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ところで、このルルーナルとかいう竜種はどうすればいいんだろうな。アンデッドの気絶状態を元に戻すのってどうすればいいんだ? 以前、オレも同じように気絶していたけど、あの時は無理矢理起こされたし今回もそれでいいのかな。
「とりあえず、コレが気絶したままだと、話が進まないな。アル、起こせるか?」
『お任せ下さい。ここをちょいちょいとやれば』
アルが指でルルーナル氏の頭骨を突く。電気のようなモノが照射されルルーナル氏の身体を紫電が走る。
『アァーッ!! ヒィッ!! 竜王種!? 夢じゃなかったのか!?』
あ、起きた。そして、アルの姿を見て驚愕。これは酷い寝起きドッキリだ。
『ちょっと! また寝ないで下さいよ! 寝るのはお父様の質問に答えてからにして下さい』
『ヒィッ!! ハイッ!! ………して、お父様とは何処に?』
「一応、オレだ。ちょっとした成行きでな。質問と言っても余り聞くような事ないんだけどな………。あぁ、そうだ。ルルーナルさんを召喚した術者は何処に居るんですか?」
アルに対してビビリ散らかしているルルーナル氏だが、一応、銘のある竜種の筈だ。そんな強力な竜種を誰が何の目的で召喚したかを聞いておいた方がいいだろう。
ルルーナル氏は、あーとかうーとか呻いた後、召喚された当時の事を話し始めた。
その前に“スケルトンが竜王種の親だと? 一体何の冗談だ”と呟いたのは、オレは聞かないフリをしておきますよ。アルはムッとしてますけどね。
『実は、儂を召喚した術者の姿を確認しておらんのです。気が付いたらここに浸かっておりまして、その時は術者との魔力経路を認識出来たのです。しかし、それも直ぐに切れてしまいましてな。仕方なしに、この火山の地脈と儂自身を結び付けまして、魔力不足による消滅を免れた………という訳なのです。まぁ、そのお陰でこの火山から動けなくなったのですが』
竜種を召喚しただけで投げ出した? その術者は、どういう思考回路しているんだ? 阿呆なのか?
オレの常識では、絶対に有り得ない行為だ。凡そまともな奴が実行するような事ではない。ただ、まぁ、ゲームだし、そういう事も有り得るのかなぁと思う自分も存在する訳だが。
「あー、それで? その後、この近辺でソイツの気配を感じた事とかあります?」
『いや、無いですな。と言っても、儂の感知範囲はこの山エリア限定なので、範囲外に居た場合は知覚出来ませんが』
まぁ、多分………来てないだろうな。そんな気がする。
しかし、よりによって竜種を召喚する事が出来たのに、その直後にリリースするなんてな。これは、余程面倒臭いイベントの予感がする。深入りはしないでおこう。何処でイベントフラグが立つか分かったモンじゃない。
「んー、聞きたい事は以上だ。それじゃあ、オレ達は行くんで」
『あぁ、そうだ。召喚された際に一つだけ、儂を召喚したと思われる術者の言葉があってな。それが、今でも儂の魂、核に焼き付いているのだ』
あ、これヤバい奴だ。フラグの予感が凄いする。
「いや、別に興味無いんで。それじゃあな」
オレはアルに、早急にここから立ち去るように合図を送る。オレの意を理解したのか、素早く片手でオレを回収し飛び立とうとする。
そこへ、ルルーナル氏の言葉が突きつけられる。
『“星の獣”に仇為すモノを殺せ、とな』
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EXクエスト : 『“星の獣”』が発生しました。
■■■■火山エリアは、フィールドボス『“灼岩の”ルルーナル』専用エリアとなります。
“灼岩の”ルルーナルを無力化するまで、該当エリアから外へは出られません。
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あぁー。面倒臭い奴だー。
しかも、星の獣というフレーズは、どう考えてもアル関連のクエストじゃねえか。何処でフラグを踏んだのかは知らないが、もしかしたらこの火山に来てしまった時点で駄目だったのかもしれない。
まぁ、如何にフィールドボスが相手でもアルの相手にはならないと思うけどね。
「どうやら、逃げられる雰囲気ではなさそうだ。とっとと片付けるぞ。無力化すればいいらしいし、出来れば殺さずにな」
まぁ、片付けるのはアルさんですけども。………オレ? オレに竜種を何とか出来るとでも?
『了解しました。半殺しで宜しいのですね?』
半殺しとサラッと言っちゃうアルさんが今は心強いですね。ちょっと日常的に言われたらどうかと思うけど。