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簒奪者

久しく留守にしていた祖谷本部。

しかし、そこに広がるのは同士討ちがあったことを物語る、未だ渇かぬ血の海だった!

そして、同胞の血で壁に刻まれた『簒奪状』だった。

長らく留守にしていた徳島・祖谷本部は、一面の血の海と化していた。

そこかしこに骸が転がり、白い漆喰の壁を血が汚している。

惨状を呈する城内は、同士討ちがあったことを物語っていた。

暗褐色に変色した白壁。

すっかり渇いているところからして、既に数日が経過しているだろう。

「蘭渓っ……おのれ!」

刹霞は、ぎり、と手の色が変色して白くなるほどに、強く拳を握りしめる。


【兄上、もう貴様の時代は終わりだ。次に会う時は総領おさから引きずり降ろしてくれよう】


壁に、同胞の血で刻まれた簒奪状。

宣戦布告だった。

「まさか、オレ達と行き違いに? 父上っ、戻りましょう、早く!」

「分かっている……だが今は犠牲者を葬ってやらねば。野晒しでは哀れだろ」

死骸と化した、こちら側に残した部下達を見渡して、刹霞はそっと別れを惜しむように呟いた。

(お前たち……すまなかった、本当にすまなかった!)

俯いた刹霞の頬を、悔し涙が伝い落ちて弾けた。


どんなに苦しかったろう。

痛かったろう。

『すまない』以外の言葉が見つからない。


 部下達の骸を埋葬し終わった後、ぽつりと、奈与がおもむろに呟いた。

「叔父上は……なぜオレ達を裏切ったのか?」

叔父と、父の仲は良いように見えた。

一族中でも人当たりが良く、実子のいなかった彼は、自分を本当の息子のように可愛がってくれた。

それが……なぜ簒奪を企む?


自分は、叔父が好きだった。


なのに。

「あ奴は……兎族の在り方自体が気に食わなかったんだ。簒奪どころではない、すべてを破壊する気だろう」

「戻りましょう父上! 向こうに残した母さんが心配なんです!」

「……さくら殿のことか? 母と呼ぶには若すぎるだろうに」

「でも……心配なんです、ある意味」

そう言われて、奈与は羞恥に顔を染める。

「ほぅ? 『妻に欲しい』とか言っていたこともあったようだが、そう言う感情じゃあなかったんだな」

片眉をあげてからかう父に、奈与は精一杯の反撃を返す。

だが、効果はなし。

「なーんだ? 朔にヤキモチ灼いてるのかお前」

「分かってるなら聞かないでください!」(怒)

「って、マジに怒るなよ……ジョークだよ」

鼻白む奈与に、刹霞はひょくっと肩を竦めてみせた。

「……彼女が初めてなんです。なんの見返りもなしに、真っ直ぐに接してくれた人は」

「ん。よく成長したな……もう俺から教えられることはなにもない。安心して総領を譲れるよ。守りたい者がいるのなら、尽くすがよい」

刹霞は、息子を一頻り強く抱き締めてから、その背を押して笑った。

「はい!」


 二人は素早く兎型に溶けると、七つ国へと空間をかけていった。


どうも、維月です。

『Rabbitパニック』新章のお届けに上がりました。

さて、本編。

祖谷本部に戻った刹霞と奈与……そこには想像を絶した惨状が広がっていました。

悔し涙を流す刹霞さん。

なっちはさくら(お母さん)が心配です。

さてさてどうなる兎族の行く末……?

まだまだ続いてゆきます、先が気になった方は本編へGO!(笑)

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