(7)
カーチェイスなんて、ドラマや映画で見るモノだ。
自分でやるモノじゃない。
まして、巻き込まれるモノではない。
自分が乗ってたバスが勝手にカーチェイスするなんて……そんな状況、有ってたまるかッ‼
ああ、畜生……「これで向こう1年は馬鹿話のネタに困らない」以外に何1ついい事が無い。
多分、映画やドラマだったら「これ作った奴、やる気有るのか?」レベルのショボいカーチェイスなのだろう。
でも、意味不明なカーチェイスに巻き込まれた奴らからすれば……。
「うげ〜」
ある者は吐き……ある者は座り込み……。
「どうすんですか……これ……」
若い警官が呆然としている。
バスは路肩に寄せられ……参考人および容疑者である私らは、バスから降ろされ……。
「あのさ、ウチの子も、あんたらの番組観てるけど……これ知ったら泣くぞ‼『正義の味方』の番組撮ってる奴らが、高速道路で暴走って、何考えてやがるッ‼」
「す……すいません……」
早速、全責任を負わされる羽目になったプロデューサー補の女。
と言っても、戦隊モノだけど……「正義の味方」と言えるかはビミョ〜なんだけど……。
あ〜あ……SNSに何書かれるか予想が付いた。
「『正義の暴走は怖い』がテーマの特撮の撮影スタッフ。自分らが高速道路で大暴走」
……ま、そんな感じだろ。
あ……ひょっとして……何回か後の怪人は「犯人逮捕に熱心過ぎて暴走した警官」とかになるのかな?
どう考えても「正義の暴走をした奴が怪人と化す」ってコンセプトに無理が無いか?
その内、ネタが尽きるか、さもなくば「多少の犯罪や悪事は見逃しましょう」なんて子供番組としてマズい話になるんじゃないのか、これ?
だんだん……この番組のコンセプトが……「そんな話は公式じゃなくて二次創作でやれ」的な一発ネタにしか思えなくなってきた。
「え〜みなさんッ‼」
プロデューサー補のヤケクソ気味の絶叫。
「これから最寄りの警察署に移動して、形式上、調書を取ります」
「全員ですか……?」
イエロー役の赤城が、うずくまって吐きながら手を上げて、そう訊いた。
「はい、全員です」
心配そうな表情で、オペレーター役の村上が背中をさすっている。
いや、でも……この感じ。
ガチで百合てんのか、この2人?
まぁ、いいか……ウチの事務所の奴じゃねえし。
昔の戦隊モノについての都市伝説「出演者が百合駆け落ちしたせいで、途中で役者交代」みて〜な真似さえ起こして……あ……。
チューの奴が……真っ青な顔になって……。
ああ、マズい……。
パニック症状を起こし易い奴が……こんな状況に巻き込まれたら……うわああああ……。
「え……?」
「おい……?」
「救急車、空き有るか、確認しろッ‼」
とうとう……チュ〜の野郎は……過呼吸状態になり……ふらふらと……倒れ……。