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「そういえば、TYPE_Sってのは、どんな兵器なんだ? アルより強いとか言ってたが」
『………ちょっと前までは、お父様が行ってみてのお楽しみ………と思っていましたが、何やら階下から不穏な気配を感じるので、到着する前に一度ご説明致します』
短く沈黙したアルは、そう前置きをしてから件のTYPE_S_02とやらの詳細を話し始めた。
『TYPE_Sは星冥獣のクローンです。理論上、星冥竜の細胞を埋め込まれた私達、TYPE_Rとは比較にならない出力を有します。………まぁ、それはTYPE_Sが万全の状態であればの話ですが』
「実験機と実践機との違いみたいなモンか」
『端的に言えばその通りです。ただ、クローンとはいえ、星冥獣そのものをコントロールする術は当時は開発されていませんでした。私が凍結処理される前までは、脳の一部を切除して自律行動が出来ないように調整されていた筈です』
「不穏な気配ってのは、その、TYPE_Sが稼働しているって事か?」
アルは目線を下へと向け、頭を振る。
『分かりません。TYPE_S_02が稼働していても、統制管様が居なければ何も出来ませんから。………ただ、』
瞬間、アルの矮躯が紅蓮の炎に包まれた。
『真下からの砲撃です。お父様は隠れていて下さい』
不意を衝かれて爆発したかと思われたアルは炎を手で散らしながら、事もなげに言う。
アルがオレが乗る戦車の機能を操作したのか、作動音を立てながらオレを載せている腹部の装甲が迫り上がり、オレの身体を覆い尽くす。装甲で覆われていても、内部は全周囲モニターのようで、中からでも外が見える様子だ。
『お父様、敵性反応は地下五十一階層に居るようです。この戦車の砲では届きません。私の砲撃許可を』
「オレには何処に居るのか分からん………よし、やってしまえ」
『攻撃、開始します』
アルはガバリと口を開き、光が喉奥へと収束されていく。これは、出会った当初に地下五十一階までぶち抜こうとした奴か。アレよりも出力が小さいとはいえ、ここでそんなモンをぶっ放して大丈夫なのだろうか。
まぁ、アルがオレの安全面を考えていない訳は無いと思われるので、多分大丈夫だろう。………多分。
暫く溜めを作った後、アルの口から一条の光が発射される。それは真下へと文字通りの光速で降り注ぎ、敵を破壊した………らしい。オレからは見えないのでよく分からないが、下の方から赤い光が幾つもポッと灯り、消えていく。
『掃討完了しました。どうやら下は想定していたよりも危険なようですが、このまま進みますか? お父様?』
「うーん………いつもなら帰る所だが、今はアルも居るしなぁ。それに、ここまで来て帰れるかよ。とりあえず帰るのはTYPE_Sとやらの面を拝んでからにしよう」
『了解しました。ただ、今のこの速度で降下しているのは危険です。直ちに降りる事を提案します』
「直ちに? どうやって?」
『私が、抱えて、落ちます』
アルはニッコリ笑って、そう言い切った。
いや、骸骨だから表情は分からないのだが。