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未来少年2nd  作者: 織間リオ
第四章【ムゲンの激突】
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19、虹と雷雲

 エスパー諸島の襲撃、及び制圧。降伏したエスパーも全て抹殺し、エスパー諸島の完全入手。それが、今回深緑大地と白亜光輝に与えられた任務であった。このエスパー諸島の制圧を足がかりに、一気にピュアとの戦闘に幅を持たせるというのが目的らしい。エスパー諸島は、日本からは、千キロほどの距離を有している。空中、海中からの襲撃が可能になり、海中からの襲撃時は、あわよくばそのまま地中へと潜り込み、地中から突如出現しての襲撃も可能となる。しかし、なにせ超能力戦争を起こした者達である。大地も光輝も、そう簡単には制圧はできないとは、作戦の開始前から、予想はついていた。だが、それとは反対に、反乱兵がいることから、状況によっては、自分達への加勢も考えられるため、不安ばかりが胸のうちにたまっていたわけではいなかった。

 今、二人の前に立ちはだかるのは、エスパー正規軍の、『雷雲』という隊らしい。二人の連携により、現在は優勢にはあるが、まだ、勝負が決したわけではない。このまま押し切れるとは思うが、思わぬ介入がないとも言えない。二人は、背後から近づいてきた『雷雲』の少女、日和の気配を感じ、再び戦闘を開始した。

「次は当たらないんだから!!」

大地が放ったバズーカを、日和はかわす。二、三発は食らってはいるのに、それでもこれほどまでの動きを見せる。これが正規軍の特殊任務の部隊の実力かと、大地は感心した。が、感心ばかりしていて勝てるはずもない。しかも、敵に向かってだ。

「させるかっ!!」

日和が、光の爪を大地へと横薙ぎに振るう。が、その爪は大地の肉体に触れる前に、光輝が受け止める。生身の人間ならば、光の熱によって焼けているものを、光輝はなんなく受け止めた。

 光輝が日和を受け止めているときに、大地には武闘スマッシュの能力を持った、雷雲の隊長、出雲武の攻撃をかわした。武闘の能力はその名のとおり、直接の素手での格闘技術である。敵との距離が皆無なため、瞬発力は並ではない。

「なかなか!」

武の繰り出してきた蹴りを後ろに飛びのきながらかわす。その間にもすでにバズーカを構え、武への標準を定め終わっている。大地は躊躇なくバズーカのトリガーを引き絞る。砲口から飛び出した弾丸は、真っ直ぐに武へと突き進む。武はその動きを見切り、真上に飛び出す。バズーカが地面に激突し、小爆発を起こす。爆風が巻き起こり、着弾地点から押し出されるような感覚が各人に襲い掛かる。着弾地点の真上に位置していた武は、その爆風を利用し、さらに高くへと舞い上がる。大地の真上につけた武に標準を合わせた台地は、やはり躊躇なくトリガーを引く。

「隙だらけだ!」

撃ち出された弾丸が空中で爆散する。が、その爆発による煙幕の中から、その煙を吹き飛ばし、武が突っ込んでくる。大地は武の拳を右頬に直撃させられる。大地はその拳の力で吹き飛びながら回転し、腰から木に激突する。

「おめぇもな」

 弾丸を切り裂いたソラが空中で大地へと呟く。大地は一時硬直する。わざと誘っているのではない。動くのに支障があったためである。

「動けんか! 深緑大地!!」

武は拳を大きな音を立てて鳴らす。俊足と呼ぶにふさわしい速さで返答のない大地へと突進する。しかし、大地に武の拳は当たらなかった。大地には動きはない。大地の前で光輝が防いだのである。光輝は武の拳を受け止めると、そのまま押し返す。武は後方へと飛びのく。光輝の左方から剣を構えたソラが、右方からは光の爪を展開して日和が迫る。両方受け止める気で、光輝はその場でとどまる。当たる・・・・・・。光輝が予感した瞬間、ソラはバズーカによって遠方へと吹き飛ばされていた。それを見た光輝は、すぐさま右を向き、日和の爪を体全てで受け止める。バズーカを撃ったのは、ほとんど動くことのできない大地であった。大地はゆっくりと立ち上がり、バズーカを肩に構えなおす、光輝は大地の前に立ち、大地をカバーする。

「すまない、光輝」

「守ってばかりはいられねぇよ」

光輝は迫ってきた日和の攻撃を受け止め、腹部へと蹴りを食らわせる。日和が爪を引っ込め、腹を押さえる。光輝を乗り越え、背後へと回り込もうとしたソラが、大地のバズーカに撃ち落とされる。真正面から光輝に向かってきた武の拳とすれ違いざまに光輝も拳を繰り出す。光輝の拳は武に、武の拳は光輝の顔面に直撃する。

 いける。確信を持てた。ここまでの攻撃を受けて、隠し玉があるとは思えなかった。窮地に陥るであろうと判断したら、すでに出しているはずだ。雷雲の隊長、出雲武はその風格さながらなキレるやつだ。戦って小一時間だが、それは容易に察することができた。光輝は武と対峙する。構えを見せる武に対し、光輝も防御姿勢をとる。武の拳が繰り出されたとき、彼は瞬発的に体をかがみこませる。武の拳が誰もいない宙を圧迫する。光輝は、無防備となった武の腹部へと拳を突き出す。腹を押さえ、武の動きが鈍る。もう一撃を加えようと地を蹴ろうと右足に力を込める。が、その足は繰り出される前に、腰の携帯から鳴り響いた電子音によって力が抜ける。それは大地も同様であった。大地は、同じ方向から向かってきたソラと日和をバズーカで吹き飛ばすと、すぐさま光輝と大地は密集する。大地が携帯を開き、送られてきた暗号命令に目を通す。無防備な大地には、光輝が盾となり、攻撃を防ぐ形となっていた。

「撤退・・・・・・?」

「え・・・・・・」

光輝がその顔に驚きを隠せぬままちらりと大地を見やる。どうやら、向こうも礼儀正しいのか、攻撃を一時中断していた。不意打ちは卑怯という騎士道精神からなのか、自分達の場合はどうなるかと考えた武士道精神なのかは分からないが、それはそれで、光輝の緊張を僅かに和らげるには十分な効果を持っていた。

「白亜、深緑は速やかに戦線を離脱し、本部に帰投しろ・・・・・・ということらしい」

「どういうこったよ、闇亜様は・・・・・・」

小さく闇亜への不信感を呟いた光輝だったが、すぐに前を向き直った。すでに防御の能力は解いてある。向こうにも武士道か騎士道かそれ以外かの心があるなら、承諾はしてくれるであろう。

「失礼、撤退命令が出た。攻撃の中断を願う」

大地は雷雲の三人を手で制す。言われる前から、すでに攻撃を中断してはいたが、念のためということらしい。

「超能力戦争でも、君達のようなエスパーには会ったことがなかったよ」

僅かに微笑みを見せる大地に対し、武も同様に、小さな笑みをその顔に浮かべ、返答してくる。

「こちらこそ、こんな強いサイコストを見たのは闘也様以来だ」

「撤退故、追撃を勘弁願う」

「無論、そちらも逃げ際の攻撃はよしてくれ」

「ああ」

大地は武へと手を差し出した。誤解を招く恐れがあるため、バズーカは光輝に任せていた。ソラと日和は、やはり警戒してか、剣を構え、爪を展開していた。

「手合わせ、感謝する」

「こちらこそ」

 ここが戦場であることを度外視した上で、この光景を第三者が見て、誰がこの二人を敵対者だと思うだろうか。

 そこには、敵でありながらも、人であることの精神を忘れていない姿が確認できた。

 堅く握られた二本の手はゆっくりと分かれる。大地はバズーカを光輝から受け取る。バズーカにセットしてあるボタンをいじくる。バズーカから、赤いプロペラがその姿を現す。命綱がしっかりと大地と光輝の腕に固定される。ゆっくりと二人をつるしたバズーカプロペラが浮上し、二人の体が地面から離れる。

 向こうからは、ソラや日和を含めた雷雲の三人全員が、こちらに敬礼していた。大地は軽く頭を下げていた。その会釈には、ただの兵士には到底つかめないものがどっさりと乗っているのであろう。

 光輝は、雷雲の三人と、離れていくエスパー諸島に向かって、敬礼した。


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