エピローグ - 予期せぬ家族
口の中が渇き、ズキズキとした頭痛で目が覚めた。工房の窓から漏れる光は、午後の終わりから夜の始まりにかけての、あのオレンジ色の色合いだった。赤紫がかった月が外の全てを照らしている。
目を完全に開ける前に瞬きをした。本当に眠れなかったあのイライラする感覚を引きずったまま。俺の頭は、ずっと働き続けていた。任務の細部まで全てを処理していたんだ。
ソファにゆっくりと座り直し、壁の丸い時計を見た。夜の七時半を指している。港から戻ってから、ほぼ十二時間も眠っていたことになる。
ゆっくりと身を起こすと、口の中にまだ血の味が残っていた。体が痛むのに気づき、マナの貯蔵がまだ完全に回復していないことを悟って歯ぎしりをした。
体の一部が脆く、弱っている感覚がする。俺の存在の全ての繊維で憎む感覚だ。まるで俺の半分が不在か、手の届かないところにあるかのようだった。
工房は静かだったが、空気の中に何か俺の注意を引くものがあった。上から聞こえてくる微妙で、ほとんど知覚できない音。目を細めてよく確認した。
空間に漂うヴァイオリンの旋律の音に気づいた。同時に、下の工房でジュリエッチが作業する特有の音がないことにも気づいた。
その音の起源に混乱して首を傾げ、テラスに続く階段を見つけるまで進んだ。その場所へのアクセスを与えるドアを押した。開けた瞬間、肺から空気が逃げていくようだった。
ジュリエッチは俺に背を向けて立っていた。顎と肩の間にヴァイオリンを挟み、ピンク色の髪が揺れている。流れるような、正確な動きで弓を動かすたびに。
それぞれの動きが自然に見え、演奏されるというより、音楽が彼女を通して流れているようだった。満月が彼女のシルエットを照らし、ほとんど天上的に見える光輪を作り出していた。
それは、神聖な存在がこの澄んだ夜に人間の間を歩くことを決めた姿の表現かもしれない。空には視界を遮る雲一つない夜。
ヴァイオリンから逃れる音符一つ一つが重みを持っているようで、周囲の空気を振動させた。俺の胸の中で何かが締め付けられるのを感じた。予想していなかった強さで。
音楽は陰鬱で、同時に荘厳だった。それぞれの音符が強烈さを帯び、テラスと夜そのものの雰囲気を変えていく。
旋律には顕著なドラマチックな重みがあった。避けられない強力な何かの到来を告げる音楽。決意と力について語りながら、それを奏でる者の心に宿る闇についても語っている。
ジュリエッチはただ音符を演奏しているのではなかった。彼女は深く暗い何かをそれらを通して流し込んでいた。おそらく七重に鍵をかけて閉じ込めていた感情を注ぎ込んでいたんだ。
壁にもたれて観察し続けた。動くことも、あの光景から目を逸らすこともできなかった。ジュリエッチをこんな風に見るのは初めてだった。技術革新以外の何かに身を委ねている姿。
その動きには激しい強烈さがあった。ほとんど暴力的な正確さで筋肉が収縮し、それが過ぎ去る一秒ごとに俺の胸をさらに締め付けた。
予期しない美しさを前にため息をついた。だが、彼女が楽器に注ぎ込む感情の生々しい力にも感嘆した。弓を動かす一つ一つの動きが、愛撫であり、同時に戦いでもあった。
ジュリエッチに投影される月の光と背景の街が、ほとんど演劇的な雰囲気を作り出していた。見えない力との激しい戦いに備える戦士のようだった。
夜風がピンク色の髪の先端で遊び、俺はあの瞬間の細部を記憶しようとしている自分に気づいた。
ヴァンパイアや人狼とあれほど自然に戦った女性が、単純な楽器を持つことでさらに危険になるのを見るのは奇妙だった。音楽こそが、彼女が全てを解放できる真の領域なんだ。
彼女は音楽を終え、ゆっくりとヴァイオリンを下ろした。張り詰めた肩がリラックスし、息がそれほど荒くなくなっていくのに気づいた。月光の下で輝く彼女のうなじには少し汗があった。
そのシンプルな細部が、彼女がこの孤独なパフォーマンスにどれだけ身を委ねたかを俺に気づかせた。
「どのくらいそこに立ってたの?」
ジュリエッチが振り向くことなく尋ねた。まだ地平線を見つめたまま。
その声が響き、俺をここ数分間沈んでいたトランスから引き出した。
「あなたがプロコフィエフを弾いてるって認識するには十分な時間だったかな」
俺はゆっくりと近づき、テラスの欄干の基部にもたれて、街に背を向けるように体を向けた。
「この曲は『騎士の踊り』だろ?」
ジュリエッチがゆっくりと振り向き、暗い笑みが唇に浮かんだ。彼女の目には安堵の、いつもと違う輝きがあった。まるで、ここで俺が彼女の隣に立っているのを見て、肩から重荷が取れたかのように。
その眼差しの中の何かが、彼女が言葉で表すよりもずっと俺を心配していたことに気づかせた。それが俺の胸の中の何かを温めた。
ジュリエッチは黒いロングドレスを着ていた。髪は肩に落ちるピンク色の滝のように解かれている。彼女をドレス姿で見るのは初めてで、壊滅的なほど美しかった。
「誰にも弾いて見せない人を無許可で見るのは、失礼よ、エリオット」
ジュリエッチは注意深くヴァイオリンをケースにしまいながら言った。
「なんで咳払いとか、喉を擦る音とか出して、あたしがあなたに見られてるって知らせてくれなかったの?」
「君の演奏を邪魔したくなかったんだ……正直言って、君だって気づくのに数秒かかったよ。君が神聖な存在だと思ったんだ。地上に降りてきて、戦闘で死にかけた後の俺に、あんなに美しい光景を見せてくれてるって」
ジュリエッチは横に笑い、首を傾げた。彼女の髪の房が肩から溢れ出た。彼女がさらに深く俺を見つめたとき。
「あなた、あたしを褒めるのが本当に上手いわね」
「まあ、心で感じてることをそのまま話してるだけだよ」
絶対的な誠実さで答え、彼女の目から逸らさなかった。
「だから、君をこんな風に笑わせることができたなら、それは魂の底から出た誠実な言葉だったからだよ」
ジュリエッチは頷き、地平線を見つめ直した。俺の言葉を処理する瞬間が必要なようだった。街の遠くの音が俺たちの間の沈黙を埋めた。
「どうやってこの曲を知ってるの?」
訪れた静けさの瞬間を破って尋ねた。
「じいさんが教えてくれたの」
ジュリエッチの声には、愛情のこもった郷愁の調子があった。
「考える必要があるときか、象徴的な事件を解決したときに完璧だって言ってた。今は、その二つの目的が両方あったと思う」
「もちろんじいさんじゃなきゃ」
俺も振り向いて地平線を見つめ、夜風を顔に感じながら言った。
「この曲、俺たちの状況にすごく合ってるよな。ヴィクトールとカルミラを指揮してる人物が誰なのか見つけなきゃいけない」
ジュリエッチは頷き、それから少し顔を俺の方に向けた。いつも見せるよりも柔らかい表情で。
「あなた……どう、感じてる? 着いてすぐ倒れちゃって……あなたが起き上がるか、心配だったわ」
彼女がそう言った方法、その声に珍しい脆さがあって、俺の胸の中で何かがほとんど心地よく動いた。
「馬車に二回轢かれた感じだな……行きと帰りの……」
疲れた笑みが唇に浮かびながら認めた。
ジュリエッチは微笑んだが、眉をひそめることで心配が明らかだった。
「でも回復するよ……マナの貯蔵が完全に正常化するのに数日必要なだけだ」
「エリオット、あたし……えっと、どう言えばいいか……」
ジュリエッチは躊躇い、彼女の目に本物の不確かさを見た。
「あなたが無事で、回復できてホッとしてる」
「そんなに俺のこと心配してたのか?」
カジュアルなトーンを保とうとしながら眉を上げた。心臓が加速していく。
「バカなこと言わないで」
彼女が俺の肩を軽く押した。その接触は、短くても、俺の肌に熱の波を送った。
俺たちの目が合い、俺たちの間の空気の温度が変わった。
「もちろん、あなたのこと"心配"してるわよ。あなたは、あたしの……従業員で……それに、港で向き合ったことの後、あなたの状態を心配するのは当然でしょ」
その瞬間、風がより強く吹き、彼女の香りを俺のところまで運んできた。その匂いはジュリエッチにとてもふさわしくて、俺は彼女の方に一歩近づき、より深く吸い込んでいる自分に気づいた。あの瞬間とあの特定の匂いを永遠に記憶したくて。
俺たちの間の距離は、あまりにも小さくて馬鹿げていた。彼女の鼻に点在する小さなそばかすが見えた。あの催眠術のようなターコイズブルーの目を縁取るまつげ一本一本を数えることさえできそうだった。
俺の心臓はあまりにも激しく鼓動していて、彼女が肋骨に打ちつけているのを聞けるに違いないと確信した。それは恐ろしく、同時に興奮することだった。
ジュリエッチの目が一瞬だけ俺の口に下がり、それから俺の目に戻った。そのシンプルな仕草が、俺を本能的に彼女にさらに近づかせた。
「ジュリエッチ……」
俺の声はかすれて、もう隠すことも制御することもできない何かで満たされていた。
彼女はごくりと飲み込み、彼女の呼吸が揺らいだ正確な瞬間に気づいた。視線を床に落とし、俺は彼女の動きを追った。震える手がドレスの生地を掴んでいるのが見えた。まるで錨を探しているかのように。
考える前に、手を伸ばし、ゆっくりと解放し、口の高さまで持っていった。ジュリエッチの手の甲に優しいキスを落とした。目を上げると、彼女の首の血管が力強く脈打っているのが見えた。まるで溢れ出しそうな衝動と戦っているかのように。
もう何も言うべきことはなかった。彼女の髪の緩んだ房に触れ、耳の後ろに留めた。手のひらを頬まで滑らせた。ゆっくりと顔を傾け、望むなら後退する時間を十分に与えた。
一秒一秒が永遠に引き延ばされる。胸の中で心臓が打ち鳴らされている間。
ジュリエッチは俺が予想したように離れなかった。ただ目を閉じ、わずかに頭を傾け、まるで貴重な何かであるかのように愛撫に身を委ねた。
再び俺を見つめたとき、俺の方に顔を上げた。唇が開き、呼吸が速くなる。その瞬間、俺たちの間の空間は単純に存在しなくなった。
キスは躊躇いがちに、ほとんど実験的に始まった。唇が貴重で壊れやすいものに触れるかのような優しさで出会う。まるで俺たちが確立したすべてのルールを書き直しているかのように。
そして、神よ、彼女は甘かった。俺の最も秘密の幻想で想像できたどんなものよりも甘かった。
彼女が応えたとき、俺の唇に対して動く彼女の唇の優しさが、呼吸の仕方を忘れさせた。胸の中で何かが落ち着く感覚があった。完璧な場所を見つけるピースのように。
すべての混沌、俺たちが背負っていたすべての暴力と痛みが、あの唯一の接触に溶けていった。ただ俺たち二人だけがあの瞬間に存在していた。
ジュリエッチは喉で低い音を立てた。ほとんど抑えられた呻きのようなもので……俺がまだ自分自身に対して保っていた制御の残りを破壊した。彼女が指を俺の髪に絡め、俺をより近くに引き寄せた。俺が保っていたすべての制御が溶けた。
彼女の手の一つが俺の胸に移動し、シャツを掴んだ。まるで嵐の中の錨のように。俺に押し付けている全ての点を感じた。まるで燃えているかのように。
俺の手は彼女の腰を見つけ、俺たちの体の間にもう空間がなくなるまで彼女を引き寄せた。彼女のすべての曲線が俺に対して収まっていく。まるで俺たちはお互いのために作られたかのように。
そのキスには両側からの降伏があった。ついに俺たちは仮面を落とし、本当に脆弱であることを許したんだ。
俺に対する彼女の唇の動き一つ一つが、言葉が決して同じ強さや真実で表現できないことを俺に語っていた。
俺の手は彼女の背中を上がり、ドレスの薄い生地越しに張り詰めた筋肉を感じた。俺の接触に反応する温かい肌。彼女は反応して俺に対して身をそらせた。
キスは深まり、より緊急で絶望的になった。再会以来共有してきたすべての失われた時間、すべての挑発を補おうとしていた。
ジュリエッチは俺の下唇を軽く噛んだ。降伏の瞬間でさえ挑発的だった。彼女の口に対して微笑み、同じ意図的な強さで返した。
彼女が俺の腕の中で震えた。俺が彼女にあの効果を引き起こすことを知るのは酔わせるものだった。俺が持っているとは知らなかった新しい力を発見したんだ。でも、もっとテストすることに熱心だった。
離れたとき、俺たちは両方とも、まるでマラソンを走ったかのように激しく息をしていた。彼女は額を俺の額に寄せ、目を閉じたままだった。俺も、その瞬間を味わいながら。
優しく親指で彼女の頬を撫で、彼女は接触に寄りかかった。小さな微笑が唇に遊んでいる。
「エリオット……」
ジュリエッチが俺の名前を囁いた。あの一つの名前の中に多くのものがあった……約束、恐れ、希望と欲望、すべてが混ざり合っている。
「わかってる」
静かに答えた。彼女が感じていることが正確にわかったから。俺もあの瞬間に同じことを感じていたから。
『パパ!ママ!』
スカイの声が俺の頭の中に鈴のように明瞭に響き、その瞬間を壊した。
ジュリエッチと俺は素早く離れた。呪文が解け、現実が力強く俺たちを引き戻すのを感じた。彼女は震える手でドレスを整え、俺は髪に手を通して落ち着こうとした。胸の中でまだ不規則に鼓動する心臓。
宇宙最大の秘密を発見したかのように笑っているスカイの方を向いた。彼女の目は純粋な喜びで輝いていた。俺の胸を以前に感じたことのない方法で温めた。
「二人ともキスしてた!」
スカイが小さな手を叩きながら叫んだ。一人だけの観客のように。
「わかってた!二人が一緒になるって、わかってたもん!」
「スカイ……君は俺たちを……何て呼んだんだ?」
赤らんだ顔に笑みが広がりながら、ゆっくりと尋ねた。
「パパとママ、お願いお願いお願い!二人の結婚式のために、あたしのドレス選んでいい?ママの髪と同じピンクがいい!」
ジュリエッチは髪の根元まで赤くなり、あの瞬間に彼女の顔全体を照らす笑みを隠そうとすることに愛らしいものがあった。ジュリエッチの頬はピンク色で、俺の視線を避けていたが、彼女が目を上げたときの目の中に、ほとんど隠せない喜びを見ることができた。
「スカイ、そういうわけじゃなくて、俺たちは……」
『二人はカップルだもん!』
子供だけが持つことができる確信をもってスカイが主張した。
『二人がキスするのは、本当に愛し合ってるからだって、マリアおばさんが言ってた』
少女は俺たちのところまで走り、脚の高さで抱きしめた。それぞれに一つの手。その仕草がまるで破ることのできない神聖な契約を封じているかのようだった。
『これでパパとママが本物になったね!家族がそうあるべきみたいに!』
ジュリエッチを見ると、彼女は笑わないようにしようとしていたが、目に輝く本物の幸せを隠すことができなかった。
彼女の唇はまだキスで少し赤く、それを見ることが、すぐに彼女を俺の腕の中に引き戻したくさせた。
「俺たちは見つかったみたいだな」
呟いた。
「変人カップルだって、すぐに認めるべきじゃないか?」
「機能不全家族ね」
ジュリエッチが同意し、母性的な優しさでスカイの髪を乱した。彼女に完璧に似合う優しさで。
スカイは顔を上げ、唇にいたずらな笑みを浮かべた。同時にジュリエッチの携帯が鳴り、俺たち三人を包む親密な泡を破壊した。
ジュリエッチはため息をつき、ポケットから携帯を引き出し、画面を見て眉をひそめた。誰が電話しているかを見たとき、彼女の目が暗くなるのに気づいた。多分レオンではないと思った。彼が電話するときにジュリエッチがあの怯えた表情を作ったことは一度もなかったから。
「セバスチャン?」
ジュリエッチが答えた。声は緊張し、心配していた。
「何があったの?なんでこんな時間にあたしに電話してるの?」
もう一方の声は聞こえなかったが、彼が話すにつれてジュリエッチの表情が変わっていくのが見えた。笑顔が消え、さらに深い眉をひそめに置き換えられた。
彼女は答える前に俺と視線を交わした。より真剣な声で。
「ちょっと待って、セバスチャン。スピーカーにするわ」
ジュリエッチがボタンを押すと、出てきた声は王子のもので、重く疲れていた。
「ジュリエッチ、アメリクの状況は前回話したときよりも悪化してる。君の助けが"必要"なんだ」
まるで状況の深刻さを説明するための正しい言葉を探しているかのように、間があった。
「人々は王が……彼らから盗んでいると信じてる。水と穀物を蓄え、村の土壌が干ばつで枯れている間にね。人々は空腹で怒っていて、そうなると理性の余地が残らないんだ」
ジュリエッチは眉をひそめ、ため息をついた。
「これが希望の騎士団の仕業だと思うの、セバスチャン?」
「ああ、ローレンスが君がその人狼と戦ったときに聞いたことを報告してくれた」
セバスチャンが言った。彼の声は深い息の間から来ていた。
「彼らが準備している戦争がここ、アメリクだと信じてる、ジュリー。王冠に対して反乱を起こすよう、人々の間に不和を蒔いているのは彼らだとほぼ確信してる。国は血なまぐさい内戦で爆発しようとしてる。第二次ドラゴン内戦で起こったみたいに」
拳を握りしめ、喉の乾きを感じた。俺たちが直面していることの現実が全力で戻ってきて、俺たちが経験した平和の瞬間を壊した。
「じゃあ、彼らが俺たちの世界のこれらすべての戦争を煽っている可能性があるってことか?」
俺が尋ねた。
「そう信じてるけど……君は誰だ?」
「俺はエリオットです」
「エリオット?」
セバスチャンが思慮深いトーンで言った。
「君はジュリーのために……働いている戦争の英雄か?」
「はい、そうです」
「それなら、エリオット殿、君にも頼れるなら、事前に感謝する。できる限りの助けが必要になる」
「とにかく、そこに行かなきゃいけないわ」
ジュリエッチが視線を上げて俺をまっすぐ見つめながら言った。
「一緒に行くわ、セバスチャン。不必要な流血を避けるために、できる限り助けようとする」
ジュリエッチを見ると、彼女の目の中に、俺の胸に燃えているのと同じ責任の炎が見えた。でも今は何かもっとあった。あのキスの前には存在しなかった、特別で深いつながり。
「待ってるよ、ジュリー!」
もう一つのケースが目前にある緊張の中でさえ、王子がジュリエッチを呼ぶ方法を聞いて、胃の中で何か奇妙なものが動いたことを告白する。ローレンスとレオンが初めて彼女をジュールズと呼んだとき、軽い嫉妬を感じていたが、今回は違った。
ジュリエッチは携帯を切り、髪に手を通してため息をつき、それからよく知っているあの思慮深い表情で地平線を再び見つめた。
「平和な一日を丸ごと持つことは決してないんだな」
胸に落ち着く未知の感情にもかかわらず、軽いトーンを保とうとしながら言った。
「いつアメリクに向けて出発する?」
「明日の朝、列車に乗るわ」
頷き、責任の重みが肩に再び落ちるのを感じながら、重くため息をついた。
「じゃあ今度は内戦を止めなきゃいけないのか?」
囁いた。
「君のために働くことが、俺の人生を決して単調にしないってことに、ますます確信を持ってるよ……」
ジュリエッチは肩をすくめ、それから小さな微笑を浮かべて俺を見た。その瞬間の緊張を少し和らげた。
『二人は新婚旅行で働きに行くの?』
スカイが俺の頭の中で言った。声は欲求不満と悲しみでいっぱいだった。
スカイを見ると、彼女の目の中に混乱が支配しているのが見えた。以前の興奮が、彼女の年齢にしては非常に成熟した心配に取って代わられていた。
「新婚旅行じゃないわ、スカイ」
ジュリエッチが少女の高さになるようしゃがみ、優しい表情で言った。
「とても重要な任務に出発するの。無視できないわ。君を救ったときみたいに、人々を救うためだから」
「パパとママの仕事、すごくつまんない」
スカイが純粋に子供らしい癇癪のジェスチャーで腕を組んでぶつぶつ言った。
「やっと二人が一緒になったのに、フェアじゃないよ」
「残念ながら、人生は俺たちが幸せだからって止まらないんだ、スカイ」
答えたが、彼女の目の中の悲しみを見て胸が締め付けられた。
なぜなら、ある意味、俺もそれを望んでいたから。止まって、あのキスが本当に何を意味するのか発見する時間が欲しかった。
『でも世界は、二人が愛し合ってるときは止まるべきなの』
スカイが可愛い口をとがらせて言った。
『本当に愛し合ってる人たちは、平和に一緒にいるべき。それが世界の唯一の法律であるべきなの』
「愛し合う」という言葉が、意図しない告白のように空中に吊るされた。ジュリエッチを見ると、彼女もその特定の言葉に気づいていた。彼女の顔には新しい脆弱性があった。ついにその感情が戦わずに存在することを許す受容。
「あたしたちはただ旅行するだけよ、スカイ。あなたもあたしたちと一緒に来るでしょ?」
ジュリエッチが尋ねた。
「もちろん行くよ!」
笑い、ジュリエッチに目を戻した。アメリクは数時間待つことができた。今のところ、重要なのはこの夜を楽しむことだった。彼女とスカイの隣で、もっと何かの約束が俺たちの間で輝いていた。テラスを照らす月のように。




