表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/37

15:願いと特訓

 空の揺籠亭でリリィと合流した後、これからの事をルーカスさん達と相談しました。


 探したい人がいるから出来るだけ早く一人前になりたいと言ったら、最低一年あれば行けると思うとの事。アリス達と早く別れたいというわけでは決してありませんが、それでも私にはそれなりに急ぐ理由があるのです。


 探したい人というのは私の旧友の一人、ニーアの事です。数百年前の私たちの「楽園」で「革命」が起きた時、処刑されて死にかけの私を連れて逃げた、神狼の獣人の大切な少女(ともだち)。私に仕えていたメイドである彼女は、私の命を繋ぎ止める為に「(ことわり)」を超えた「棺桶」を文字通り命を削って作ってくれた恩人でもあります。

 理を超える代償として、恐らく彼女は魔力を殆ど喪ってしまっているでしょう。棺桶を作る時の、ニーアの「魂」が壊れていく惨い様子は今でも目に焼き付いています。


 魂が壊れるということは、それ即ち魔術が使えなくなるということ。魔術が使えないとしたら、魔族と人が争っていた(今も敵対しているかもしれない)この世界で生き残るのは厳しいと思います。もし、ニーアが今まで生き残って来れていたとしても、明日死んでしまうかもしれません。勿論、ニーアは私なんかよりも遥かにしっかりしている子なので、今もこの世界のどこかで生きていると信じていますけど。


 そんなわけで、出来るだけ早く彼女を探します。今の「最優先事項」です。弱すぎる今の私では手の届かない目標だと思っていたのでさほど急いでいなかったのですが、こうも現実味を帯びてくるとなると、即刻探しに行きたい気持ちが勝ります。


 ……そういう事情もあって、早く一人前になりたいと頼み込んだら、次の日から特訓が始まりました。


 午前中は、冒険者組合(ギルド)所有の訓練場でルーカスさんとメイさんと一緒に基礎体力作りの運動。貧弱な私の事を一応は考慮してくれているようで、運動は軽めなのですが、運動も吸血もしていないこの身体には十分重労働です。


 昼時に少し小休憩を挟んで、落ち着いたら、アリスと一緒に魔術の訓練をします。……と言っても、最初の方は魔力量を増やす訓練だけで、これと言った魔術は教わりませんでした。


 起きている間はずっと身体から微弱な魔力を放出する……それだけのこの訓練は、魔力の絶対量を増やす効果があります、微量ですけどね。それに、息をするように魔力を動かすことは、魔術を手足のように使うことに繋がるらしく……そんなわけで、私は毎日魔力を放出させながら生きています。


 そうして魔力の扱いになれることで、制御出来る魔力も増やせるらしいです。いわば一石三鳥の訓練ということですね!アリス天才ですっ!


 ……でも、この訓練は慣れるまですごく大変でした。四六時中意識していないと、いつの間にか止めてしまっていることだってありましたし、最小限の量だけ放出するようにしないと、すぐに魔力欠乏で倒れちゃいます。初期の訓練だけで何回倒れたことか……、覚えていません。


 すっごくしんどいんですよ、魔力欠乏って。吐き気と眩暈と脱力感やらなんやらetc……でもう二度と倒れたく無いです。



 ……それはさておき、「魔王」について、です。……凡そ150年前、人と魔族が手を取り合って暮らしていた理想郷で、奸計を練って私の同胞(友人達)を虐殺した男……魔王カロス。彼についての情報はないか、と色々探しました。


 ここ、キールにはそこそこの大きさの図書館があります。まずはそこの蔵書を読みに行きました。幸い、大体の本は私でも読めるアラール文字で書かれていて、苦労はしなかったです。

 そこで得られた情報は「違和感が全く無い」という事です。歴史書は全て徹底的に偽装されていて、記述ブレなどは見つけることは出来ませんでした。もちろん、カロスの名も記されてありません。

 アリスにそれとなく聞いてみたものの、特に収穫は無し……。あ、そういえば、今のこの王国は半分“鎖国”状態と呼べるくらい出入国審査が厳しいらしいですね。出国するためには、実力のある冒険者になるか、王都にある『学院』で推薦を貰うか、です。それで、アリスに魔術学院に向かうことを勧められました。……行くとしても、まだまだ先の話ですけど、少し楽しみです。


 そんな感じで、色々調べて回ったりしてみたものの、正直歴史(魔王カロス)関連についてはお手上げ状態でした。そんなわけで、私は都市キールでの情報収集を諦めて、この一年は大人しく魔術の訓練に費やすことにしたのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ