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25:探しもの

「異界人ってだけで色眼鏡でみられたり色々苦労することがあったから、それで面倒になって秘密にしてただけだけどね。みんなになら知られても問題ないから」


 夜も大分更けて。話を聞くに、アリスは私と同じ異界人(エクサー)であり、ある願いのために世界を遍歴してきたらしいです。


 「人探し」をしていたようで情報収集のために世界をめぐり、自分以外の異界人(エクサー)に話を聞いて。


「――それで、“手がかり”自体は、実は数年前には掴んでて。でも実現困難だから、今はちょっと休憩中……みたいな感じかな」

「なるほど。手伝えることがあったら、何でも言って下さいね!」


 手伝える範囲内で手伝いますよ、とそう伝えるとアリスは笑顔で。

 

「じゃあ……イリアちゃんの旅の途中、異界人で強そうな人を見つけたら紹介して欲しいな」

「分かりました!絶対伝えますね!」

「ふふっ、ありがと」


 小さなことでもアリスに恩返しが出来るのはやはり嬉しいもので、些か気合が入りすぎちゃってたのか、小さい子でも見守るかのような優しい視線で見られているような気がして。子供っぽすぎた、とちょっと赤面します。


 

「そういえば、イリアの『人探し』……もしかして、昔の知り合いとかなの?」


 リリィが聞いてきます。


「そうですね、友達です。古くからの」

「へえ、どんな子か教えて貰って良い?もし見かけたら、教えてあげられるかも知れないから!」


 ニーアの容姿……教えても良いですよね?だって、リリィもアリスも魔族への悪感情は抱いていないようだし……、もし私がキールを去った後でニーアが訪れたら、入れ違いになっちゃう可能性だってあります。


「私と同じくらいの年齢の子で……髪色はブロンズ。狼の獣人の子です……耳と尻尾があります」


 いや説明してて自分で思いましたが、耳と尻尾が生えてるの目立ち過ぎるので人間の街の中に入ってこれる訳が無いじゃないですか。彼女は優秀な魔術師(マギ)だったので、魔術があれば隠したりできたのかも知れませんが……今は、私の所為で使えませんから。

 

「獣人?……珍しいね」

「珍しい、ですか?」


 まあね、とリリィは頷きます。しかし、それ以上特に何か言うことはなく、

 

「見かけたら直ぐに教えるよ」


 と。

 

「ありがとうございます。……でも、吸っちゃダメですよ。私のですから」


 流石にニーアとリリィが「吸血」するのはちょっと嫉妬しちゃいますから、一応釘を刺しておこうと思いまして。


「吸わないよぅ。えぇ〜、そんなに私信用ない?」


 と不満げな顔でリリィが言います。

 ……信用あるわけないじゃないですか。吸血なんて偶にするくらいで十分な筈なのに毎日アリスとしてるんですから!万が一でもニーアまでとられちゃったらちょっと笑い事じゃありません。ニーアは昔から“私の”です。


 

「いや、“何故か”アリスと行く日も来る日も、毎日毎日休みもせずに、吸血しているようなので。……ちょっと……そういうの、好きなのかなと」

「いやっ。それはっ!ち、違うくて……」


 顔を一瞬で上気させて、何事か言い訳しながらリリィが縮こまります。


 アリスが不思議そうな顔で。


「あれ。吸血ってもしかして毎日しなくても良いの?」

「まあそうですね」

「いや、違うの!あの、いっぺんに吸っちゃうと、貧血とか……アリスがしんどくなっちゃうかもだから……」


 へぇー、そうですかー。アリスの身体を案じているんですねー。リリィは本当に良い子ですねー。耳まで赤くして、言い訳みたいに呟いているので全然信用できないですけど。目が泳ぎまくっていますよ……?


「それだけ、ですか?」

「それだけだよっ!アリスがっ!心配だからっ!小分けにしてるのっ!別に他意は無いから!変な質問して面白がらないでっ!……もうっ、わざと揶揄ってるでしょ!」


 むぅ、揶揄って遊んでいるのバレちゃいましたか。……失礼、大変揶揄い甲斐があるなんとも可愛い反応をしてくれるものだから、つい楽しくなっちゃいました。


 続けてリリィは、ねえ、と遠慮がちにアリスの手を叩きます。


「なに?」

「あの、アリスは……毎日は、いや?」


 身長差からか……無自覚なのでしょうが、アリスに上目遣い気味な目線をちらちら送りながらそんな台詞を言うリリィ。金髪紅目ツインテ少女の上目遣いは破壊力高すぎでしょ。誰がこんなのされてイヤって言えるんですか。私の血、吸います?


 流石に冗談ですけど。


 ……それはそれとして私の目の前で堂々と甘えないで貰っていいですか。それはまあ、アリスはすごい甘やかし上手でしっかりしてるし頼れるし、信頼できるいい人ですけど……。思い出して下さい。恐らくというか何というか……ほぼ確実にその子(アリス)、私達よりも年下です。何なら私達が頼りにされるくらいしっかりしなきゃいけない筈なんです。全然年下には思えない心身の発達具合してますけど!本当にけしからんすぎる。

 

「……別に、嫌ではないかな。心配してくれて、ありがと」


 彼女はちょっと考えた後、にっこり太陽のような笑顔でリリィの頭を撫でます。ねぇ!甘やかさないで!リリィが骨抜きにされてダメな子になっちゃうっ!絶対その子、毎日アリスを吸血したいだけですって。羨まし……けしからんです。


 ちらちらアリスを伺っていたリリィはその返答を聞くと、満面の笑みでアリスにぎゅっと抱きつき、言います。


「こっちこそ、いつも吸わせて貰ってるの、助かる。――本当にありがと、アリス!」


 抱きついた勢い余ってベッドに倒れ込んだ二人――なんか百合百合しい雰囲気を感じます。……ここ最近リリィと仲良くなって思いましたが、彼女……かなりのハグ魔です。嬉しくなっちゃったりしたら兎に角、抱きつきます。私もこの短期間で5回以上は抱きつかれてます。可愛いから許されてます。可愛いは正義。正義ですけど……何を私は見せつけられているんですかね。

 

 まあ、ただのスキンシップと言えばそれまでですけど。寧ろ眼福まであります。……二人だけ特別に仲良いみたいでフクザツな気持ちもありますけど……それは、仕方ないことです。だって二人の方が付き合いが長いのですから、関係が深くなるのも当然ですよね。


 

 それで、その後も色々お話しをして。そうして話しているうちに話題はどんどん移り変わっていって。お洒落な服の話とか、リリィの好きなスイーツの話とか、果ては魔術の話まで。それに、明日服を買いに行こうって約束なんて交わしたりして。


 そうこうしているうちに眠くなってきちゃいます。微睡みの中、隣に人がいる温かさを感じながら、穏やかに眠りに落ちました。

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