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山と谷がある話  作者:
03.再度山へ行こう
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 登山道を上る事暫し、”この先、試練の洞窟。現在立入禁止“と書かれている看板と横道を発見した。位置的に考えて、この試練の洞窟とやらが恐らく光亡の洞窟の事なのだろう。

 つまり、この横道を行けば光亡の洞窟に辿り着くのだろう。………でも、確か巨岩が道を塞いでいたような。まぁ、今回は光亡の洞窟に行くつもりは無いのでこの道を通る事は無い。

 そもそも、オレにとっては、光亡の洞窟のクエストはクリア済であり洞窟の先のエリアでリスポーン登録している故に、洞窟自体に用が無いのだ。

 という訳で、看板を横目に見つつ、スルー。先へと進むことにした。

 アルは今の所、特に文句も言わずに付いて来ている。この山を登る事は特にTYPE_Rに関係しない事である事が分かっているのか、海底都市で若干感じていた気負った様子も無い。

 エルデス山を登る最中は、何か珍しい物を見るように辺りをキョロキョロと見渡し、付近を散策していた。


「何か珍しい物でもあるのか?」


『あ、申し訳ありません、お父様。私は製造されてから陸に上がったのが初めてですので、こういった動植物を実際に見て物珍しくて、つい………』


 そういえば、アルはある意味で(カプセル)入り娘だった。今までの話から考えて、製造されてから凍結処理されるまであの容器に収容されたままだったようだし、凍結処理されてからオレによって解放されるまで眠ったままだった筈だ。だから、こうして外へ出て実際に物に見て触れる行為が楽しいのだろう。


『私には、この星の全生物データを記録されてはいますが、こうして実際に見るのは初めてです』


「なるほど。じゃあ、ここらに生えている植物の名前は全部分かるのか」


『はい。骸獣を討滅する(使命を果たす)までに、やりたい事リストの一つを埋められて良かったです』


「………そうか。それは良かったな」


 うーん、何だか重い話になってきたような気がする。面倒事から逃げてきたのに、何故また重い話をしなければならないのか。とりあえず、アルには当面使命とやらを忘れてもらわなくてはならないな。


「ところで、ここまで休憩無しで来たが、SP(スタミナ)値は大丈夫か?」


『特に支障ありません。歩くだけならば、年単位で可能です。お父様こそ大丈夫ですか?』


 年単位で可能とか、どういうSP値なんだよ。いや、アルは超高性能な戦略兵器だ。オレとは比べるまでもなく超高レベルなため、SP値も化物レベルなのだろう。

 まぁ、オレも持久力超強化に変化してから、SP値の減り具合とか全く気にしなくてよくなったけどな。スキルを使わず、動くだけならSP値が減らないなんて超強化って凄いって思ったね。


 そんなこんなで何処となくふわふわした様子のアルを引き連れ、登山する事暫し、オレ達はようやくエンデス山の山頂に辿り着いた。

 いやぁ、何事もない風に流したけど、割と中々大変だった。途中で道が分からなくなったので、登れる場所を探して彷徨ったり、岩と岩の間を登らなければならなかったりと大変な道だった。途中からアルの力を借りていななければ登頂出来なかっただろう。

 件のアルは山頂からの風景を観て感動している様子だ。多分。


『凄い! 凄いです! お父様! 宙域外からの衛生画像は全て記録されていますが、実際に観るこの景色は壮観です!』


 それは、良かった。

 元気にはしゃぐアルとは対照的にオレはSP(スタミナ)を大分消費してしまってグッタリしている。持久力超強化とは何だったかのか。いや、岩場を渡る際に確かに無理な姿勢でかつ両手を使わなければならないような場所が多かったが、新しく生やした腕を複雑に操るために、あんなにSPを使うとは思ってもみなかった。軍事施設に居た頃は殆ど使わなかったしなぁ。


 だが、SP的に死ぬ思いをして登ってきた甲斐はあった。アルの情緒が進化したようであるし、マップも大体埋める事が出来た。………マップが埋まったのは迷ったせいだが、登頂出来たのでヨシ。

 エンデス山は攻略する事が出来た。しかし、これはまだ始まりに過ぎない。何故なら、エンデス山脈はまだまだ続くのだから………。





















『あ、お父様、あそこに誰か倒れています』


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