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あれから蜘蛛怪人氏やバグった機械を薙ぎ倒しつつ進み、遂に地下五十階まで辿り着いた。
ちょっと色々と端折ったが、蜘蛛怪人氏達が犇めき合う一室や、多脚戦車が何体かが合体した異形な戦車等を見掛けてきた。
これまでの事から分かった事だが、蜘蛛怪人氏と多脚戦車は協力関係にあるようだ。というか、一方的に蜘蛛怪人氏が利用しているというか。
そういえば、最初に出会った蜘蛛怪人氏は下半身も生っぽかったな。しかし、ここらで出遭う蜘蛛怪人氏達は機械の下半身だ。これ等の違いとは一体?
「そういえば、最下層にあるっていうTYPE_S_02って奴はどうしてそんな所にあるんだ?」
アルが地下十八階に配置されていたのに、もう一方の奴は最下層だ。何が理由でそんな使い勝手の悪そうな場所に配置したんだ?
『TYPE_S_02は未完成だったからです。今はどうなのかは分かりませんが………。それと、私と比較出来ない程強力な兵器なので、おいそれと上の階層には置いておけなかったらしいです』
アルよりヤバい兵器って事か?
なるほどな。だから、最下層に安置というか封印をしているって所か。
ところで、件の奴が居るという地下五十一階へはどうやって降りるのだろうか。
『地下五十一階層へと続く扉には、権限を持っている方しか入る事は出来ません。流石に今、その扉が機能しているかどうかは怪しいですが』
「オレは統制管Lv0らしいけど、その権限ってのはオレにはあるのか?」
『残念ながら、お父様はTYPE_Rの統制管ですので、TYPE_Sの権限は付随しておりません』
まぁ、そりゃそうだよな。上で管理調整ユニットにも同じ事言われてたわ。
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『着きました。ここが、地下五十一階へと降りるための場所ですが………ものの見事に壊れていますね』
そこにあったのは、巨大な扉。大きさ的には、アル本体の頭部程の大きさがある。この軍事施設が稼働していた頃には、それは立派な物だっただろう。今では見る影もないが。
わざわざこんな物を付ける必要があったのかどうかは知らないが、下にあるヤバい代物をそれだけ警戒していたという事だろうか。
しかし、扉を堅固にしても、アルがやりそうになったように、地面をぶち破られたら元も子もないと思うんだけどな。
『………あれ? 開いてますね? 形跡的にそんなに月日が経っていない?』
扉を調べていたアルが隙間を見付けたらしく、そんな事を呟く。
開いてる? 最近、誰かが下へ入ったという事か? まさか、蜘蛛怪人氏がこの下にも居るのだろうか。何処にでも出てくるなアイツ等。
『お父様、ここを降りる際は警戒した方が良さそうです。万が一という事もありますので、戦車を戦闘態勢にしておきます』
アルが扉をこじ開けながら言う。メキメキと金属で出来た扉がひしゃげていく。既に扉は原型は留めていないが、ようやく多脚戦車が通れるようなスペースが確保出来た。
扉を抜けた先にあったのは、大きく口を空けた大穴だ。恐らくはエレベーターが存在していたであろうが、今は既に無い。
やはり、ここもまたアルのお世話になるしか無いようだな。
『由々しき事態ですが、恐らく下は敵性存在が多数居ると思われます。よって、今回は私が運ばず、この戦車の機能に頼りたいと提案します』
「あぁ、アルは周回の警戒を頼む」
この蜘蛛型の多脚戦車は、蜘蛛の腹部に相当する部位から、高強度なワイヤーを射出出来る。今回はこれを使って徐々に下へと降りるつもりだ。
アルが言うには、ここから先は何があるのか分からないとの事だ。オレは戦闘方面はさっぱり分からないから、得意なアルに任せておこう。オレが分からないなりにアレコレ指示するのは返って悪いだろうからな。