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山と谷がある話  作者:
02.海へ行こう
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 ガシャガシャと音を立てながら蜘蛛怪人氏の下半身を走らせる。やはり、多脚という事で踏破性は高いようで、多少瓦礫が落ちている通路でも問題なく通る事が出来る。徒歩だと瓦礫自体を乗り越えたりなんなりで、大変だっただろうな。

 この軍事施設が廃虚化する前の地図データをアルが持っているのも良かった。オレがマッピングしているデータと、アルの持つデータを擦り合わせながら、正しい道を選ぶ事が出来るのも大きい。

 だが、この効率的な道選びを持ってしても、未だに地下十九階だ。アルが安置されていた地下十八階が無駄に広いのが主な原因だ。蜘蛛怪人氏達の亡骸も見に行ったしな。

 そんなこんなで、瓦礫を乗り越えたり、迂回したり、時にはアルに任せて撤去したりして進んでいる。


『お父様、前方に何か居るようです。反響立体検知(エコー)の分析では、例の蜘蛛怪人型が一体かと推測されます』


「あー、やっぱりここにも居るのか。そういえば、奴等がアルの入ったカプセルを排除とか言いながら攻撃していたんだが、何故か分かるか?」


『そうなのですか。私の存在を排除しようとしていたという事は、やはり私の所属とは別系統の軍事利用モンスターなのかもしれません』


 少々危険かもしれないが、蜘蛛怪人氏の反応を見てみるのもいいかもしれないな。アルの元々のスペックを考えれば、オレというお荷物が居ても蜘蛛怪人氏を相手する程度なら余裕だろう。


『どうしますか? 迂回しますか?』


「いや、折角だからちょっと向こうさんの出方を見てみよう。いざとなったら、アルも居るしな」


『了解しました。これは、お父様に私の能力を見て貰うチャンスですね!』


 ガシャガシャと何だか進む速度が上がった気がする。兵器のアルってもしかして戦闘狂なのか?


 程なくして会敵するオレ達と蜘蛛怪人氏。

 今度の蜘蛛怪人氏の特徴は、機械の下半身は変わらないが、電動鋸(チェーンソー)の武器腕含めた六腕であり、他の手には実体剣と光束剣を持っていた。

 蜘蛛怪人氏はオレ達の存在を感知していたようで、視界に入ったと同時にカサカサと多脚を動かし急速に接近してきた。


『第一優先破壊目標を確認。排除執行』


 やはり、アルとは敵対関係にあるようだ。第一優先破壊目標とか言ってるし、そもそもアイツ等はこの軍事施設所属ではなく、外部からの侵略者なのかもしれない。だとしたら、あの蜘蛛怪人氏達は一体何処から来たのか疑問が湧く。

 まぁ、とりあえず、蜘蛛怪人氏がオレ達を殺そうと近付いて来るので何とかしなくてはならない。


「アル、どうやら会話に応じる気は無いらしい。相手に遠慮はしなくてもいいが、周りの状況には配慮してくれ」


『分かりました、お父様! コンパクトに殺してきます!』


 アルはオレの上から降り、ドゴンッと何かの破砕音と共に迫っていた蜘蛛怪人氏の頭部が消失する。蜘蛛怪人氏の頭のあった所には、片腕を上げながら飛び上がったアルの姿が見える。

 オレの目には全く見えなかったが、地面に降りたアルが床を破壊しながら蜘蛛怪人氏の正面まで一足で飛び、タイミングを合わせてその場でジャンプ、そのまま蜘蛛怪人氏の顎下に向けてアッパー。相手は死ぬ。という感じの事が起こったんだろう。多分。

 アルはそのまま蜘蛛怪人氏の胸部を蹴りつけ、その反動でオレの所まで戻ってくる。ついでに蜘蛛怪人氏の胸部は爆散し、六腕がブラブラと揺れている。

 武器の重みでブチリと千切れ腕が落ち、同時に下半身も崩れ落ちた。

 確かにコンパクトだが、何だか方法がエグいなぁ………。


『どうやら、彼等は頭部を潰せば機能停止するタイプでは無いようです。ですので、ダメ押しで胴体部を破壊しました。下半身の方は突進してくる時にハックして動きを止めておいたので問題なさそうです』


 蜘蛛怪人氏が使っている状態でも、操作権奪い取れるのかよ。つまり、蜘蛛怪人氏がオレ達に迫ってくる時に、いきなり下半身が動かなくなったのか。オレが考えたよりもエグい殺し方だったわ。

 アルは褒めて褒めてとアピールしてくる。はいはいすごいすごい。


『むぅ。何だか撫で方がお座なりな気がします』


 適当にやってたのがバレたか。まぁ、ちょっと考える事多かったからね。仕方ないね。


「それより、蜘蛛怪人氏の乗り物を無傷で手に入れられたのはよくやった。これで、二人乗りしなくてもよくなったな」


『えっ。あっ、お父様! この乗り物は壊れているみたいです!』


 そうか、壊れているのか。なら仕方ないな、って嘘だろそれ。


「………オレに虚偽の報告をするつもりなのか?」


『申し訳ありません、お父様。確かにこの乗り物は利用可能です。しかし、私はお父様との二人乗りがいいのです!』


「正直で大変宜しい。まぁ、二列縦隊で行くのも問題が出てくるだろうし、暫くはこのままでいいだろう」


 二台あれば、片方が故障した時に乗り換え出来れば便利そうだなと思ったが、二人乗りがお気に召したのなら仕方ない。

 オレは再度アルを脚の上に乗せ走り出す。



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