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刑事笹岡

 翌日、一通りの現場検証を終え、所轄警察署に設置された捜査本部では報告会が行われ、所轄の中で昼行燈と呼ばれている笹岡刑事も配属されていた。

かつては「カミソリ笹岡」と言われるほどの敏腕刑事だったらしいが、今は万年巡査部長の昼行燈と陰口叩かれる存在となっていた。


「この事件、何か引っ掛かる。……」

 笹岡は被害者の行動記録や、通報者の証言を丹念に洗い直し始めた。容疑者として被害者と同僚の高井、三宅、吉岡、小林が浮かび上がる。しかし、全員がそれぞれにアリバイを持っていた。


 捜査本部にて、笹岡は部下の持ち込んだ防犯カメラ映像を確認していた。映像は南千住駅近くの商業施設前で撮影されたもので、時刻は事件当日の午後7時05分を示している。

「この男、河川敷方面に向かっているようだが……」

映像には、黒いスーツ姿の男性が歩いている様子が映っていた。しかし、顔がはっきりと見えず、誰かの特定はできなかった。

「服装は目撃証言と一致しているが、この時間帯にこの場所を通っているのが不自然だな」


 午後1時、デジタル捜査班の報告によれば、被害者・岩田慎一のスマートフォンには、午後7時15分から午後7時40分の間に複数のSNS投稿が行われていたことが判明した。

「投稿の内容は極めて日常的だが、どこか機械的だ……。で、投稿された場所は?」

笹岡が尋ねる。

「GPSデータでは河川敷付近ですから、ほぼ現場ですね。」

「え?」

笹岡はスマートフォンの解析結果を聞いて、当てが外れたような少し驚いた表情をした。自分が考えていた想像と違ったようだった。


 同日の午後2時30分、捜査員たちは、被害者岩田の勤務先である日暮里駅近くの会社の同僚たちに聞き込みを開始した。

 高井卓也はこう証言した。

「退社したのは午後6時30分ごろでした。その後、いつものように日暮里駅から乗車し、北千住で乗り換えて綾瀬駅に向かいました。特に変わったことはありません」

 三宅美咲も同様に語る。

「私もほぼ同じ時間に退社しましたが、北千住で途中下車して買い物をしてから帰宅しました。被害者とは挨拶を交わしたくらいです」

 吉岡真一は定時退社後すぐに日暮里駅で買い物してから乗車し、北千住駅で快速列車に乗り換えそのまま帰宅したとのこと。

 一方で、小林徹也の証言には曖昧な部分があった。

「退社後に知人と会う約束がありましたが、時間に間に合わず一度電話してキャンセルしました。その後、北千住駅で途中下車して駅近くのファストフード店に入りました。」

「飲食店の領収書はありますか?」

「いいえ、そんなのすぐに捨てちゃいました……」

小林の証言の不確かさに、捜査員たちは眉をひそめた。


 翌日の捜査会議で、容疑者たちのアリバイが再度精査された。高井の行動には特に問題はなく、三宅美咲の買い物も確認が取れた。しかし、小林徹也の曖昧な証言や南千住駅の防犯映像が注目を集めた。

「だが、小林だけが怪しいわけじゃない。映像の男は吉岡にも似ているが、全員、南千住駅での降車は否定しているしな。」

笹岡はメモをまとめながら、再度南千住駅と北千住駅の映像を確認するよう指示を出す。


 午前10時30分、笹岡は改めて、南千住駅近くの店舗を訪れ、事件当日の状況を聞き込みに回っていた。駅から少し離れたカフェの店主がこう話した。

「確かにその時間帯、スーツ姿の男性が来店しましたよ。ただ、コーヒーを頼んだだけで、すぐに出て行ったので顔までは覚えていません」

「何時ごろですか?」

「7時15分か20分くらいですかね。結構慌ただしく見えました」

笹岡は手帳に記録を取りながら、心の中で推測を広げる。

「7時20分にここにいたとなると、犯行現場である河川敷に到達するにはギリギリの時間だ。しかも、駅から直接向かわなければ間に合わない」

一方、別の捜査員が防犯カメラ映像を解析し、南千住駅の改札を出た時刻と、このカフェに立ち寄った時間に矛盾がないことを確認していた。

「この行動、どこか引っかかるな……」

笹岡は記録を見返しながら、次の行動に移る。

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