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異世界探偵のひとりごと ~ 【WEB短編版】  作者: D'Salvatore
第1巻

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第7章 - 暴露と発明(後編)

「それで……」


 ジュリエッチが咳払いをしてから言った。


「話を戻すけど、その"テレビジョン"とやらを開発するのに必要な情報……あなたの世界では、正確にどう機能してたわけ?」


「まだ俺の協力が欲しいってことか? 本気で実験台にする気?」


「それが主な理由ね」


 ジュリエッチが答え、あの見慣れた輝きが瞳に戻った。


「さっさと座って。全部教えてもらうわよ……」


 彼女は作業台の近くに二脚の椅子を引き寄せた。俺たちが快適に……そして近くに座れるような配置だ。長くて詳細な会話を示唆する並びだったが、同時に親密な距離でもあった。


 俺は彼女の隣に腰を下ろした。この近さが妙に自然に感じられることを意識しながら。膝が軽く触れ合った時、どちらも離れなかった。というより、胸の奥で何かが静まり返るような感覚があった。


「えっと……」


 俺は話し始めた。


「基本原理は、確か、ラジオに似てる。電磁波が情報を運ぶんだ。違いは、音声だけじゃなくて映像信号も送信するってことで……」


「その映像の送信はどうやって行われるの?」


 彼女が尋ねた。わずかに俺の方へ身を傾けながら。


 その動きで、あのジャスミンの香りがまた漂ってきた。話を続けるために集中しなければならなかった。


「画像は何千もの小さな点に分解される。俺たちはそれをピクセルって呼んでた」


 俺は両手を使って説明した。


「各ピクセルには色と明るさの情報があって、カメラがその画像を電気信号に変換して送信する……」


「で、受信機がその信号から画像を再構成するわけね」


 ジュリエッチが言葉を継いだ。突然の理解で瞳が輝く。


「一行ずつ、点ごとに。そういうこと?」


「その通り。それがあまりにも速く起こるから、人間の目には連続した動きに見えるんだ」


 彼女はしばらく黙り込んだ。その輝く頭脳の中で歯車が回転しているのが見えた。


「送信周波数は、ラジオとは違うものにしないと……」


 ジュリエッチが呟いた。独り言のように。


「それに、音声と映像を同時に処理できる受信機を開発しないといけない……」


 彼女の指が机を叩き始めた。思考が加速しているサインだ。


「巨大スクリーンは粗削りなマナ結晶で動いてる。高エネルギー周波数を捕捉するんだけど……」


 彼女は続けた。背筋を伸ばして。


「家庭用となると……結晶を精製できれば、特定の層に彫刻して……」


「俺の世界では、ブラウン管ってのが画像投影に使われてた」


 俺が付け加えた。


「じゃあ、マナ結晶を層状に作れば……」


 彼女の声が弾んだ。


「一つの層が音声周波数を捕捉して、もう一つが映像を。で、三つ目で両方を同期させる。サンドイッチみたいに重ねるの! そうすれば、完全な送信を再構成できるわ!」


 彼女は机を叩いた。悟りの表情で。


 彼女が働く様子を見るのは魅力的だった。情報を処理し、概念を繋げ、抽象的なアイデアを具体的な可能性に変える方法が……。


「送信には……」


 彼女は続けた。生き生きと身振りを交えて。


「主要結晶のネットワークを塔として使える。それぞれが特定周波数に調整されてて。家庭用受信機は……その、小型化された精製版で、望むチャンネルだけを捕捉する」


「ああ、その望むチャンネルっていうのは……放送局って呼べばいい」


 俺が提案した。


「ふうん……それがあなたの世界での呼び方?」


 俺は頷いた。ジュリエッチの目が輝くのが見えた。


「じゃあ、魔法周波数ごとに異なる送信ができるってわけね」


 ジュリエッチが眉をひそめた。


「それに、結晶は環境のマナそのもので動くから、エネルギーの心配はいらない」


 すべてのピースが繋がった時、ジュリエッチの顔が明るくなった。俺はただそのプロセスを見守りながら微笑んでいる自分に気づいた。


「利点は、私が望む周波数にだけ反応する結晶を作れることね」


 彼女は言った。すでに頭の中で計算に没頭している。


「でも問題は……今のスクリーンよりも小さいものをどう作るかなんだけど……」


「あなたは、すごいよ」


 俺は思わず呟いた。


 彼女は話すのを止めて俺を見た。ほんのりと頬が紅潮する。


「え……どういう……?」


「あなたの頭の働き方が」


 俺は説明した。自分の顔も熱くなるのを感じながら。


「その……魅力的なんだ。抽象的なアイデアを受け取って、すぐにそれをどう実現するか思い描く姿が」


 俺たちの間の沈黙は、どんな言葉よりも多くを語っているようだった。彼女の唇が動いた時、告白が漏れるんじゃないかと思ったが、彼女は視線を逸らし、疑問だけを空中に残した。


「そのテレビジョン……あなたの世界では、人々はどう使ってたの?」


 ジュリエッチがようやく尋ねた。


「あらゆることに」


 俺は答えた。自分の声がいつもと違って聞こえるのを無視しようとしながら。


「娯楽、ニュース、教育。家族が一緒に番組を見るために集まってた。物理的に離れていても、人々を繋げる方法だったんだ」


「私たちの巨大スクリーンみたいだけど……もっと親密な感じ?」


「そう。ずっと個人的なんだ。テレビは実質的に、とても愛された家族の一員になってた」


 ジュリエッチは椅子に背をもたれた。天井を見上げながら、そこに展開する可能性が見えているかのように。


「実は、これはじいさんがずっと再現したいって願ってたアイデアなの」


 彼女が言った。


「人々の家に直接映像を送信することについて話してた。でも、じいさんはそれがどう機能するのかよく分かってなかったから……あなたは、なんでそんなこと知ってるわけ?」


「ああ、前世では、俺は"ナード"だった。テクノロジーに魅了されてて、いつも新しい機器について読んで調べてた……基本的に、俺はあなたの男性版で、ずっと魅力に欠けるバージョンだったんだ……」


 恥ずかしそうに笑いながら、ジュリエッチは頷いた。


「ふうん……ナード? その言葉、いいわね」


 彼女は結論づけた。本物の興奮で俺を見つめながら。


「とにかく、エリオット、これは帝国での情報の流通方法を革命的に変えられるわ……」


「娯楽の方法もね」


 俺が付け加えた。


「エンターテインメントの価値を過小評価しちゃダメだよ」


 彼女はもう一度笑った。俺にとって危険なほど中毒性のある音だ。


「じいさんは"アニメ"って呼ばれるものを見たがってたの。あなた、それが何か知ってる?」


「基本的にはラジオドラマみたいなものだけど、違いは描かれた画像で、想像できるあらゆる種類の世界や物語を作り出せる。俺の前の世界で最も消費された製品の一つだったよ」


 ジュリエッチは頷いた。俺たちは数分間、心地よい沈黙の中で座っていた。オーブンで焼けるラザニアの香りがキッチンを満たし、家庭的で居心地の良い雰囲気を作り出している。


 それが俺たちを特別な泡で包んでいるようだ、と俺は思った。


「エリオット」


 ジュリエッチが言った。声がより低く、ためらいがちに。


「もう一つ……聞いてもいい?」


「もちろん。何が知りたいんだ?」


「別の人生を覚えてるって……どんな感じ?」


 質問は不意打ちだった。めったに立ち止まって考えることもなく、誰かと話すことなんてもっとない類いのものだ。


「混乱するよ……」


 俺は認めた。彼女が完全な注意を向けて俺の話を聞いているのを見ながら。


「時々目覚めて、一瞬、自分がどこにいるのか分からなくなる。他の時は、ここには存在しないテクノロジーを期待してたり……この世界では決して生まれなかった人々を……」


「辛いでしょうね」


 彼女が言った。声に本物の理解を込めて。


「そういう人たちを覚えてて、もう二度と会えないって分かってるのは……」


「辛いよ。特に、人生全体を置き去りにして、愛した人たちが俺が別の世界で生きてることも知らないって分かってる時は……」


 俺は一旦止まった。胸に馴染みのある重さを感じながら。


「でも……ここで大切な人たちにも会えたから、だから、ただ……ノスタルジアみたいな感じなんだよな」


 ジュリエッチは完全には解読できない表情で俺を見ていた。そこには理解があったが、もっと深い、もっと個人的な何かもあった。


「孤独でしょうね……」


「実際、かなり孤独だった」


 俺は考えずに答えた。そして止まった。自分自身の正直さに驚いて。


「でも、最近は……あまり孤独じゃない。それに、あなたが俺が転生者だって知ってくれて、俺は……迷いが減った気がする」


 告白は抑える前に漏れた。キッチンの空気が俺と一緒に息を止めたようだった。ジュリエッチが俺を見た方法が、心臓を揺らした。


「じゃあ、私は……あなたの助けに?」


 ジュリエッチが尋ねた。声がほとんど囁きになっていた。


「あなたには想像もつかないほど」


 数秒間、俺たちはただ見つめ合っていた。沈黙は不快ではなかったが、間違いなく、嵐の前の空気のように重くのしかかっていた。


 ジュリエッチはわずかに首を傾けた。彼女の表情に何かが変わった。眉が緩み、唇がゆっくりとした呼吸で開いた。


 俺は彼女を初めて見るかのように観察した。キッチンの光が顎のラインを強調する様子、睫毛が投げかける繊細な影の下で、瞳がより強烈に見える様子を……。


 彼女はわずかに俺の方へ傾いた。計画されたものではなく、ほとんど無意識に。俺は後退すべきだった。いつも大事にしていた職業的な距離を保つべきだったが、代わりに、自分の体が彼女に応答しているのを感じた。微妙に前に傾きながら。


 俺たちの間の空間は徐々に縮まった。呼吸で測られるように。最初、彼女の肌から発せられる熱を感じられた。次に、息を吸った時、彼女が使っている控えめな香水が肺を満たした。


 彼女の目が一瞬だけ俺の口元に落ちてから、また俺の目に戻った。俺も同じ動きをしている自分に気づいた。彼女の唇の繊細な曲線を記録しながら。


 俺の手が知らぬ間に動いた。ゆっくりと上がって、彼女の顔に触れる寸前まで。彼女の耳の後ろに緩んだ髪の房を優しく収めながら、俺は彼女の肌から数センチのところで止まった。ジュリエッチは俺の手の方向に顔を傾け、睫毛が震えた。


 彼女がため息をついた。低く、ほとんど聞こえない音だったが、それが俺の胸の奥深くで何かに反響した。俺の親指が彼女の頬をわずかに掠め、彼女が一瞬目を閉じた時、背筋に震えが走るのを感じた。


 彼女が再び目を開けた時、そこには俺を武装解除する脆さがあった。それは単なる欲望ではなく、信頼だった。俺を唾を飲み込ませる静かな委ねだった。心臓があまりにも激しく打っていて、彼女に聞こえているに違いないと確信した。


 俺たちの距離を縮めながら、顔はもうほんの数センチしか離れていなかった。彼女の温かい息吹が肌に当たるのを感じられた。瞳の細部すべてが見え、瞳孔がわずかに拡張しているのに気づいた。


 周囲の世界が消え去ったようだった。俺たちの間のその小さな空間、あの美味しくて耐え難い緊張へと縮小されて。


 ジュリエッチはわずかに息を吸い込み、唇がもう少し開いた。俺は自分の呼吸が途切れるのを感じた。彼女が俺の方向に顔を上げた時、俺はもう少し身を傾けた……


 ……そしてオーブンの耳障りなアラームが炸裂し、床に落ちたクリスタルのように瞬間を粉砕した。


「ラザニアが……」


 ジュリエッチが言った。まるでトランス状態から抜け出すかのように素早くまばたきをして、離れながら。


「そうだ……ラザニア……俺……ああ、焦がすわけにはいかない」


 俺は呟いた。素早く立ち上がりながら、瞬間が崩れた時に襲った喪失感を無視しようとした。


 オーブンを開けると、逃げ出した香りは天国のようだった。黄金色で泡立つチーズ、生地の端がわずかにカリッとして、ソースが表面で満足げに小さな泡を作っている。


「うわあ……これ……これ……」


 ジュリエッチが言った。再び近づいてきて、俺が天板を作業台に置いた時に隣に立った。


「これ、匂いが……」


「いい?」


 俺は尋ねた。オーブンミトンを外して彼女を見ながら。


「いいどころじゃ……まるで……家みたい」


 ジュリエッチが言った。まるでプレゼントを受け取ったばかりの子供のように瞳を輝かせて。


 その言葉が俺たちの間に漂った。どちらも完全に探求する準備ができていない意味を孕んで。視線を彼女に向けると、柔らかく、ほとんど脆弱な表情で俺を見つめているのが見えた。


「カットする前に、少し冷まさないと」


 俺は説明した。声を普通に保とうとしながら。


「そうしないと、盛り付ける時に崩れちゃうから」


「どのくらい?」


「15分くらいかな」


「じゃあ……時間があるから……」


 ジュリエッチの通信機が再び鳴り始めた。彼女は眉をひそめ、本物の苛立ちが顔を横切るのが見えた。まるで外の世界が俺たちの特別な泡への歓迎されない侵入であるかのように。


「もしレオンがオカダ事件の詳細でまた電話してきたら……殺してやる……」


 しかし、反対側の声はレオンではなかった。もっと形式的で、もっと緊急だった。


「ジュリエッチ様? こちらは帝国病院の医療主任です。至急お話ししなければなりません」


 ジュリエッチの表情が劇的に変わった。先ほどの親密さは全て蒸発した。自動的に、俺は彼女の突然の変化を心配して、もっと近づいた。


「何があったの?」


 ジュリエッチが緊急の口調で尋ねた。


「侍女頭が……重篤な医療合併症を起こしています。宮廷医たちは……途方に暮れています。あなたの存在と、信頼できる医療専門家の方が、即座に要請されています」


 ジュリエッチは俺を見た。彼女が言葉にする前から、その目に質問を見ることができた。そこには信頼があったが、もっと深い何かもあった。


 彼女は俺を仕事のパートナーとしてだけでなく、もっと……何か別のものとして信頼しているんだ、と俺は思った。


「分かりました」


 彼女が通信機に言った。


「一時間で伺います。前回と同じ症状ですか?」


「はい」


 ジュリエッチは通信を切って俺を見た。


「エリオット、五臓にマナが重度に蓄積するケースについて知識はある?」


「それは……症状次第だな」


「異常な青い光で輝く目、絶え間ない体の震え、皮膚の下に見える暗くなった静脈、銀色がかった唇の色、小さな魔法の火花を伴う途切れた呼吸……」


 その描写が俺の医療的な思考を始動させた。戦争中に何人かの戦闘員で見て治療したことのある症状を即座に認識した。


「普通、唾液に赤い結晶が形成されたりする? 強烈な熱感を伴う腹部の膨張は?」


 俺は尋ねた。声が馴染みのある臨床的な口調になりながら。


 ジュリエッチは完全に動きを止めた。驚きと安堵のようなものが増していく様子で俺を見つめた。


「どうして……ええ、まさにその通り。あなた、助ける方法を知ってるの?」


「症状は、生命器官でのマナ結晶化を伴う魔法的過負荷を示してる」


 俺は説明した。すでに頭の中で必要な手順を見直しながら。


「これは、大きな魔法的潜在能力を持つ人が、エネルギーを適切に導く方法を学んだことがない時に起こるんだ。気づかないうちに、マナが蓄積して内部で固化し始める。もしそうなら、彼女には即座の外科的介入が必要になる」


 ジュリエッチは一瞬動かなかった。俺の言葉を処理しながら。


「あなた……そういう手術ができるの、エリオット? だって帝国医たちは無能で、知ってたとしてもそんな処置をする勇気がないのよ」


 質問がラザニアの香りが満たし続けるキッチンの空気に浮かんだ。穏やかな夜の啓示と高まる親密さが、俺たちの異常な責任という冷たい現実に置き換わった。


「それは……条件次第だ」


 俺は答えた。医療的プレッシャーの馴染みのある重さが落ち着くのを感じながら。


「手術中に魔法を使う許可はもらえるのか?」


「それは手配できるわ」


 ジュリエッチが焦燥した声で答えた。


「あなたは首都で唯一……違う知識を持つ医者なの。お願いエリオット、彼女の命を救えるの?」


 彼女の声には……ジュリエッチに期待していなかった絶望と脆弱性があった。俺は頷いた。その人が彼女にとって大切な誰かなんだと理解して。


 そして、ジュリエッチにとって大切なら、俺にとっても大切になるんだ、と俺は思った。


「不可能を可能にしてみせる。あなたがそれを必要としてるなら」

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