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死を選んだ花嫁  作者: 六軒さくみ(咲海)


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7/8

花嫁衣装の自決(前編)


 ある日、魔女だと名乗る人が言った。


 あなたは近い将来、自分の手でその命を絶つことになると。

 その時、私はありえない話として笑っていたのだろうか。

 それとも、ありえる話だと思って納得していたのだろうか。


 今でも思い出せない。

 自分の感情なのに。

 ただ、あれ以降、私はずっと夢の中を生きていた気がする。



 魔女の予知は絶対だ。

 もう、私の運命は決まっていたのだろう。




「お前の婚約者となったアルシェリーナ伯爵令嬢だ、ご挨拶を」

「はじめまして、アルシェリーナ。僕はアレッシオレント」


 ふわりと笑った彼はそれは美しい人だった。

 5才の自分がぽーっと頬を染めるくらいに。

 アレッシオレントは私より5才年上の人で、この時にはすでに10才を迎えていた。

 背丈もあり、私よりずっと大人に見えた。

 何を話したのか何一つ覚えていない。


 5才当時の記憶など、そんなものだ。


 その後、定期的に彼とは会ったものの、優しくされた記憶も、楽しかった記憶も殆ど無い。

 忘れてしまったわけではない。

 彼はこの頃からすでに、私を毛嫌いしていたのだ。


 大きく関係が変わる事もなく時が過ぎ、私は10才、彼は15才の少年期に入っていた。

 貴族の習わしとして、騎士団に所属し身体を鍛え、成長期とあいまって、彼は私が圧倒されるほどのスビートで大人になっていった。


 思春期にとっての5才差は大きい。

 私はまだ私は10才の子供。

 彼と同世代の、デビューを控えた貴族の令嬢たちと比べれば、その差は如実に表れた。


 だからといって、彼が浮名を流したことはない。

 そのあたりは、とても真面目でまっすぐな人だった。

 有力貴族の令息としての矜持も、自身を律する自制心にも優れた人だった。


 彼はその後も私を見てはくれなかった。

 貴族同士の婚姻にはありがちな政略結婚で、我が家がかなり圧力をかけた結果の婚約でもある。


 10才を過ぎると貴族の子女が社交界デビューの前哨戦といっても過言ではないお茶会への参加が増える。

 婚約者がいる場合は婚姻後も続く人脈の為、婚約者がいない場合は優良な相手を探すため。

 だから、どの家も自分の子供たちを着飾らせ参加させるのだ。

 当然、私も彼も園遊会やお茶会に参加する。

 その中で彼は群を抜いて美しい人だった。


 社交界において「国の薔薇」とも称された母親と、代々、容姿の美しさから数多くの王妃や側妃を送り込んだ侯爵家の父の間に生まれたのがアレッシオレント・バレリアントだった。


 はちみつ色の瞳にプラチナブロンド。

 同世代の令息たちより頭一つ高い、誰もが一目ぼれをするに値する人物だった。

 成長すればするほどに、彼の容姿は人目をひいた。


 彼は一足先に16歳で社交界にデビューをした。

 すでに社交界では有名で、エスコート役の申込が絶えないらしい。

 社交界デビューがまだ先の私には、その世界がとても遠く未知のもので、彼が遠くに行ってしまった寂しさしかなかった。


 そのうち、どうしたら彼は私を見てくれるのか、ばかり考えるようになつた。

 彼は最低限の挨拶以外の会話をしてくれない。

 いつも冷めた表情で私の話を聞き流し、不愉快そうに眉間に眉を寄せるだけ。

 ある程度の年齢に達した頃には、私を見る目も冷たくて、「君の事が嫌いだ」と言葉にされなくても、理解が出来るようになった。


 でも、言わせてほしい。


 伯爵家の令嬢として、物心がつくよりもっと前から厳しい淑女教育をされた。

 私は伯爵家に生まれた落ちたその瞬間から、父と一族の希望を一身に背負わされた。

 艶やかな黒髪に蒼天色の瞳、白い肌に紅をささなくてもふっくらとした唇。

「将来が約束された」娘だった。


 私は母親の手から離され教育係と乳母に託された。

 貴族にはよくあることだが、私は特別だ。

 将来を約束された娘だったから。


 妹が二人生まれても、私は約束された娘のままだった。

 それでも、両親の期待に応えられるならと努力した。

 厳しい教育の息抜きすら許されなくなり、ほぼ監禁状態になった。


 愛情からではない。

 期待している娘が失われたら困るからだ。

 なぜなら、私は期待された娘で、父親はかなりのお金をかて私を養育したから。


 背筋を伸ばせと背中に物差しを入れられ、頭を揺らすなとと書籍を載せられる。

 落としたら、太ももをたたかれた。

 さすがに肌にこのる傷をつけるのはためらわれたのか、鞭でたたかれることはなかった。

 カトラリーの選び方を間違えて、ご飯を抜かれたこともある。


 血のにじむ努力をしても、父からは「当然だ」くらいの反応しかなかった。


 10才を過ぎるころには私は感情を出すことや、自分を出すことはもうできなかった。

 出来なかったじゃない。

 わからなくなっていた。


 当時、王家には年頃の王子が2人いたので、父は王太子妃や王子妃を狙ったが、2人ともすでにお相手がいた。

 そんな父が次に目を付けたのが侯爵家の令息である。

 特にアレッシオレントは、国内の貴族がこぞってその正妻の座を娘にと狙っていた。


 彼が私を見てくれない。

 彼が私に笑ってはくれない。

 彼は私に話しかけてはくれない。

 彼は私の名前すらもよんでくれない。

 それをどんなに伝えても、「お前の努力が足りないからだ」と切り捨てられた。


 ある日、父が遠い国から来たという予言の魔女を面白半分で家に連れてきた。

 信じていたわけではなく、父としては余興のつもりだったのだ。

 彼女曰く魔女と言っても魔法を使えるわけじゃない。

 魔法を使えた魔女はすでに、歴史の中に埋もれ、絵本の中に出てくるだけだ。

 けれど、魔女は、未来を言い当てることが出来た。


 絵本の中ではこの大陸は戦争に明け暮れて、我が国も度重なる戦争と飢饉で、国の焼結の危機にあった。

 その危機から国を救うため、国王は古の言い伝えのある魔女過去から召喚することにした。

 なんとかしてくれと頼むのだ。

 他力本願の何物でもない。


 幼い頃は、その絵本の中の魔女に憧れたが、大人になったら、国のトップが他力本願過ぎて笑った。

 絵本では、魔女は召喚され、国と大陸には無事に平和が訪れた。と物語は終わる。

 だけど、どうやって平和をもたらしたのか肝心の事は何一つ記載されていない。


 大人になった私はそれが知りたいのに。


 絵本の続きには魔女は過去に帰るとき、人々から引き止められてしまい年を取る。

 だけど魔女には待っている人がいるから、もとにの場所に帰るためにも、人々と約束する。

 魔女は自分の血を引く分身が生まれてくるよう過去を変えるのだと。

 それが「聖女」伝説の始まりだった。


 なんと中途半端な話だろうか。

 そもそもなんで、魔女が聖女に化けるのか。

 魔女と聖女では雲泥の差がある。


 それでも、今でも脈々と魔女の伝説は続いていて、聖女祭も続いている。


 それなら、聖女は魔女になりえるのね。

 聖女のはずの彼女みたいに。




私が彼から毛嫌いされているのは、だれの目から見ても一目瞭然だった。

 だから、人々は口々に好き勝手なことを言っていた。

 そんな噂が出るだけでも、父は私を許さなかった。


 実際は声を上げて泣きたい場面でも、何度もつばを飲み込んで、瞬きして、何事もなかったかのように、目を細めて「笑う」のだ。


 16才でデビューした時、エスコートは当然、アレッシオレントったが、彼は儀礼的に「似合いますね」といっただけで、美しいとも、可愛いとも言ってくれなかった。

 なにより、彼は私の名前を呼んでもくれない。

 ただ、冷ややかな瞳で、私を見て、ため息をつくのだ。


 私は何もできない子供のようで、いつも、いつも傷ついた。

 この頃にはもう、私は、何のために生きていて、なんのために息をしているのか理由がわからなかった。


 愛してるがわからない。

 誰もそれを教えてくれない。


 でも、私を見てほしいの。

 私を見て、話をしてほしい。

 それすらも、我が儘なのだと、アレッシオレントに言われたら、怖い。

 だから、もう笑っている事しかできない。


 そんなときに魔女と出会った。

 魔女は私を見ると、なぜか涙を流してこう言った。

 ごめんなさい、あなたは幸せには慣れないと。


 信じてはいなかった。

 辺境伯の令嬢が「聖女」になるまでは。


 その後も彼と会話をすることも出来ないまま、着々と婚姻のための準備は進んだ。

 彼からは一度も婚約者らしい送り物や手紙などはもらえないまま月日が過ぎる。

 結婚式の準備が始まれば、少しくらいは私に目をむかけてくれるのではないかという期待は無残にも打ち砕かれた。


 この年、すぐ下の妹が社交界にデビューした。

 まだ婚約者は決まっていない。

 妹は恐らく婿をとり、この伯爵家を継いでいく身になる。

 父のお眼鏡にかなう最良の人を探してあてがうのだと思う。


 我が伯爵家は爵位こそ伯爵だが、今では国の根底事業に大きく関わっている。

 裕福なだけではなく、国の事業にも精通し、家を盛り立てて行かなければならないのだから、ごく普通のありきたりな婚姻は恐らく望めない。

 妹も政略結婚の犠牲なのかと考えて、とても悲しくなった。


 妹の相手がアレッシオのような人ではない事を願うだけだ。


 真珠の君という建国祭の聖女に選ばれた彼女と彼との関係は私の耳にも届いている。

 あれだけあからさまな行動をとれば、耳に入らない方がおかしい。

 妹も夜会で二人を見かけたそうで、家に帰ってきたからとても憤慨していた。


 私は、彼との関係が拗れ、彼が堂々と彼女を連れ歩くようになってからは、貴族社会でも好奇の目と哀れみの目を向けられることが多く、聞きもしない噂話を聞かされたので、足が遠のいていた。


 妹も周囲に私と彼のことで色々と言われたらしく、時に悔しそうに話をしてくれた。

 妹には申し訳ない気持ちで、謝るといつも「悪いのはあの下種な男とあばずれな女」のせいだと言った。

 妹は私よりも、彼女に対する怒りを持っていた。

 いずれ一番下の妹も社交デビューする。

 その時に、同じような思いをするのかと思うと、泣きたくなる。


 聞かないようにしていても、余計なことを言ってくる人は沢山いて、私に耳に嫌な言葉を親切ぶって話をしていくのだ。

 はっきり言って醜い。

 あるとき、どうしても欠席の許されない夜会に、従兄弟の付き添いで参加した。


 この従兄弟は父の弟の子だが、母親が子爵令嬢のいわゆる妾の子ではあるものの、父曰く、不出来な本妻筋の兄よりも出来がいいらしく、父が特に目をかけて自分の傍に置いている。

 その従兄弟も彼と彼女のうわさには、眉をひそめていて、「あれでは伯父に捨てられるのは時間の問題だ。僕もあの男の下では働く気はない」と言っていた。


 彼はすでに一部の人間からは「女で堕落した無能」の烙印を押され始めている。

 貴族社会においては致命的なのに、彼はそれに気が付かないのだろうか。


 その夜会に彼は彼女を連れ立って参加していた。

 勿論、平民でしかない彼女に参加する資格はない。

 辺境伯の娘と言っても、彼女自身は平民で「貴族令嬢」としての称号は持っていないのだ。

 彼は、私宛の招待状を彼女に渡したのだ。


 まさか私が参加しているとは思っていなかったのか。

 なにより、私宛の招待状で彼女を連れてくれば、誰だって別人だと気が付く。

 そこまで彼は彼女に溺れ見境がなくなりつつあるのか。

 私の方がとても恥ずかしい思いをしたのだ。


 婚姻前から愛人の存在を許すとは、とても寛大なのねと当てこすりを言われた。

 激怒した従兄弟と妹は、夜会を途中退席した。

 王家からの招待であったのに、挨拶もしないまま退席すれば恐らく問題になる。

 けれども、平民でしかない、ましてや私の招待状を使って入り込み、あまつさえ婚約者のいる男と同棲までしている女に嘲りを受ける言われはない。


 後から知ったが、彼女の父は色々な夜会に押しかけては迷惑をかけ、先日は父に「お前の娘は愛されない憐れで不憫で不出来な娘だが、我が娘は聖女に選ばれる名誉を受け、愛される娘だ」と豪語して、顰蹙を買い、主催の公爵を怒らせただけでなく、宰相に社交界への出席を禁止された。


 辺境伯は軽薄な人なのか。

 それとも貴族社会のルールを知らないのか。


 あの夜会は公爵家の主催だが、公爵の一人娘と王子殿下のお見合いの意味があったのだ。

 第二王子殿下の婚約者の方が、正式婚約の前にはやり病で身まかられ、新しい婚約者を決めならければならなず、政治的な意味合いで公爵家の令嬢に決まったのだ。

 かの夜会は、実質は王家から頼まれて開かれたもの。


 彼女も彼女の父も一番やってはいけない事をしてしまったのだ。

 あの場で「愛されないだの愛されただの」騒ぎを起こせば問題になる。

 ましてや辺境伯は貴族位のない騎士位。

 彼女に至ってはただの平民。


 父が怖い。


 私の父は、辺境伯のような浅知恵の愚か者ではない。

 嫌味や当てこすりを言われても、平然としている人だ。

 父にとっては、辺境伯など不出来な子供と一緒で、敵の数にも入らないだう。

 本当に怖ろしい人とは、父のような人を言うのだ。


 侯爵家の嫡男で王太子の側近でもある彼がなぜ、そのような暴挙を許したのかわからない。

 判断が出来ないほど、彼女にのめりこんているのだろうか。


 少なくとももう私の中に、彼への思慕は一かけらも残っていない。

 だけど、この婚約が無くなってしまったら、私は父からどのような扱いを受けるか。

 考えるだけでもう怖くて、日に日に食欲はなくなっていった。


 私の気持ちと裏腹に結婚の準備は進んでいく。

 輿入れの為のドレスや持ち物など次から次らと運ばれてくる。

 父はわが伯爵家の権勢を誇るために、王族の婚姻かと思うほどの豪華な衣装を誂えていた。

 一度しか身に着けないドレスに、莫大な費用をかけるのは、無駄ではないかと思ったが、父に逆らうことは出来ず口をつぐんだ。


 彼の動向は、耳を塞いでいても入り込んでくる。


 どこの夜会に彼女と参加していた、観劇に訪れた、彼女の名前で茶会が催されたと。

 なにより、私が衝撃を受けたのは、あの緑の別邸で二人が暮らしているという事だった。

 あの別邸は、結婚の後、彼と二人で新婚生活を送るために、父が私に用意したものだ。

 婚姻前に壁紙と調度品を選んでもいいと言っていた。


 私の意見など一度も聞いたことのない父から言われた初めて言葉だ。

 だから、とても楽しみにしていたのに、彼はその別邸を自分の持ち物のように扱い、彼女に与えた。

 婚姻の為にそろえた調度品は、運び込まれることもなく、いま、伯爵家にある。


 日に日に、父の機嫌がよくなっていくことが怖い。

 あれほど、私に厳しかった父が、お役御免だとはかりに好きにすればいいという態度も。

 私は彼にとっても、父にとっても必要のない人間。


 笑う事も泣くことも、もう感情を出す事なんて忘れてしまって、ただ、日々、起きて食事をし、本を読んで寝るという事以外はしていない。

 結婚を控えた花嫁はもっとすることがあるはずなのに。


 彼からは花の一つも届かない。

 彼女との関係を打ち明ける気もないのだろう。


 彼女のことが好きなら好きでいい。

 私のことが嫌いなら嫌いでいい。

 こんな身勝手なやり方ではなく、貴族社会の礼儀にのっとったやり方をしてほしかった。


 彼女とともにありたいなら、せめて私には話をしてほしかった。

 間借り何も伯爵家の令嬢の私が、このような仕打ちをうける必要はないと思う。

 なにより、愛してくれとは思わない。

 ただ、少しでいいから思いやりが欲しかった。


 この段階になったら、もう、私から彼女のことを聞こうとは思わなかった。

 解決する方法なんてないから。

 婚約破棄になって、どこかの後妻でもいいとも考えていた。

 修道院でもいいと思っていた。


 ある日、彼から初めて送り物が届いた。

 とても素晴らしい宝飾品でだったけれど、公爵家の財政が持ち直したとは聞いていない。

 いまだに分割で支払いを続けていると聞いている。

 なのに、これほどの品を買うお金はあるのだろうか。


 過日の夜会でも思ったが、彼女が身に着けていたドレスや宝飾品の費用はどこから出たのだろうか。

 彼女の父は騎士位でそれほど裕福とは聞いていない。

 流行のドレスを買いそろえるだけの財力が今の侯爵家にあるとは思えない。

 あるのなら、とうに婚約破棄出来ていたと思う。


 けれど、今更だ。

 もう、どうでもいい。


 同時にその宝飾品を見て彼は本当に、私を見ていないのだとも認識した。

 どれも、私の色ではなかった。

 彼の瞳の色でもなく髪の色でもなく。

 かといって、私の瞳や髪の色とも違う。


 貴族暗黙のルールとして、婚約や結婚に際して、男性から女性に贈る宝石は、女性の瞳か髪色に寄せる。

 恐らく彼は、これを辺境伯の令嬢に送るつもりだったのだ。

 エメラルドは彼女の瞳の色。

 案の定、翌日、彼の家の者訪れて、私に面会を求めてきた。


 頭を下げて、業者の手違いで色の違うものを送ってしまったので、交換してほしいと言ってきた。

 業者が間違えたなら、その商店の責任者が来る。

 これでも我が家は商会を運営しているから分かる。

 信用の根底にかかわる問題なのだから、顧客に対応などさせない。


 それも相手は高位貴族。


 相手は私を指名したから対応したが、断る理由もないので交換した。

 父の不在を狙ったのだろう。

 こんなことが公になれば、大問題になる。

 侯爵家もそれは理解しているから、この執事の人も父の不在に来たのだ。


 交換された宝石は、確かに私の瞳の色だったけど、明らかに格の落ちるもので、幾度か使われたものだった。

 彼の私に対する扱いが現れていた気がする。

 私には何をしてもいいと彼は考えているのだと思うと悔しさより、憎しみより、ただ、ただ、自分という存在がひどく頼りなくて、泣いた。


 ねえ、

 私はあなたにこれほどの対応をされる何か酷い事をしたの。

 殆ど会う事もなかったのに、私の何が嫌いだったの。

 次から次への流れた涙は、後に嗚咽になって、心配した妹がずっと傍にいた。

 私、まだ泣けたのねと冷静な自分がいた。


 この頃から、私の心は体より先に死んでいたと思う。




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