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未来少年2nd  作者: 織間リオ
第三章【失ったもの】
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16、虹の名の下

 エスパー諸島上空に艦を置いていた虹七色のメンバーがいた。現在、数十人のカスタム兵を除けば、その全てがカスタマーのエリート達、『虹七色』である。

 その中の輸送艦の一つ、『CSR-02 シゼン』には、虹七色の一人、深緑大地がその身を置いていた。先ほどから少しばかり揺れているが、問題はないであろう。

「光輝。周辺に敵は?」

『かなり遠くに一人。揺れてんのはそいつのせい』

「分かった」

大地は開いていた通信を切る。

 ほとんどがカスタム達で固められた組織、『カスタマー』。その中で、訓練で一定以上の成績を収め、尚且つ超能力戦争にも出撃したことのあるもののほんの一部が、エリート集団、『虹七色』へと編入権を獲得するのである。その中の一人、深緑大地は四人目として入ってきた。つまりは、その当時、彼以外に三人いたこととなるが、そのうちの一人は、大地が嫌いな人物であった。

 当時からいた三人のうちの一人目は、白亜光輝という少年である。そう、先ほど大地が通信をしていた少年である。大地は、光輝には信頼を置いている。その戦闘能力も、大地とはピッタリとピースが当てはまるようにちょうどいい。

ものすごい速さで降下していく光輝と大地。風が痛いほどに身にしみる。だが、二人はその感覚に慣れているのか、全く表情を変えずに落ちていく。

「敵機確認」

大地は呟く。光輝も、その一言を聞き、地上から来るエスパー部隊に目をやる。背面に、ジェットブースターと呼ばれるエンジン装置を背負っており、空中戦が可能になっている。降下部隊の迎撃に使われることが多いが、迎撃できなければ、意味など成さない。

「光輝!」

「分かってる!!」

光輝は自らを大地の正面へと移動する。エスパー達が鉛の弾丸を撃ち出して来る。光輝はそれを見ると、能力を発動させる。

防御ガード!!」

その一言が言い終わって一秒と経たぬうちに、弾丸が彼に直撃する。だが、彼はそれでもピンピンしていた。彼の能力は、防御ガードというもの。全ての攻撃を受け止め、時にその武器を破砕し、時には攻撃を撥ね返す。

狙弾スナイプバズーカ!!」

防御ガードの能力によって弾丸がはじき返されたところに、大地は飛び出す。肩に乗せたバズーカについている遠距離狙撃スナイプ用のスコープを覗き込む。敵の位置、風向き、降下速度を計算し、適所にバズーカを撃ちこむ。

 迎撃目的に飛来してきたエスパー三人を見事に撃ち落とす。これでこちらの位置が敵にははっきりと示されてしまったが、そこまで影響はない。彼らにとっては。

「ふぅ」

光輝は軽く息をつく。パラシュートが開かれ、ゆっくりと地上へと降下していく。風向きからしても、着地地点は、予定地点からさほど離れてはいない。

「油断はするなよ」

大地は一言、光輝に呟いた。


 地上に着陸し、パラシュートを近くの砂場に投げ捨てる。二人は銃を構える。小型のハンドガンである。すでにリロードはしてある。前方から、複数の足音が聞こえる。おそらくは、エスパーの部隊であろう。二人は茂みに隠れ、様子を伺う。エスパー達は、砂浜で二人を探している。後ろを取られているとは気づいてはないらしい。

「詰めが甘い!」

光輝は叫ぶ。その声と、ガサガサという茂みの動く音に振り向いたころには、エスパーは頭を撃ちぬかれ、地面の爆発に吹き飛ばされていた。

「ぬぁぁぁぁっ!!」

「うぁぁぁっ!!」

エスパー達の悲痛な叫びに耳を傾けるという行為は、今の二人にはなかった。大地はバズーカでエスパーを吹き飛ばし、光輝はそのエスパー達を撃ちぬいて、殲滅した。

 大地が能力を解除してバズーカを消し、光輝がハンドガンを腰のベルトにしまいこんだ時、三つの殺気が彼らに感じられた。

「・・・・・・ッ!!」

息を呑んだ大地に、一人の少年が切りかかる。大地はすかさず横転し、その斬撃をかわす。流れるように起き上がり、大地はバズーカを構える。振り下ろした剣を、今度はそのまま切り上げて攻撃してくる。大地は滑るように後ろに飛びのく。それと同時に、光輝が少年の剣を受け止める。防御の能力を発動させているため、ダメージはない。

「大地、後ろ!!」

大地はその声に反応し、後ろの状況を確認する。光り輝く爪を両手に装備している少女が、大地に切りかかる。大地はすかさずバズーカを撃ち出す。空中にいたためか、その砲弾を諸に食らい、少女は吹き飛んだ。

「一筋縄じゃいかんか、やっぱ」

いまだに攻撃をしていない一人の少年が、その光景を見て呟く。その声に反応してか、光輝に剣を抑えられていた少年が飛びのき、茂みの中に吹き飛ばされた少女が飛び出す。二人とも、一瞬にして攻撃をしていないその少年の下へと集まった。

「とりあえず、名乗ってくれない?」

光輝が軽々しく口を開く。それを待っていたのかそうじゃないのかは分からなかったが、中央の、攻撃をしていない少年が口を開いた。

「我々はエスパー正規軍特殊任務専門部隊、『雷雲』。私は隊長の出雲武いずも たけしだ」

それに引き続いて、隣にいた少年が続けて話し出す。

「俺は同所属、霧沼きりぬまソラ」

武、ソラに続いて、少女が他の二人よりも大きな声量で話し始める。

「うちは『雷雲』の紅一点、南野日和みなみの ひより

少女、日和の自己紹介に、ソラがなぜかキレる。

「おい日和! 俺より長く自己紹介すんなよ!!」

「いいじゃない! 事実だし!」

「なにぃ!! 俺は認めんぞ!」

「なによ!」

「なんだよ!」

「やめろソラ、日和」

いがみ合う二人を、隊長の武が制する。隊長の権力が大きいようで、二人はそれぞれ押し黙った。二人とも不完全燃焼のようだが、そんな二人を気に留めることなく、武は大地と光輝に向き直る。

「失礼した。それでは、そちらの自己紹介を・・・・・・」

「俺達はカスタマーのエリート集団『虹七色』。俺は白亜光輝」

「同じく、深緑大地だ」

タメ語ではあるが、礼儀正しく、軽く頭を下げる。奇襲を警戒して、すぐに顔を上げる。武は、二人が頭を上げたのを確認すると、尚もいがみ合っている二人の隊員を睨みつけ、落ち着きを取り戻させていた。

「何故ここに現れた?」

大地は、ソラと日和を黙らせた武に表情を変えぬまま問うた。

「愚問ですね。もうお分かりなのでは?」

「・・・・・・そうだな」

大地は、軽く息をつく。目の前の三人が自分達に何をしてこようかなど、言葉にされなくても、表情に変化がなくとも、その答えは容易に考えられる。実際、先ほどそれをしてきたのだから。

「我々は、侵入者であるあなた方を潰しに来ました」

表情には、文字通り真剣な顔、つまりは真顔が映し出されている。傍らには、ソラが殺気すら見せる顔で、反対側には、それとは別の種類の殺気を帯び、少しばかりにこやかな表情をしている日和の姿があった。

「武、目標を叩き潰す」

その瞬間、武は滑るように地面を移動し、光輝の眼前まで迫る。殺気を満ちさせた拳で、光輝の腹部に一打を食らわせる。光輝は無論防御の能力を発動させている。が、その光輝の左足が、肉眼で見えるか見えないかの小さなものではあるが、僅かに後ろへとその位置を滑らせていた。大地の背筋に、冷たい汗が流れる。しかし、その大地を我に返らせたのは、飛び上がって剣を振り下ろしてくるソラの姿であった。

「切り刻む!! 俺の剣で!!」

そう言いながら振り下ろされた剣は、大地の肉でも骨でもなく、はたまた構えていたバズーカでもなく、誰一人もいない土へ叩きつけられた。

「何やってんのよ!」

大地が気づくと、大地の背後にはすでに日和の姿があった。ソラがひきつけている間に、日和が後ろへと回りこんだのだ。剣をかわすため、空中にいた大地の視界に、日和の手にはめられた光り輝く爪が入った。

「レッツキル!!」

日和がその一言を捨てるように、だがどこか楽しげに言い放ち、その爪を大地へと突進させる。だが、その爪が大地に当たろうと思ったほんの数瞬前、日和の姿は大地からまるで大砲のように遠ざかっていく。大地が放ったバズーカ命中したのだ。振り向きながらも、日和への攻撃のためにチャージしていたのだ。

「突き刺す!!」

バズーカ発射後、地面にうつ伏せの状態で倒れた大地に、ソラが文字通り剣を突き刺すように、刃先を大地に向けていた。大地は、頭上から振り下ろされた剣を、横になった状態のまま、左方向へと転がり、その刃をかわす。隙を見せまいと、大地は腰のホルダーにしまわれたハンドガンを、ソラへと発砲する。ソラは弾丸の動きを見切り、弾を一刀両断する。刃の方には、全くの傷がついていない。

「真っ二つ!!」

その言葉通り、大地を真っ二つにしようと、ソラは仰向けになっている大地の高さを維持したまま、地面と水平に横に剣を振った。だが、その剣は宙を切り、ソラは体勢を崩す。大地はこの状態を狙っていた。いつもは肩に構えるバズーカを、今度は腰だめに構える。砲口は、前ではなく後ろを向いている。その砲口から、火薬の力によって飛び出してきた弾丸が放たれる。体勢が崩れているソラには避けようがなく、直撃を受ける。

「んぬぁぁっ!」

ソラが砂浜のより遠くまで吹き飛ばされる。大地はチャージをしながら立ち上がり、立て続けに武に向かって三発連続で弾丸を撃ち出す。

「く・・・・・・!! これほどか!!」

三発のうち一発を無防備な腹部へと直撃し、光輝を押していた拳が、光輝から離れ、武は、ソラほどではないが、やはり砂浜まで吹き飛ばされる。

「大丈夫か! 光輝!」

「あぁ! 俺達はまだ、負けてない!」

光輝が本当に全くのダメージがないような顔で言った。

 そう、俺達はまだ、負けてはいない!!


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