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未来少年2nd  作者: 織間リオ
第四章【ムゲンの激突】
24/49

23、戦いの火花

 太平洋の上空を闘也はやや早めに飛んでいた。全く変わらぬ風景に、半ば飽きかけていたが、その感情も、突如エスパー諸島から送られてきた通信によってかき消された。

「緊急通信・・・・・・!?」

闘也は、送られてきた通信が緊急のものであると知り、端末を起動させ、通信を開く。その動きは実になめらかで、その動作に一秒としてかかることは無かった。

「どうした!」

《カスタムの襲撃です! できれば、応援を!!》

その顔に焦りの表情を浮かべ、特殊任務専門部隊『雷雲』の隊長、出雲武が端末ごしに叫んだ。闘也は、自分ではそのつもりではなかったが、なだめるようにそれに返答を返す。

「今俺がそっちに向かってる。それまで持ちこたえろ」

《了解!!》

そこで端末に送られてきた短い緊急通信の会話は終わった。闘也は、端末を操作しながらも、さらに飛行速度を上げた。端末に、的射と紅蓮の顔が同時に映る。

「こちら闘也。エスパー諸島が襲撃を受けているらしい。俺はそこで戦闘に入る! そちらも各任務をしっかり頼む!」

《分かった!》

《了解》

やや驚きの表情で、的射は返答し、紅蓮はその表情を一つとして変えぬまま闘也の命令とも取れる言動を了承した。そこで、闘也は端末を終了し、速度を上げたために早くも見えてきたエスパー諸島へと突っ込んで行った。Lエスパー島の一部分で爆発が起こる。木々の一部が黒煙を上げている。闘也はその有様に、自分の背中に悪寒が走ったのを感じた。自分の治める国が攻撃を受け、民が死に、木々は焼き払われ、建物は崩され、動物達はその命を神の元へと送られる。

 このようなことになってしまったのは、カスタムが第二次超能力戦争を開戦させたためか、それとも、それ以前に超能力戦争が起こったことか。

 もしかしたら、自分達超能力者がいるから、こんなことになってしまったのか・・・・・・?

「俺が倒す・・・・・・俺の国を戦火に巻き込む者を!!」

闘也はLエスパーへとその体を突撃させ、ご挨拶代わりに数発の銃弾をカスタムに命中させた。


 草原を走り続けていた紅蓮は、闘也からの通信を切った後、森林地帯へと差し掛かった。目標ポイントは間もなくである。この森を入れば、そこまで時間はかからないが、カスタムがバギーを攻撃している可能性も、今となっては否定できない。

「あれか・・・・・・!」

目標ポイントが間近になったころ、視界に小さく写るバギーが見えた。紅蓮は足元にあった突起した岩に左足を乗せ、一気にバギーのいる地点まで跳躍した。

「エスパーの小型バギー・・・・・・お前がリドガか」

紅蓮は、バギーに腰を下ろしていた老人に声をかける。バギーのドアには堂々とエスパーの銀色の紋章が刻まれていた。その銀色とは対照的に、バギーは濃い茶色である。いかにもバギーらしいものではあるが、やはり紋章の銀色とバギーの茶色はあまりにも不釣合いであり、無駄に目立っていた。

「確かに、わしがエスパー正規軍、リドガ・デッサじゃ」

「闘也さんの部下である、赤火紅蓮です」

紅蓮は、懐から闘也の直筆にて書かれた証明書を取り出す。疑われぬようにと闘也より渡されたものである。その証明書には、闘也の直筆のサインだけでなく、エスパー軍上層部の一部しか所持していないハンコも、ダメ押しするように押されていた。だが、その証明書を老人に見せようとしたところを、リドガは手で制した。

「君のことは、闘也様よりよく聞かされておる。証明などいらんよ」

リドガはそのシワが入った顔に老人らしい笑みを浮かべる。この笑みは、戦いをする者の笑みではない。どこかで、自然と、小さな子供達とふれあいながら生きていくような人間なのだ。両親に抱きしめられ、笑顔の中で生きてきた人間なのだ。リドガもその笑顔の中で、笑顔で過ごしてきたのだろう。自分とは、全く違う生き方で・・・・・・。

「見つけたぞ。赤火紅蓮!」

老人の笑みにより、一瞬沈鬱な表情を作っていた紅蓮が、聞き覚えのある声で我に返る。子供っぽさが残る声とその容姿、部下には数人のカスタムを引き連れている。つい先ほどに火花を散らせた相手に、紅蓮は言葉を返した。

「邪魔だ。立ち去れ」

冷徹な視線と表情で紅蓮は青水河川へと言葉を消した。河川の方は僅かに顔をしかめたものの、すぐに表情を戻し、紅蓮の冷徹な言葉に対して皮肉めいて言った。

「そう言って立ち去ったやつがいるのか?」

「・・・・・・いないな」

紅蓮はその表情を変えずに、河川の質問に答えた。確かに、自分から出てきて、立ち去れと言われて立ち去る者が、どこにいるというのだろうか。少なくとも、ここに来たからには覚悟の上で来ているはずである。

「力づくで立ち去ってもらう」

「もうじき兄さんも来る。君はその前に倒したい」

「俺はまだ死ねない。任務中だからな」

紅蓮は冷徹な言葉を貫き通した。河川は僅かな怒りを込めた声で叫び、その地を蹴った。

「その任務、達成させない!!」


 エスパー諸島のエスパー達は、闘也が到着するのを見た途端、高揚し、歓喜し、士気を高めた。モチベーションの上昇は、防戦一方であったエスパー達の戦況を百八十度回転させるとまではいかなくとも、少しずつ、だが確実にその角度を変えていった。

「ソウルツインソード!!」

闘也は両手にそれぞれ小型の剣を作り出し、それを力強く握り締める。カスタム達は、いきなり現れた闘也に翻弄され、一瞬にして、戦闘続行が不可能となっていた。

「ソウルスナイパーガン」

闘也は、超遠距離仕様のソウルガンを作り出した。通常のソウルガンに、「スナイプカスタム」を施したこのソウルスナイパーガンは、敵に近づくのが危険であるときや、遠距離からの攻撃が適しているときに効果を発揮する。ソウルガンのカスタムツール「スナイプ」には、スコープ機能も標準装備であるため、文字通り、超遠距離仕様であった。

 ソウルスナイパーガンのスコープを覗き込み、近づいてくるカスタムの兵輸送艦のエンジン部に狙いを定める。どんな強固な戦艦、輸送艦であれども、管制のいるブリッジか、艦の命であるエンジン部を破壊すれば勝利の軍配はこちらに上がる。

「当たれっ!」

勢いよく撃ち出された鉛の弾丸は、まっすぐに輸送艦のエンジンを貫いた。

「後は頼むぞ!」

「了解!!」

エスパー達の威勢のいい返事を待たぬまま、闘也はLエスパー島の奥へと風のように飛び去った。

 途中、戦闘となっているエスパーとカスタムの戦いに、闘也は次々と介入し、カスタムを戦闘不能に持ち込んだ。闘也は、そのまま前進し、とうとうある場所へとたどり着いた。

 エスパー諸島最高議会。エスパー諸島の政治の要である。ここで、いまだに戦いを傍観しているような者があれば、すぐにでも非難させなければならない。確かに、この最高議会には、最新のセキュリティシステムを搭載し、警備のロボットが、携帯型ビームガンを所持して徘徊している。議会そのものにすら、ミサイルが多数搭載されており、緊急時には、敵の迎撃用として発射も可能である。しかし、最高議会は戦艦ではない。ミサイルも緊急のために、とりあえずつけているようなもので、ミサイルの搭載数も、そこまで安心できるものではない。警備ロボットがいまだに徘徊しているところを見る限り、まだ最高議会は襲撃を受けてはいないようである。

「Lエスパー島南部に敵部隊が集中している・・・・・・?」

闘也は、カスタムの放つオーラの濃さを感知し、その数が、南部に圧倒的に多いことを悟った。闘也は、すぐさま空中へと飛び出す。上空から見たところ、やはり闘也の予想は当たり、南部に敵部隊が集中していた。

 あそこでは、「雷雲」の三人のオーラも感じ取れた。闘也はその身を翻し、別方向に敵部隊が少ないことを確認した後、敵の集中しているLエスパー島南部へと風を引き裂いて飛んでいった。


 闘也がエスパー諸島で戦闘を行っているころ、紅蓮は、殴りかかってきた河川の攻撃をかわし、誰に言うわけでもなく呟いた。

「赤火紅蓮、戦闘を開始する」

紅蓮は敵の動きを見切るため、パワーストーンを使い、河川の攻撃を防ぐことを第一とした。放たれる黒い球体を、刃となったパワーストーンで受けとめる。火花を散らせ、その後、黒い球体は無に帰った。

「この攻撃、おそらくは・・・・・・」

紅蓮の予想は当たっていた。河川が再び放ってきた球体の弾道を見切り、紅蓮は左前方へと回避する。

外傷ダメージ!」

紅蓮はムゲンを引き起こす。神経の一本一本が細く研ぎ澄まされる感覚が全身を駆け巡る。紅蓮は、次々と放たれる球体を、右にかわし、次はジャンプによってやり過ごし、三つ目に放たれた球体を両手に展開させた両爪で切り裂いた。

「そこ・・・・・・!」

紅蓮は勢いよく河川へと両爪を切り落とす。河川の素の左腕が、その爪を受け止める。河川の左腕からは、血が滲み出ていた。河川はそれを気にすることなく、左腕で受け止めたまま、紅蓮へと蹴りを食らわせる。

「ちぃっ・・・・・・!」

衝撃で怯んだ紅蓮に、河川が球体を放ってくる。今度の球体は大きく、先ほどとは、威力はおろか、その速さも命中率も上昇し、さらには、僅かながら、追尾機能すら加えられていた。

「ぐっ・・・・・・」

紅蓮は、両爪で受け止めはしたものの、その球体を諸に受けた。蹴りの衝撃の数倍の衝撃が、紅蓮に襲い掛かった。紅蓮は、小さな呻き声を上げ、後方でその様子を傍観していたリドガのバギーにぶつかる。紅蓮はすぐさまリドガに叫んだ。

「何をしている! すぐにここから・・・・・・」

「わしゃぁ、援軍を相手しとくよ」

見ると、リドガが見つめる先に、十人ほどではあるが、カスタムが向かってきていた。紅蓮は、年老いていることと、エスパーであることにいささかの不安を覚えた。だが、その不安は、リドガの鬼のような眼差しによってかき消される。それは、まさに今獲物を狩ろうとする、獣のものであった。

「君の敵をお忘れかい?」

紅蓮が、はっとして正面に向き直る。すでに河川は、さらに流血がひどくなっている左腕から、先ほどよりさらに大きい球体を作り出した。ここで回避をすれば、バギーかリドガが狙われる。バギーが破壊されれば、ここに来た意味は微塵もなくなる。すなわち。

「任務失敗・・・・・・させてあげます!」

勢いよく放たれた球体を、紅蓮は真正面から突っ込み、そして、最大に展開した両爪で受け止めた。


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