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透明化したままアルに連れられて行った先、オレの頭上には外界の海水を支える水の層。
外へ出るには、ここを切り開いて行くしか無い。行きは重力の助けを借りる事でオレ単身でもどうにかなったが、帰りはそうも行かない。
まぁ、アルの力を借りれば造作もないんですけどね。
ただ、この粘度の高い水を掻き分けて進む必要がある以上、アルにお姫様抱っこされて行く事は出来ない。という訳で、宙に浮くアルの脚を掴みぶら下がる形で行く事にした。これなら、アルの両手はフリーだし、ついでにアルが脚の爪でオレの手首を掴んで固定してくれるので、オレの握力が足らずに外れる心配もない。傍から見た絵面は酷いが効率的なのは間違いないのでこの形で行く事にした。
「そういえば、アルは海底の環境には問題ないのか?」
軍事施設外は海中という事で、呼吸が必要だったり、水圧耐性を持っていない生物は普通は生きてはいけない。オレは呼吸不要だし、水圧はギリギリ大丈夫(大丈夫ではない)だが、アルはどうなのだろうか。多分大丈夫だろうが、一応聞いておかないとな。
『勿論、何も問題ありません。私は、この星の汎ゆる環境に適応出来るように設計されています。海溝の底でも活火山の溶岩内でも、宙域外の真空でも活動可能です』
宙域外での活動も想定されているという事は、やはり骸獣とやらは宇宙にも居るのだろうか。オレは行かないが、そういうのをやるヒトは大変ねっていう事だ。
確認も済んだので、いよいよ出発だ。外での活動に邪魔になるので光亡の外套を脱ぎアイテムボックスにしまう。そのまま宙に浮いたアルの脚に掴まり準備完了。アルは隠密モード(弱)のままだから、傍から見たら両手を上げたスケルトンが飛んでいくという絵面だ。下の奴等に気付かれたら笑い者にされる気がする。
アルはトプンと水の層に入り、ものの数秒で通過。そのままの勢いで海中を泳ぎ、オレが飲み込まれた場所………かは分からないが、軍事施設のハッチの外へと飛び出た。うーん、やっぱり早いな。
『脱出完了です、お父様』
「うん、ありがとう。アルが居てくれて助かった」
オレが純粋に礼を言ったからか、照れたようにはにかむ様子のアル。相変わらずのスケルトンフェイスなので、常人には分からないだろうが。
さて、これからどうするか。確か、ここへ来た時は甚だ不本意だが魚に拉致されて来た気がする。つまり、マッピングは一応されているが、海底都市までの帰り道は分からない。いっその事、アルに海上まで揚げてもらうのも手だろう。
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シークレットクエスト『■■■との邂逅』をクリアしました。『■■■■■■■』が解放されるまで後853623008040022。
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レベルアップ!!
プレイヤー名:トワ
種族:骸龍骨兵Lv.3
LP:50
SP:100
種族能力
打撃属性弱体Lv.2、火属性弱体Lv.1、斬撃耐性Lv.1→Lv.2、刺突耐性Lv.1→Lv.2、水圧耐性Lv.1、生命力半減、持久力強化→持久力超強化、呼吸不要、寒暖無効、飲食不要、死亡時幽体状態可能
保持技能
死んだふりLv.1、透明化Lv.2、気配隠蔽Lv.2
称号
光亡き者、統制管(TYPE_R_Lv.0)、統制管(TYPE_S_Lv.2)
カルマ値:-12
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唐突にレベルアップした。
これは、アレだな。(仮)が取れているという事は正式にレベルアップしたという事だな。
見慣れない種族とスキルと何で生えてるのか分からない称号。そして、順調に減るカルマ。
アナウンスも不穏な事しか言ってないし。何だよ、何が解放されるんだよ。この数字、前にも何処かで見たような気がするな。大体伏字にされているから、何の事だからさっぱり分からないが、恐らく碌な事は起こらないだろう。そんな気がする。
しかし、骸龍骨兵ねぇ………。まぁ、あそこで交換したこの骨のせいだろうけど、それにしてもアルがいうには星冥龍の骨だったらしいが、オレの種族として表示されているのは、骸龍。骸獣は星冥獣の死体から発生した寄生虫のような物らしいが、オレのコレはどういう事なんだろうか。
今の段階では情報が少ない。コレは頭の片隅にでも置いておこう。