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未来少年2nd  作者: 織間リオ
最終章【森羅万象の超能力者】
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44、森羅万象の超能力者

 背後より迫ったビームは、黒い球体に直撃し、相殺される。冷雅が隙を突かれたとき、河川が一瞬にして冷雅の体をのっとり、後退しながら球体を作り、盾代わりとしたのだ。河川は、その勢いのまま、所有者のいなくなったサイコ・ヘアを、太刀で真っ二つに切り裂いた。

「終わったか・・・・・・」

押しのけるようにして、冷雅は河川の意識を内面に閉じ込める。あたりは閑散としていた。すでに戦闘は終わっていた。いや、紅蓮の働きによっては、もしかしたら、戦争も終わっているのかもしれない。

「!・・・・・・何だ?」

何かが近づいている気がする。とてつもなく大きなエネルギー。サイコストやエスパーの接近に反応する、この頭痛が、それを知らせていた。

「闇亜様が暴走したのか?」

(まさか・・・・・・赤火・・・・・・・紅蓮?)

しかし、その時の兄弟二人には、その答えは分からなかった。


 戦闘を終え、乱州の怪我の具合を確かめていた闘也もまた、強大なエネルギー反応を感じていた。隣に座り込んでいる乱州もまた、同様らしい。

「かなり強い・・・・・・サイコスト反応・・・・・・」

乱州が、感覚的部分から予想を述べる。黒田闇亜が、紅蓮との戦闘の中で、膨大な力を解き放った可能性がある。急いで下階へと、闘也と乱州は向かう。途中で、的射、秋人、由利の三人も合流し、地下十一階へと降り立つ。

 そこにいたのは、無残に引き裂かれ、ほとんど原型をとどめていない闇亜と、これまで以上のエネルギーを持った紅蓮であった。

「紅蓮! 終わったのか?」

闘也は、いまだ鋭い眼光を闇亜に向けている紅蓮に呼びかける。だが、紅蓮の方はその鋭い眼光のまま、五人を睨みつけた。

「まだ、終わってない。全てを、破壊しつくすまでは!!!!」

 何だ?何を言っている?

「俺が、森羅万象の超能力者だぁっ!!!」

紅蓮とは思えないような、狂ったような叫び声が鼓膜を振るわせる。闘也には、未だ理解ができていない。

 不意に、紅蓮が、拳を握り締め、静かに目を閉じると、紅蓮の周りを、まるで電磁のような球体が包み込む。その能力の存在を知っていた乱州が、闘也の横で焦りながら口を開く。

「あれは爆発クラッシュだ! 止めないとまずいぜ!」

「的射!」

乱州の言葉を聞いた闘也は、すぐに的射に呼びかける。的射は、すでに自分が名前を呼ばれた理由を分かっているようで、すぐにスナイパーライフルを構えると、その標準に、紅蓮の右腕を重ね、銃口より弾丸を発射する。

 しかし、狙いは正確で、その上命中したというのに、銃弾は弾き飛ばされ、当の紅蓮には、傷一つなかった。

「防御!?」

銃弾を発射した的射は、驚愕に満ちた声を上げる。

 闘也の中で、一つの仮定が生まれ、そして、その仮定が、まっとうな真実となって、目の前の光景に映し出された。

森羅万象オールに・・・・・・飲まれているというのか・・・・・・」

 あいつが求め続けていた力、森羅万象。先ほどの彼の言動も考慮すれば、揺ぎ無い真実となっている。

 爆発の能力によるエネルギーチャージはいまだ続いていた。爆発の能力は、エネルギーを蓄積させ、それを一気に放出させることにより、広範囲にわたる電磁爆発を引き起こす。対要塞戦、重要施設破壊、奇襲、奥の手など、一撃必殺としては申し分ない威力を有しているのだ。その恐るべき力の範囲は、どんなに狭くとも、五キロはゆうに超える。熟練している者なら、百キロ先にも、爆風等の影響を及ぼすこともある。紅蓮がどの程度使いこなせるかは不明だが、距離を取っておくに越したことはない。エネルギー解放は、チャージ開始より五分もすれば臨界に達する。その前に、距離を取らねば、自分達は電磁による熱で焼かれ、肉体を残さぬまま死ぬであろう。それだけは避けねばならない。

「急ぐぞ、ここもあぶねぇ!」

秋人が半ば慌てながらも指示を下す。秋人に続き、的射も上階へと向かう。乱州もそれに続いて上階へと向かう。由利が、微動だにしない闘也に気づき、声をかけてくる。

「闘也、早くしないと、紅蓮のチャージが――」

「分かっている。すぐに行く」

「・・・・・・闘也・・・・・・」

耐えかねて、由利も上階に撤退していく。闘也は、エネルギーチャージを続ける紅蓮に向けて言い放った。

「紅蓮!砦攻略戦の地で、決着をつけさせてもらうぞ!」

紅蓮からの返答はなかった。だが、それでもいい。決着をつけ、あいつを正気に戻すのは、自分達が今一番しなければならないことなのだ。何せ、闘也達五人には、紅蓮により正気を取り戻してもらった借りがあり、責任がある。

 その責任を、こんなところで放棄されてたまるか。

「いつものお前らしく、正々堂々とな」

最後の言葉には、軽く皮肉を含んだつもりであったが、紅蓮はおそらく気にしてはいないだろう。闘也は、エネルギーチャージをする紅蓮から、矢のごとく離れた。


 膨大なエネルギーを感知した後、闘也をはじめとする五人が最下層へ降り、しばらくしたところで、五人のうちの三人が現れる。その三人の最後尾にいた乱州が、冷雅の姿を見つけ、近くに寄ってくる。

「冷雅。紅蓮が爆発の能力を使ってくる!ここもおそらく崩壊する。すぐに逃げるんだ」

普段は揚々としている乱州が、ここまで真剣な目を向けるということは、よっぽどの重大事なのだと悟る。冷雅は、乱州のその言葉を信じ、更に後から来た由利と共に、本部の上階へと進んでいた。そこで冷雅は、彼らの中に、闘也が混じっていないことに気づく。

「魂波闘也は?」

「すぐに来るっていって、紅蓮のところに残って――」

由利が全て言い終える前に、一度彼らの頭上を超え、こちらに気づいて速度を落としてきた人影が写る。闘也である。彼は、あの短時間でここまで戻ってきたのである。冷雅はそのスピードに感嘆していたが、そんなことを言っていられる状況ではないことは、重々承知であった。

「砦攻略戦の場所で、やつとの決着をつける」

「あそこで?」

冷雅は聞き返したが、それに対する返答はなかった。闘也がスピードを速め、こちらを引き離していく。闘也に続いて、乱州と由利もスピードを上げた。冷雅もそれにならって、スピードを速め、本部を更に上っていった。


 水中へと飛び出しだころには、すでに先を進んでいた秋人と由利に追いついていた。十分な息を整えて、水中へと身を投じる。緑がかった青い水が、闘也達を包み込む。水は、入ってきた時と同様、冷たかった。開戦から二月ほど、六月も終わりに近づいていたが、暑さは全く感じられなかった。海面からは程近いのに、暗い。おそらく、黒雲が空を覆いつくしているのだろう。そして、その予測は当たった。

 海面に幾つもの水柱を立てながら、闘也達は海から飛び出した。空自体暗いため、水から飛び出した時によくある眩しい感覚は、全くなかった。雷鳴すら聞こえる空であった。今すぐにも、雨が降りそうである。

「急げ、遅れたら間にあわねぇよ!!」

当たり前のことを秋人が慌てながら言う。パニックで思考回路がショートして、燃え出しているのかもしれない。雨でも降れば、彼の脳内の火災も収まるだろうか? そんなことを考えながら、闘也は苦笑を漏らした。


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