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23:お、お邪魔しました……

 夜遅くこの前貸してもらった衣服を返すために、アリスの部屋を訪ねます。コンコンとノックして速攻で扉を開くと……カーテンが閉め切られ薄暗い室内の中……ベッドの上で上気した頬のリリィがアリスの上に乗って押し倒して覆い被さるような形で……え?えぇ……?


「お邪魔しました……」


 扉を閉めます。……いや、ノックして返事を待つのって大事ですね。まさかお取り込み中だったとは。というか鍵かけて下さいよ、そういうことする時は。


「いやいやいや、違うから!ちょっと……イリア!」


 そっと閉めた扉がばんっと勢いよく扉が開かれて、手を引っ張られて室内に連れ込まれます。……えー、違うって何が違うんですか。まさか二人がデキてるなんて……なんかNTRれた気分です。別にアリスと私が付き合っていたとかいうわけではないのでntrも何もないのですが。


 というか、ええ、まずまず私は常日頃から女の子は好きと公言していますが、それは“そういう”好きではないので。誤解なきよう。


「何が違うんですか?……別に言いふらしたりしませんよ」

「……ご、誤解!誤解なの!」


 リリィが何やら主張していますが……何が誤解ですか。普通に気まずいですよ、友人同士が実はそういう仲だったなんて。


「……イ、イリアちゃん。目、死んでる……。あの、そうじゃなくてね。えっと……これには、深い事情があって……」


 アリスまで弁明し始めました。はぁ……素直に“仲よく”してたっていったら良いのに、私の心に追い討ちをかけるかのように否定してくるとか……。ま、まあ私にはニーアが居ますから、二人だけ特別に仲良しだからって全然寂しくなんか無いですけど?……一番付き合いが薄いからって疎外感を覚えて、寂しくなっちゃうなんて、別に全然そんなこと無いですけど?大体、私にそっちの気はないし、別に、決して嫉妬してるというわけではないですけどね?ええ。


「……ねえ、リリィ。イリアちゃんは異世界人だから偏見とかも無いだろうし……言って良いんじゃない?」

「そうですよ。別に私は否定しませんよ、女の子同士のそういうことでも」

「いや、それは違くて」

「一体何が違うって言うんですか?……なら、なんでアリスの上の服が乱れてるんですか」


 そう……乱れてるんですよ、パジャマ!いつもは絶対着崩さない派のアリスちゃんが上気した頬でボタン二つも外しちゃってるんですよ!ちょっと衣服はだけたアリスも超絶可愛い、好き!だけど……やましいことする時以外にそうなりますか?いや、ならない。


「……確かにそうかも?」

「リリィ、納得しちゃダメだって」

「ほらやっぱりそうです!二人はデキてたんだ……なのにアリスは私にあんなことやこんなこと……」

「デキてないって!ほんとに!」


 膝枕もハグも「あーん」も添い寝もした私とアリスの仲なのに!……別に求められたらそういうことだって……ち、ちゅーくらいならしてあげられるのに!なんかすごい複雑な気分!


「大丈夫ですよ。二人が“そういう”関係でも、言いふらしませんから」

「違うから!……ね、ねえリリィ、言わないと、誤解が……」


 焦ったように顔を真っ赤にしているアリスの言葉に、リリィが難しい顔をして考えた後に答えます。


「……確かに、イリアになら“あのこと”……言っても良いかも」


 何をですか、なんなんですか。この蚊帳の外みたいな感じ。……付き合いの薄い私だけ知らない「二人きりの秘密」みたいな!……ずるいっ。別に羨ましい訳じゃないけど、ずるすぎる!


「あの、イリアちゃん?一回、落ち着こ……?」

「ええ、落ち着いてますよ。なんでもござれですよ、何ですか?もしかしなくても、恋人ですっ?」

「違うっ!違うからっ!あれは……そうっ、あれは仕方なかったの!」


 アリスとリリィが実は“そういう仲”だったと思い込んで錯乱して意味不明なことを口走ってしまう私。顔を真っ赤にして言い訳みたいなことを言い続けるアリス。風魔術で騒ぎを遮音して、どうにかしてアリスと私を落ち着かせようとするリリィで場は大混乱と相成りました。


*****


「え、吸血鬼……?」


 ……ようやく落ち着いた私にリリィが証拠でも見せるかのように口を開いて尖った犬歯を見せてくれます。ついでに、尖った耳も。


「そうだよ。一応、言いふらしたりはしないと思うけど……ルーやメイには言ってないから、まだ内緒にしておいて。いつか、自分で言う覚悟ができた時に言うつもりだから」

「それは了解です。え、でも……いつもは耳尖って無かったですよね……?」


 確認してみるとリリィは頷きます。


「ああ、それはね……固有スキルで普段は隠してるんだ」


 ああ、固有スキル……あれね。……異界人は大体持っていて何故か私が持っていない謎の力ですね。案外、異界人じゃなくてもみんな持ってるんですね、固有スキル。なんか、ずるくないですか?私も欲しいです。


「あと……イリアちゃんは分かんないかもだけど、吸血鬼……魔族って一般には人間から敵視されてて……だから、ここだけの秘密にしといて欲しいな」

「そう、なんですね。……勿論です、秘密にします」


 アリスが真面目な顔で言います。……やっぱり、150年経っても人と魔族の溝は埋まっていませんでしたか……予想通りとはいえ、少し悲しいですね。

 

 でも、朗報もあります。それは「アリスは魔族に対して敵意を持っていない」ということ。やっぱりアリスは天使ですね、こんな世界で偏見持たずにいるとか、どれだけ聖人なんですか?


「……それはそれとして、さっきは何を?」


 リリィがアリスを押し倒していたアレです。なんか良い感じに誤魔化されましたが私は忘れてません。


「あー……その、ちょっとだけ……吸血を、させて貰ってたの」


 ……なるほど、どうやらリリィはアリスに吸わせて貰っていたようですね。……羨ましすぎます。アリスみたいな美少女の血を私も吸いたい……絶対美味しいです。というか、そういえば吸血ってすごく快感を伴う(キモチいい)んですよね……実質“そういうこと”では?やっぱり何も違くなかったのでは?


「別にそれ以外変なことはしてないよ……?」

「……でも、アリス。吸血されている時……キモチよくなかったですか?」


 何を思い出したのか顔を突然上気させるアリス。照れてるアリスも可愛い……じゃなくて、やっぱり図星ですか。することしてたわけですね。ギルティです。


「そ、それは、確かにちょっとは……そう、だったけど」

「私も吸血したいです」

「……イリアちゃんは吸血鬼じゃないから、無理だと思うな……」


 むう、確かに……。いや、吸血鬼なのは吸血鬼なので吸血自体はしようと思えば出来るんですけど、まずまずしちゃ駄目でした。危ない危ない、勢いのまま行くところまで行っちゃう所でしたよ。


「……なるほど。誤解してました。騒いでしまってすみません」

「ぜんぜん大丈夫!(はた)から見たら誤解もしちゃう格好だったし、気にしてないよ」


「アリスもすみません。勘違いでした」

「……良いよ、勘違いって分かってくれたら、それでね」


 アリスは熱さを冷ますように手でパタパタと風を自分におくりながら、言います。服が乱れていることもあり、上気した頬の彼女はどことなく、えっっです。同性なのでせーふですけど。


 騒がしかった(主に私のせい)部屋に静寂が訪れます。……うーん、リリィの秘密も教えて貰ったし、アリスも別に魔族への嫌悪は抱いてなさそう……今を逃したら言うタイミング逸しちゃいそうですし、カミングアウトしちゃいますか。


「リリィ。話があります」

「何?」

「実は何と、私も吸血鬼(ヴァンパイア)なんですよね」

「え……?」

「吸、血、鬼ですよ。ほら」


 うぃーと軽く指で口を引っ張って、意識して尖らせて見せます。勿論耳も尖ってますよ……転生してから身体が魂に引っ張られたのか、人間と言われても納得できるくらいの範疇におさまっていますけど。


「勿論、異界人と言うのも嘘じゃないですけど……色々事情があるので、聞いて貰っても良いですか?」

評価モチベになりました、ありがとうございます。ぼちぼち書いていきます。

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