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第二話:中央街と魔法

第二話:中央街と魔法

それからは何事もなく、昼過ぎには魔法学校のある中央街に到着した。

とりあえず軽く昼飯を食べてから、寮に荷物を置くために向かう。寮には1年生から3年生までが暮らしているらしいけれど、今は長期休暇中だからか、人の気配はほとんどない。

中を見て回ると、食堂や大浴場などこれでもかと設備が揃っていた。みんなが軍に入ってからも、この寮を出たがらないわけだ。


自分の部屋についた。どうやら二人部屋のようで、もう一人は「アルカナ」という人物らしい。

もう来ているのかと緊張したが、それは杞憂に終わった。部屋の中には誰もいない。家が近いのか、それとも入学式の当日に来るのだろうか。とりあえず荷物を整理して、いつ他の人に見られてもいいように片付けておいた。


時間は3時過ぎ。まだ夕食には時間がある。俺は少し街を探索することにした。

何度かこの中央街には来たことがあったけれど、雰囲気が少し、いや大分変わっていた。

ランド人の他に、手が発達して毛が少ないシーウォーカー人、華奢だが筋肉がしっかりついているシード人。それに比べて、2m近くある巨体のアーミー人。そして、周囲のどいつもこいつもを見下すような目で睨みつけているクロバキア人。

みんな祖国を滅ぼされ、ここへ逃げてきたのだ。逆に言えば、ここにいるのはあの地獄のような戦場を生き延びてきた猛者ばかりということ。そして、ここ最後の希望「ランド」に全人類が集まり、アストロフを滅ぼすために牙を研いでいる。


すれ違う人たちの話を盗み聞きしていると、どうやらバルキザス様の左腕である「グレイブ」を総大将として、クロバキア大国を奪還する計画が裏で進んでいるらしい。

……まあ、まだ軍にすら入っていない俺が、そこまで大きなことを考えなくてもいいか。

歩いているうちに図書館についた。予習だと思って、少し魔法の勉強でもしていくかな。


翌日。

入学式が終わり、指定された教室に到着した。

1クラス約40人で、全部で12クラス。計480人。本当にいろんな人がいた。一番多いのはやっぱりランド人、次にクロバキア人で、あとの国はどっこいどっこいだ。

席についてそうこうしていると、ガラリと扉が開いて担任が入ってきた。


「今日からお前らの担任になった。よろしく」


女性のわりにはやたらと身長が高い。おそらくアーミー人だろう。目つきが鋭く、いかにも現役の軍人というオーラを放っている。


「いつもならこの時間、自己紹介や学校の紹介をするが、そんなものは時間が解決してくれるから省く。今から魔法についての授業を行う。一時間後には身体検査、魔法検査、それと学科試験があるから覚悟しておけよ」


教室がざわつく。初日からずいぶん実戦的だ。先生は黒板に向き直り、チョークを走らせた。


「まず魔法は、隕石の残骸に触れたら覚醒すると言われているが、厳密には少し違う。実際は『魔力を帯びていて、かつ意思の持たない物』に触れることで覚醒する。死んだアストロフに触れて魔法が覚醒したケースも、過去に何度もあるからな」


先生の凛とした声が教室に響く。


「そして魔法は2種類存在する。『固有魔法』と『一般魔法』だ。固有魔法は遺伝以外、基本的にはそいつだけのもの。一人一つだ。過去に2つの固有魔法を授かった者がいたが、すぐに魔法が暴走して死んだ。まあ、2つ授かること自体がとてつもなく低確率だから、魔力を帯びている物に触るのを過度に怖がる必要はない」


一人一つ。だから俺には、お母さんの魔法じゃなく、お父さんの『水素変幻』だけが遺伝したんだな、と納得する。


「次に一般魔法だ。これは魔力さえあれば、基本的には誰でも使える魔法だ。数は約10万種あり、今でも新しい魔法が作られている。威力や効果は全員一定だ。一般魔法にも階級があり、初級、中級、上級、特級、神話級に分かれている。初級や中級は簡単に使えるが、上級からは才能と『魔法回路数』によって左右される。だから、神話級魔法はまだ世界に一つしか作られていない。それも、今はもう使える者がいない魔法だがな。――『蘇生』。死者を蘇らせる魔法だ。バルキザス様でも扱えない、本当に神話の領域だ」


死者を蘇らせる魔法。そんなものがあるのかと、教室中の生徒が息をのんだ。


「さて、その『魔法回路数』の話をしておこう。魔法回路数とは、魔法を同時に展開できる数であり、自分の予備魔力の数でもある。もし魔力が空っぽの状態になっても無理に魔法を使おうとすると、この魔法回路数が魔力量の代わりにゴリゴリと減っていく。魔法回路数が減れば、当然、同時に展開できる魔法の数も減る。魔法回路数が減った状態で元の魔法回路数の魔法を展開することも不可能ではないが、魔力消費が激しくなり、さらに魔法回路数を減らすことになるから絶対にやめておけ」


先生の目が、一段と鋭くなった。


「もし魔法回路が全部なくなれば、生き物は激しく苦しみ、人は死ぬ。魔法は元々、未知の力だ。人が使うとどうなるか分からないものを、今は体内の魔法回路が無理やり制御してくれている状態なんだ。それが壊れれば、魔法は即座に毒となり、肉体を内側から蝕む。だから魔法の利用は計画的にな。……ちなみに、魔法回路は後から増えることはない。覚醒した時の数が全てだ」


増えることはない。その言葉に、何人かの生徒の顔が強張った。


「よし、簡単な実技を行おう。自分の魔法回路数を測ってみる。やり方は簡単だ。何でもいいから手に魔力を込めるだけで、回路が肌に浮き出てくる。魔力の通り道をイメージすると見えやすいぞ。――こんな感じだ!」


先生が自身の腕に魔力を込めると、皮膚のの下から光る線がいくつも浮かび上がった。


「私の数は23本。平均が17本だから、まあ普通だな。上級魔法を使うには10本以上、特級が30本、神話級が50本以上と言われている。みんなもやってみるといい」


一斉に、みんなが自分の手に魔力を集中させ始めた。

「俺、16本だ」「私は21本ある!」などと声が上がる。大体の子が15〜25本の間で、たまに一桁しかなくて絶望している子や、30本以上あって周囲から歓声を浴びている姿もあった。


俺も、そっと右手に魔力を集中させてみる。

お父さんのトラップを仕掛ける時のように、魔力の回路を意識して、なぞるように……。


じわ、と皮膚の裏側から、眩いほどの光の線が編み目のように浮かび上がった。

数えてみる。……1、2、3……49、50。


(ご、50本……!?)


神話級の領域の数字が、俺の腕にびっしりと刻まれていた。

おそらく、このクラス……いや、この学校全体で見ても異常な数だろう。これほど出るとは思っていなくて、俺は周囲にバレないよう、内心で思いっきりガッツポーズをした。これなら、お父さんの魔法を使いながら別の魔法をいくつも維持できるわけだ。


「それじゃ、あと30分は好きにしろ。友達を作ってもいいし、学校を見て回ってもいい。では解散」


こうして、魔法学校の初めての授業が終わった。

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