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異世界探偵のひとりごと ~ 【WEB短編版】  作者: D'Salvatore
第1巻

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第6章 - 告白と発明(前編)

 ジュリエッチの台所には、オレガノとバジルの香りが漂っていた。俺はトマトソースに最後のひとつまみの香辛料を加える。


 大理石のカウンターには小麦粉が散らばり、赤いソースの飛沫が点々としていた。午後いっぱい、材料を試していた証拠だ。


 ジュリエッチの台所は矛盾の塊だった。基本的にコーヒーとピザで生きている人間には、あまりにも機能的すぎる。質の良い調理器具が壁のフックに整然と並び、様々な香辛料がガラス瓶に入って列をなしていた。


 オーブンは、人生のどこかの時点で本格的な料理をする気があったことを示唆している。おそらく、ジュリエッチの数多くの発明品の一つで、結局使わなかったものだろう。


 すりおろしたチーズの最後の層を広げているとき、彼女の気配を台所に感じた。足音を聞いていなくても、いつも彼女が近くにいることがわかる。


 たぶん、あの微かな香水のせいだろう。ジャスミンの香りが、彼女が通り過ぎた後もずっと空気に漂っている気がする。それとも、どんな場所でも彼女がどこにいるか敏感に察知するようになったのかもしれない。


 捜査官の本能ってやつだろうな、と思った。


「何作ってんの?」


 少しだけ振り向いた。彼女は台所の入り口に立って、あの不思議そうに首を傾げる仕草で見ていた。髪が片方の肩に流れ落ちる。


「あんたが多分、食ったことないものだよ」


 そう答えて、また料理に集中した。オーブンの熱が顔を温める。温度を確認するために身をかがめた。


「ラザニアって名前をつけることにした」


「ラザニア?」


 ジュリエッチはゆっくりとその言葉を繰り返し、音を確かめるように転がした。チラッと見ると、彼女は下唇を軽く噛んで、集中していた。


「何かの呪文みたいね。まさか……エリオットさん、あたしの台所で悪魔の儀式でもやろうとしてるわけ?」


 笑ってしまった。チーズを均一に広げながら。彼女が俺の名前を呼ぶ声には、どこか集中力を乱すものがあった。


「魔法じゃないよ、ジュリエッチ。でも、確かにあんたを俺に惚れさせる魔法みたいなもんだな」


 少し間を置いてから続けた。


「パスタと、ソースと、チーズと、肉を層にして重ねた新しい料理なんだ。オーブンできつね色になるまで焼くと……神様からのプレゼントみたいな味になる」


 ジュリエッチは身を乗り出して、料理をもっと近くで観察した。カウンターに肘をついている。その動きで、彼女のあの青緑色の瞳が、いつものように好奇心いっぱいに動くのがよく見えた。


 細部を一つ一つ追う彼女の目。あまりに近くて、前腕の小さくて繊細な傷跡まで見えた。


 何年も危険な発明品をいじってきた証拠だろうな、と思った。


「ピザの変形版みたいね」


 ジュリエッチはさらに首を傾けた。その仕草でまた髪が滑り落ちる。


「なるほどね……あんた、あたしの胃袋から攻略しようとしてるわけだ?」


 その挑発に不意を突かれた。また笑った。けど、彼女が「攻略」と言った言い方には、何か妙に胃がひっくり返るような感じがあった。


「まあ、何層にも重ねたピザと見ることもできるかもな……」


 最後の材料を載せながら言った。彼女が俺の動きを一つ一つ観察しているのを強く意識する。


「それに、女を落とすには、まず胃袋から攻めるのが一番ってことわざがあってさ」


「へえ……賢いことわざじゃない」


 ジュリエッチは呟いた。


「で、この新しい料理のアイデア、どっから持ってきたの? じいさんもこういう変なアイデアをよく出してたわ……あんたたち、きっと気が合ったと思うわよ。あたしの胃袋はもっと喜んだでしょうけど」


 微笑んで、片眉を上げた。新しい情報だ。この世界に俺みたいな転生者が他にもいるのか? 皇帝自身がそうだったとしたら?


「それは……説明が難しいな」


 ラザニアをオーブンに入れながら言った。


 体を起こすと、ジュリエッチがさらに近づいていて、腕がほぼ触れそうだった。


「難しいって、どういう意味?」


 ジュリエッチは食い下がった。完全にこっちを向いて。


「答えたくないから難しいの? それとも、あたしが理解できないと思ってるから?」


 声には明らかな挑発があった。でも、それ以上に深いものがあった。本当に理解したいという感じ。それに、彼女の見つめ方には、喉が渇くような何かがあった。


 口を開いて答えようとしたとき、ジュリエッチの通信機が柔らかい音を立てた。彼女は眉をひそめた。明らかに邪魔されたことに苛立っている。まるで、どこか遠くて個人的な場所から無理やり引き戻されたような顔だった。


「ジュリエッチよ。さっさと言ってよ、レオン」


「ジュリエッチ! エリオットはまだそこにいる? 事件について最高のニュースがあるんだ!」


 彼女は俺を見て頷き、軽い仕草で呼んだ。近づくと、肩が触れ合った。彼女の肌の熱が、そこで脈打つ。思った以上に。


 彼女は離れなかった。むしろ、少し俺の方に傾いたような気さえした。


「ええ、二人ともいるわよ……何がわかったの?」


「岡田夫婦が全部自白したんだ!」


 レオンの声は興奮で震えていた。


「あんたたちの推理、完璧に当たってたよ。まさにその通りだった」


「続けて」


 ジュリエッチが言った。俺も会話に加わるために彼女が振り向いたとき、温かい息が耳にかかった。心臓が勝手に速くなる。


「完全に酔っ払ってたんだ。大輝があの魔法銃を見せびらかして、美優を感心させようと小さな発砲を繰り返してた。そしたら制御を失って、うっかり壁越しに撃っちまったんだよ」


「それで?」


 俺も通信機に身を乗り出した。


 その動きで、ジュリエッチにさらに近づいた。彼女が少し緊張したのを感じた。不快そうではなく、ただ……明らかに近さを意識している感じだった。


「エリオット、あんたはジュリエッチと同じくらい天才だよ。捜査に関しては、彼女以上かもな」


 レオンが答えた。


「あんたの推測通りだった。弾が壁を貫通したのに気づいて、隣の部屋に誰か傷つけてないか確認しに行ったんだ。そしたらベッドで松本が死んでた」


 ジュリエッチと視線を交わした。推理が正しかったことへの静かな満足感があった。でも、不必要な悲劇への重さもあった。


 この瞬間、彼女の目の奥を見つめて、何かがカチッとはまった気がした。まるで、俺たちがようやく居場所を見つけたパズルのピースみたいに。


「それでパニックになって、犯行現場を偽装して逃げたのね?」


 ジュリエッチが訊いた。俺から視線を外さずに。


「その通り。美優が精神魔法を使って内側からドアを施錠して、松本が一人で部屋で死んだように見せかけた。二人はすぐに逃げたんだ」


 レオンがため息をついた。


「酷い話だよ……男が一人、酔っ払った馬鹿が女を感心させようとして死んだなんて。男ってホント、アホだよな」


「どっちにしろ、悪意がなくても殺人だ」


 俺は呟いた。


「ああ、とにかく事件は解決だ。本当にありがとう。あんたたちがいなきゃ、こんなに早く真相には辿り着けなかっただろうな」


「チームワークだったってことよ、レオン。でも、報酬の振り込み忘れないでね」


 ジュリエッチは答えた。目はまだ俺に固定されたまま。


「でも、今回は認めるわ、レオン……あんたの予備捜査は優秀だった。おかげで、かなり……楽になったわ」


「ありがと……って、褒められた? ジュリエッチ、何かあった? いつもより変だぞ……」


 レオンの声は明らかに笑っていた。


「まあいいや、心配すんな。ローレンスに話して振り込み手配するから。じゃ、あんたたちが……何してたか知らないけど、そっちに戻ってくれ。美優はまだ使った精神魔法の詳細を聴取中だから、こっちはまだ仕事が残ってるんだ」


 通信が切れた。沈黙が台所に戻ってきた。さっきより重い。しばらくの間、そこに立って事件の解決を処理していた。でも、空気にはそれ以上のものがあった。肌がチリチリするような緊張感。


「まあ……」


 ジュリエッチが言った。カウンターから少し離れたけど、完全には俺から離れなかった。


「少なくとも、あたしたちの最初の協力は成功ね」


「その報酬なんだけど、だから追加で俺の給料が増えるって言ってたわけ?」


 俺は訊いた。


 彼女はあの謎めいた微笑みを浮かべた。でも、今日は何か違っていた。もっと個人的で、親密な感じ。


「実はね。あたしたち、私立探偵だから。当然、政府があたしたちに払わなきゃいけないのよ」


 彼女は無意識に髪の毛を弄んでいた。


 その仕草は意識的じゃなさそうで、だからこそ、もっと魅力的に見えた。


「エリオット、あたし……一つ頼んでいい?」


「もちろん。何が必要なんだ?」


「新しいプロトタイプに取り組んでて……手伝ってもらえない?」


 彼女の声には、ジュリエッチらしくない躊躇があった。腕を組んで、彼女を見つめた。


「どんなプロトタイプだ?」


 彼女は躊躇した。また下唇を軽く噛んで。


「街のスクリーンの概念、知ってるでしょ?」


「知らないわけないだろ」


 皮肉な笑みを浮かべて答えた。


「俺の顔、何週間もそこに映ってるんだから」


 彼女は笑った。本当の笑いで、顔が完全に変わった。


「可哀想に……有名人って大変ね」


「実際、注目されるのが嫌いな人間の性格には壊滅的だよ……まあいい、続けて。何が必要なんだ?」


「スクリーンみたいなものを作ろうとしてるの。でも、もっと小さくて。家庭用の」


 ジュリエッチは曖昧に手を動かした。


「ラジオみたいに情報を送信したいんだけど、人々が音声だけじゃなくて映像も見られるようにしたいの。リアルタイムで。でも家で」


 ゆっくりと瞬きした。彼女が説明していることを処理しながら。


「テレビのことを言ってるのか」


「何ですって?」


「テレビ……テレビジョン」


 説明した。声に明らかな面白さがあったと思う。


「おかしいな……この世界には高度なタブレットや巨大スクリーンがあるのに、誰もまだテレビを発明してないんだ」


 ジュリエッチは目を細めた。俺が知っているべきじゃないことを知っていると察知したときの表情が見えた。


 今回は、疑いじゃなくて……興奮に近いものがあった。


「あのね、知ってる通り、あたしたちはマナストーンを使ってラジオの電波をキャッチしてる。それでラジオを作った」


 ジュリエッチは指先で髪の毛を巻きつけながら言った。


「で、同じ概念をドローンの送信に応用して、街のスクリーンに映してる。でも、それを小さいデバイスに凝縮するのに苦労してて。あんた、いつも革新的なアイデア持ってるから……何かヒントがあるかなって思ったの」


 質問が舌の先で燃えていた。たぶん、今が言うときだ。


「聞いていい?」


「何よ、エリオット? 早く言って」


 彼女は腕を組んだ。でも、せっかちな口調には愛情があった。


「別の人生って、信じる?」


 質問が彼女を完全に不意打ちしたようだった。瞬きして、首を傾げる。あの輝く頭脳で歯車が回るのが見えた。


「信じない理由ある?」


 ジュリエッチが答えた。声がより柔らかくなった。


「この人生で十分なこと経験したから。宇宙がほとんどの人が想像するより、ずっと奇妙だってことくらいわかるわよ」


 深呼吸した。崖から飛び降りようとしているような気分だった。手が少し震えていた。でも、打ち明けることにした。


「実は、俺……」


 肩にかけていた布巾で手のひらを拭いて、深呼吸してから続けた。


「俺には……記憶がある。この社会とは違う社会の」


 長い間、彼女はただ俺を見つめていた。情報を処理し、分類し、分析する彼女の頭が見えた。


 個人的な告白でさえ、彼女がどう働くかを見るのは魅力的だった。でも、彼女の目には何かそれ以上のものがあった。予想していなかった理解。そして、ゆっくりと、好奇心に満ちた微笑みがジュリエッチの唇に浮かんだ。


「やっぱりね」


 彼女は一歩近づいて、舌を鳴らした。


「あんた、何かを話すとき……まるで前に経験したことがあるみたいだった。つまり、あんたって……転生者なの? そこからその情報を持ってきてるわけ?」


 頷いた。緊張して髪に手を通した。


「だったら、この家庭用スクリーンのアイデアであんたを探りに来て正解だったわね」


 ジュリエッチは悪戯っぽく微笑んだ。


「じゃあ、前から疑ってたんだな……」


 確認した。まだ不信や恐怖の兆候を待ちながら。それからため息をついた。


「ああ、転生者だ。その別の人生では、法医学捜査や、ラザニアや、テレビと同じ概念があったんだ」


「ふうん……」


 ジュリエッチはさらに近づいた。強烈な科学的好奇心で目が輝いている。


 でも、そこには何かもっと別のものがあった。呼吸を速くさせる何かが。


「つまり、あんたの頭の中って、想像してたよりもっと面白いってことね……他に何が入ってるの?」


 彼女の言い方――俺の頭が探索したくてたまらない宝物みたいに。でも冷たくも臨床的でもなく。俺の心に温かさが広がった。彼女の好奇心には、ほとんど……愛情のようなものがあった。


「頭を開けようとか考えてるのか? それは俺の業務内容に入ってないぞ……」


 半分冗談、半分彼女の視線の強さに緊張しながら訊いた。


「できるならそうするわ」


 ジュリエッチは特有の残酷な正直さで答えた。でも、その後微笑んだ。


「でも、知ってること全部教えてくれるなら我慢する」


「じゃあ、俺の契約書を変更して、新しい実験動物にでもするのか?」


「まあ、それは否定できないわね……」


 彼女は言った。でも声には遊びがあった。


「でも、あんたは史上最高の待遇を受ける実験動物になるわよ。ピザも何でも保証するわ」


 彼女の言い方――あのちょっと変な感じで。まるで俺と一緒にいることが本当に望んでいることみたいに。予想以上に心を打たれた。すごく感動した。


「なんで驚いてもいないし……転生者だって言っても怖がらないんだ?」


 ジュリエッチはカウンターにもたれた。腕を組んで。一瞬、表情がより真剣に、より無防備になった。


「実はね、他の現実が本当に存在するってわかって、怖がるより興奮してるわ」


 彼女は言った。声が低くなった。


 彼女の視線は俺に留まった。確固として、ほとんど不快なくらい。奇妙な感覚があった。彼女は今の俺だけじゃなく、かつての俺の残響も見ているような。それで俺は裸にされた気分になった。でも、正直言って……悪くなかった。


「俺が最初じゃないんだろ? 知ってる転生者」


 俺は訊いた。


 ジュリエッチは躊躇した。初めて、本物の脆さに似たものが彼女の顔を横切るのを見た。


「今まで、あんたみたいに変な話し方する人、一人しか知らなかったわ、エリオット」


 彼女は言った。声はほとんど囁きだった。


 エリャンはジュリエッチに一歩近づいて、もっとしっかりと見つめた。


「誰のことを言ってるんだ、ジュリエッチ?」


「カッシウスⅡ世皇帝……彼も転生者だったのよ」


「やっぱりな」


 俺は言って、眉間に触れた。


「彼も転生者じゃなきゃおかしいと思ってた」


「ええ……そうよ。あの人の考え方は、あたしたちの時代よりずっと先を行ってた」


 ジュリエッチはゆっくり頷いた。まるで心が遠くにあるように。


「四歳のときに会ったの。彼があたしの両親を訪ねてきた。当時、両親は帝国で最も尊敬されていた技術者で発明家だったから」


 彼女は一瞬止まった。その出会いの記憶を探るように。


「あの頃から、じいさんは別の世界、別の技術の知識があるって言ってた。いつも両親に……変なものを作ってくれって頼みに来たわ。あたしの両親よりずっと賢い人たちにさえ、意味不明な抽象的な概念を」


 ジュリエッチは俺を見て、ほとんど疲れたような微笑みを浮かべてから続けた。


「でも、あたしはそういう会話を聞いて育ったの。何故か、その議論が頭に残ってた。だから、チャンスがあったとき、全部実践しようとしたの」


「だから、そういう変な発明のアイデアを思いついたわけか?」


「じいさんの参考資料とアイデアを取って、彼が言ってたことから機能を想像して、うまくいくまで試行錯誤したのよ。だから……認めるけど、全部があたしの頭から出たわけじゃないわ」


 ジュリエッチは俺を見つめた。一瞬、彼女の目に珍しい不安が見えた。それから視線を自分の手に落とした。


「リバースエンジニアリングって呼んでたわ……」


 間を置いて、ジュリエッチは下唇を噛んでから、より低い声で補足した。


「あんた……あたしのこと、頭悪いって思った?」


「もちろん違う、ジュリエッチ。それはリバースエンジニアリングじゃない!」


 俺は強く首を振った。


「それは……純粋な天才だ。抽象的な概念とアイデアだけで、普通の人がその半分も再現できないってわかってるだろ? まるで、あんたは……欲しいものは何でも再現できるみたいだ」


 ジュリエッチはゆっくり首を振った。まるで俺の言葉が愛らしい愚かさみたいに。唇の端に浮かんだ微笑みには本物の面白さと、たぶん少しの誇りがあった。


「ああ、エリオット、やめてよ……」


 ジュリエッチが答えた。


「別世界にそれを作れる文明があるってことは、技術を発展させる理論が本物だってことよ。問題は、それをあたしたちの世界でどう応用するか見つけるだけ。そんなに天才的じゃないわ。ちょっとした……想像力が必要なだけ。例えば、あんたの法医学捜査の適応、あれこそ天才的よ」


「それは違う、ジュリエッチ」


 俺は一歩彼女に近づいて主張した。


「俺は経験して、それを覚えてる。あんたは、誰かから概念を聞いただけで、それを基に独自のバージョンを作った。明らかにあんたは天才発明家だよ。技術の聖女って称号は完璧だ」


「変人ってのも忘れないでね……それがあたしの一番チャーミングな部分なんだから」


 ジュリエッチが付け加えた。でも頬にかすかな赤みがあった。


「皆、あたしが変なアイデア持ってるって思ってるのに、半分が転生した皇帝から来たって知ったら……もっと異端者扱いされるわよ」


「半分が別世界の知識でも、残りの半分の発明は純粋にあんたの頭から来たんだから、問題ないよ」


 俺は言った。


「俺の別の世界には、『何も生まれない、すべては変わる』ってことわざがあってさ」


 彼女は笑った。本物の笑いで、俺がその笑いを愛し始めていることに気づいた。


「あんたの世界って、面白いことわざがたくさんあるのね……」


 彼女は言った。でも声には愛情があった。


「間違いなく、あんたってもっと……興味深くなったわ」


「俺のイケメンな顔と料理の腕で十分だと思ってたんだけどな」


「まあ、その髭を剃ったら……たぶん、ほんのたぶんだけど……あんたにチャンスがあるかもって考えが実現するかもね」


 ジュリエッチは体を起こした。でも離れなかった。


 唾を飲み込んだ。ジュリエッチが咳払いして、頬を赤らめて顔を背けたのに気づいた。

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