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山と谷がある話  作者:
02.海へ行こう
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『お父様、周囲に敵性存在有りです』


 え? このアルの威容に畏れを抱かない生物が居たのか? それって結構ヤバい奴なのでは?


『いえ、原生生物ではありません。この識別情報(パターン)は“旅人”ですね。総十二体の何者かが私達の周囲を取り囲むように散開していきます』


 思ったより、面倒臭そうな奴等が来たようだ。オレ達を取り囲むように動いているって事は、警戒しているのではなく、囲んで叩くためだろうか。


『私の見立てでは取るに足らない相手かと思われますが、如何なさいますか?』


 とりあえずは様子見だな。もしかしたら、あの中にヒラメ氏が居るかもしれないし先制攻撃は止めておこう。


「何か怪しげに光る物体があるから見に来たらスケルトンだと? プレイヤーか? アンタ、ここが何処だか分かっているのか?」


 辺りを取り囲むのは、複数の魚人達だ。それぞれの手に三叉の槍を構えている。

 魚人達のリーダー格らしいプレイヤーが一歩前へ出て話しかけてきた。

 それと、彼が言う怪しげに光る物体とはオレの事だ。この骨、透明っぽいだけじゃなく淡く光っているらしい。周囲が真っ暗闇だとよく分かる。因みにアルは隠密モードを継続中なので、相手からはオレしか見えていない筈だ。


「いや? ここには魚に拉致られて来ただけだからな。ここが何処かも知らないぞ?」


 嘘は言っていない。だが、何だか相手の雰囲気が悪い奴っぽいから本当の事も言っていないだけだ。


「ここは“海の牙”の領地だ。勝手に入ってきたなら、通行税を払って貰おうか」


 “海の牙”? それに領地? 何だそれ? またオレの知らない間に追加コンテンツが実装されたのだろうか。

 クランの領地という事は何かしらの手柄を立てて領有を主張しているのだろう。しかし、海底を領地に含めるとは………。通るプレイヤーも居なさそうなのに、彼等はパトロール隊なのだろうか。 

 まぁ、オレには先立つ物が無いので何も出せない訳だが。


「すまないが、訳有って無一文でな。それに、領地と言ったがその機能っていつ実装されたんだ?」


「あ? 金を出せねぇってのか? だったら、ここに命を置いて行きな!」


 リーダー格の魚人が吼えると、周囲の魚人達が襲い掛かってきた。オレが金を払う気が無いと判断して、さっさとキルするつもりらしい。キルすれば死体からアイテムや所持金を漁れるからな。いや、本当に何も持っていないのだが。

 領地とか気になる事を言っていたが、教えては貰えなかった。

 まぁ、多分嘘だと思うけどね。

 ヒラメ氏達が所有する海底都市は、端的に言えばちょっと規模が大きいクランホームだ。ただのフィールドをクランで所有出来るとは考え辛い。

 となると、コイツ等は適当に数と力で脅して金を奪おうとした迷惑プレイヤーだろう。PKよりかはマシ………いや、同類か。


 物思いを止めて、アルの背中をてしてしと叩く。やっておしまいなさい。


『周辺領域掌握。敵性存在を殲滅します』


 オレに急速に迫っていた魚人達。オレの周囲が揺らめき、アルの権能を発揮。彼等の居た空間ごと身体を捩じ切られた。オレの周囲には絞られた雑巾のような物が海を漂う。


 うーん、てっきりビームで薙ぎ払うのかと思っていたら、予想外の攻撃方法でちょっと引いてる。

 確かにアルの存在をバラす訳には行かないから初見殺し出来る方法で排除とは伝えてあるが、やられた方は堪んねぇなコレ。本当に、何をされたか分からないだろう。完全に初見の攻撃で一撃死させられたという事で、彼等のオレに対する評価はヤバい奴判定されそうだな。次会った時は問答無用で攻撃されそうだ。


「………領域掌握とか言っていたけど、こういう事って何処でも出来るのか?」


『周囲に私が所属する軍施設がある場合に限ります。それ以外でも出来ない事は無いですが、発動までに時間が掛かったり不発に終わる場合もあります』


 なるほどなー。まぁ、こんな空間自体を攻撃して物理的に防御不可能な事が何処でも出来る訳ないよな。


 さて、邪魔者は居なくなったし海底都市に急ぐか。さっさとこの場を離れないとさっきの奴等が戻って来てしまうかもしれないしな。

 しかし、“海の牙”ねぇ。ヒラメ氏にでも聞いてみるか。




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