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山と谷がある話  作者:
02.海へ行こう
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 近付くに連れて感じるデカさ。このサイズは半端ない。TYPE_Sは星冥獣のクローンとか言ってたな。頭部だけでこのデカさなら、本体含めるとどれだけの大きさになるのだろうか。


 中央部にそこそこ近付く事で、件のTYPE_S_02の頭部の詳細が分かるようになる。宙に吊るされているのは、どう見てもヒトの頭部だ。首から下には何も無く、神経のような筋が垂れ下がっている。頭部だけであるが、やはりデカい。アルと同じ程度と言っていたが、アルより大きいような気がする。

 何だか見覚えがあると思ったら、コイツ、蜘蛛怪人氏と同じ顔していやがる。つまり、あの蜘蛛怪人氏はコイツのクローンなのか?

 TYPE_S_02の周囲には、実験に使う機器が立ち並んでいる。その大半は朽ちているのだが、一部の機械類は電源が未だに入っているのか駆動音が聞こえてくる。


 周囲には、当たり前のように蜘蛛怪人氏や多脚戦車が屯しているが、何故か此方に興味が無いとばかりにその場に佇んでいる。ここに居る奴等はアルに敵対的ではないのか?


『お父様、生命反応があります』


 生命反応? そこらに蜘蛛怪人氏が居るのは分かっているが?


『いえ、蜘蛛怪人型ではなく、私も知って(認識して)いる種が一体、あの制御装置の中に居るようです』


 蜘蛛怪人氏ではない? また新種か? でも、アルに登録されている種って事は、蜘蛛怪人氏とは違ってこの軍事施設由来の奴って事だよな? アル以外に生き残りが居たのか?


 アルが指し示す方向へ歩くと、駆動している巨大な機械が見えた。上部が半透明な素材で覆われており、内部で何かが動いているのが見える。アレがそうなのか?


『どうしますか、お父様? とりあえず、不快な感じがするので攻撃して良いでしょうか』


『いやぁ、それは勘弁して欲しいなぁ』


 知らない声が何処からか聞こえた。

 例の装置から写し出されるシルエットだけの人物が手を振っているように見える。


『ちょっと待っててくれ。準備するから』


 ややあって、巨大装置の下部に穴が空き、スポンとヒトガタが出てきた。

 背は小さいが後頭部がやけに長いヒト型だ。全身を鈍色のスーツを身に纏い、ガスマスクの様な物を口元に付けていた。


『やぁ、初めましてでいいかな? 僕の記録には存在しないようだしね? TYPE_R_05を連れているという事は、TYPE_Rの統制管って事かな?』


「あぁ、その通りだ。成り行きだが、そういう事になってる。アンタは?」


 まぁ、どう見てもNPCなんだが、どういう目的でこんな所に居るんだ? コイツがTYPE_Sの統制管なのだろうか。

 何か、コイツの面を何処かで見た記憶があるんだが、何処だっけな………。


『なるほど。君がTYPE_Rの統制管なのか。となると、エレイン君はリタイアしたようだね? しかし、旅人が統制管に成るとはね。それに、骸骨兵(スケルトン)。一体どうやって………あぁ、種族特性で、か。………あぁ、僕はカーサクラシカ。カーサ博士と呼ばれていたよ』


 カーサ博士と名乗ったヒト型。何だコイツは。オレが名乗りもしない内に、旅人(プレイヤー)である事も、補修で骨を全交換した事も看破した? 一体、何者なんだ?


「………オレの名前はトワ。見ての通り、旅人で骸骨兵(スケルトン)だ。それで、カーサ博士はここで何をしているんだ?」


『そりゃぁ、勿論、TYPE_S_02………引いては星冥獣の研究さ。訳有って僕が目覚めたのは、ほんの数年前でね。TYPE_Sの研究がまだ終わっていないんだ』


 思い………出した。コイツは、オレが骨を全交換した時の部屋内に同じような奴が収容されていた。しかし、アレは既に死んでいたな。それに、目の前のカーサ博士とやらは数年前に目覚めたと言っていた。上のアレとは無関係なのだろう。


「ところで、その格好は一体?」


『あぁ、この場所はTYPE_S_02が放出している有害物質が多量に有ってね。コレが無いと数分で肺が腐って死んでしまうんだ。………スケルトンである君には関係ないけどね』


 なん………だと………?

 チラリとアルの方を見やる。チラ見された事に気付いたアルは何ですか?とばかりに小首を傾げる。空気が猛毒とか、そんな事全く何も聞いていないが? いや、呼吸必要無いからオレには関係ないんだけどさ。せめて、一言くらい言ってもいいんじゃないですかね。


『おや? TYPE_R_05は知らなかったかな? まぁ、知らなくても仕方ない。TYPE_Sに関しては、担当研究員以外には情報規制が為されていたし』


『カーサ博士。貴女はTYPE_Sの統制管ではありませんね? それに、私の記録ではTYPE_S_02の研究は■■■■■■■年には凍結された筈です。貴女はここで何をしているのですか?』


『おやおや、兵器如きが僕に詰問するつもりかい? 確かに、TYPE_Sの研究は不当にも■■■■■■■年に凍結された。しかし、未だに星冥獣は生き残っている。奴等を根絶やしにするためにもTYPE_S_02の研究は必要なのさ。だから、ここで今、僕が彼等の意思を引継ぎ、研究を続けているのだよ』


 どうやら、カーサ博士とやらは統制管の資格を持ってはいないらしい。だからあんなにアルが辛辣なのかな。いや、不快な感じとか言っていたから、それだけでは無いのかもしれない。


「あー、ところで、カーサ博士? 研究ってのは具体的には何をしているんだ?」


『今は星冥獣が骸獣を生み出すシステムだね。TYPE_S_02(これ)もある程度は再現出来るようになったからね。ここまで来る時に見ただろう? 多数の骸獣を。と言っても、TYPE_S自体が星冥獣のクローンだからね。それが生み出す物は骸獣とは呼べないような劣化品さ』


「アレを………アンタが造った………のか?」


 カーサ博士(コイツ)、敵かもしれない。




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