口に出していた?」


「最後の方だけですが。」


「あら。まあ良いわ。、、、聞いて!!」


「はい。」


「まず最初に本の読解の授業だったの。まあ最初でやる気もあったし読解は得意だからなんともなかったのよ。その後すぐにピアノのレッスン。今までは私の好みで楽曲を選んで楽しく弾いてたのに次の社交パーティーで弾くことになりましたとか言っていきなりスパルタになったの。あの穏やかなメル先生がよ。それで次は礼儀作法の指導。今日はパーティーで声をかけるタイミングや歩くスピードとか、何でも良いじゃんって感じのやつ。、、、ふう。で、時事の勉強だったんだけど疲れちゃって寝たかったのね。それでちょっと寝ちゃったの。そしたらなんとランス先生ったら立ったまま授業させたの。しかも辞書を2冊頭に乗せるおまけつきで!!王女にさせることじゃないわよね!!、、、まあ最後の歴史は私は好きだから良かったわ。近隣の国との昔の交友について学んだの。」



クリスはいつも私の愚痴を真剣に聞いてくれる。だから私は言いたいことを最後まで言い切った。



「それだけニーナ様に期待しているのですよ。時期にこのネビール王国を背負うお方ですから。」




近隣では王妃は国の政治や財政に一切関わらない国もある。けどネビール王国の王妃はそうしたことや民との交流に精力的に関わることが伝統として決まっている。お母様は会議には参加して国の発展に関わることはできても、民衆とのパーティーに参加したことはない。体調の優れている時に限って各国とのパーティーに参加するくらい。

とにかくさっきお父様が言われたように、ネビール王国の王妃は無能ではいけないということだ。

それはわかってるんだけど、、、。そっか。そうなんだよね。私は1人娘なんだから私がやるしかないんだよね、、、。もう子供じゃないんだよね、、、。




「クリス。」


「はい。」


「私、頑張る。お母様に恥じない立派なレディになってみせるわ。もう愚痴も言わない!!」


「はい!!私もニーナ様についていきます。」


「ありがとう、クリス。お父様のところに行ってくるっ!!」


「はい、、、ってニーナ様!!走ってはダメなのではっ!?」




ん?クリス何か言ったかしら。まあ、良いわ。





バタンっ――


「お父様!!」


「なんだ。また文句か?」


「いえ、お父様。私頑張ります。立派なレディになりますわ。」


「立派なレディは走ったりしないんだが。」


「え、、、あ。そうだった。」


「良いか。いつでも見られているのだ。ここがお前の家で住んでいるのが身内だけだと思っていても気を抜くな。」


「はい、お父様。」



お父様が言っているのは使用人でも私たちの大切な家族だということ。もちろんこの国に住む全ての人が家族だ。



「どれだけ親しくても1つにまとまるためには上に立つ者が必要だ。だからこその王家だ。だが、それはこれから先も永久に、協力し合う姿勢があってこそだ。王家がその条件に背けば自ら王国を廃止する。それが王家の血筋を引き継ぐ者の役目でもある。自覚は、、、もうできておるのだな。」


「はい、、、。お父様。」


「ん?何か言いたそうだな。」


「はい。私は民との絆を最も大事にしたいです。先代の王家もそうでありましたが。、、、私はそれよりもさらに、です!!」


「ふむ。」


「お母様は私たち家族を愛して、パーティーへの参加も強く望んでおられていますが、未だに実現できず苦しんでおられます。ですがそのお心はこの国の家族全員がわかっており、皆もお母様を愛しています。尊敬できる立派な王妃様です。私は元気だけが取り柄です。直接民と関わり合うことが、私の目指す、私なりの王妃像です。形は違いますが私もお母様と同じように皆から愛される王妃になります。」


「ふむ。お前の言う立派なレディは“皆から愛される”ということなのだな。わかっているだろうがお前自身の家族への愛情を全力で伝えようとしなければ皆にも伝わらないし、皆もお前のことを愛そうとはしないぞ。」


「はい。」


「じっくり考えると良い。、、、といってもお前の場合、考えるよりどんどん実行した方が良いと言いそうだがな。」


「はい!!」


「ああ。ニーナ。お前ならその理想像、実現できると信じておるぞ。」


「はい。失礼します。」


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