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山と谷がある話  作者:
02.海へ行こう
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 アルの強引な勧めもあり、新しい方へ乗り換える事になった。

 この蜘蛛型の多脚戦車は蜘蛛でいう腹部が荷物を積載出来るようになっており、オレはそこに座らされた。勿論アルはオレの膝の上だ。

 アルによると、この多脚戦車は本来ならばこの階層には居らず、もっと下の階層である実験階層に配置されていたらしい。にも関わらず、研究階層まで上がって来ている理由は不明。恐らく配置換えがあったのだろうが、それがいつなのかという疑問があるらしい。

 アルは製造されてからずっと地下十八階層に収容されていたのだが、ある程度の期間は意識だけは在ったらしい。その間に言葉遣いやら使命の事やら、なんやかんやと学習していたようだ。

 その時にこの軍事施設の事もアルの権限が及ぶ範囲内ではあるが、情報を記録していた。アルの意識が凍結されるまではそれを続けていたのだが、記録した限りでは、警備用多脚戦車の配置換えの命令は出ていないらしい。

 ここの軍事施設の機能が停止してから、彷徨いだしたのか、それとも何か別の存在がここに配置したのか………。

 アルの解析では、彼女と敵対している蜘蛛怪人氏の下半身はこの多脚戦車を使用しているとの事だ。

 蜘蛛怪人氏の存在といい、突如バグりだした多脚戦車といい、この軍事施設は何かがおかしい。ただのダンジョン、廃虚と化した軍事施設という訳ではなさそうだ。


「そういえば、アルが収容されていたカプセルを蜘蛛怪人氏達が攻撃していた際に大型ドローンが出てきたんだが」


『あぁ、地下十八階層に配備されている鎮圧用のドローンですね。主に私が制御不能に陥った事態に備えて配備された物です。アレ以外にも、私の周囲には色々配備されていたのですが、見た感じほぼ全て朽ちていました』


 どうやら、アルが暴走した時の備えだったようだ。そういえば、やけにゴツい物体がそこかしこに生えていたような。


『まぁ、あの程度なら私を破壊する事は出来ないので、主に魔力吸収によって行動するためのエネルギーを削ぐ目的の装置でした』


 なるほどね。生半可な武器では超生命体であるアルを破壊するには至らない、と。逆に何をすれば、アルを破壊出来るのか気になる所だ。


 オレ達は他愛も無い話をしながら、通路を進む。幾つか研究部屋らしき所を覗いてみたりしたが、どこも朽ち果てており情報らしいものは殆ど得られなかった。


 新しく乗り換えた多脚戦車での移動は非常にスムーズだ。このタイプの物は脚を動かして走る事も出来るが、脚先に反重力装置を取り付けられているため、文字通り滑るようにして移動が可能だ。

 無駄にガシャガシャと音を立てる事も、揺れる事も無いので非常に快適だ。アルが強引に乗り換えを迫った理由が察せられる。

 何となしにアルの頭を撫でる。


『何かありましたか、お父様?』


「いや、特には何も」



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