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山と谷がある話  作者:
02.海へ行こう
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 ログイン二十五回目。


 ログイン直後に見たのは、オレの目の前で三角座りをしているアルの姿だった。

 ログインすると、オレのアイテムボックスから出てくると言っていたな。ログアウト以外でもオレの任意でアイテムボックスに入れる事は出来るのだろうか。

 なんやかんや試してみたものの、やり方が分からないので保留にしよう。


「さて、ここから歩いて最下層を目指す訳だが、何か質問あるか?」


『歩いて、ですか? 何か特別な乗り物に利用せずに、最下層へ行くのは非効率だと思いますが』


 分かってないな。自分の脚で歩くのがいいんじゃないか。


「乗り物と言ってもな。この施設の状況を見て、そんなものが在ると思うのか?」


『お父様が私に乗っていくのはどうでしょうか』


「却下。オレにそんな趣味はない」


 それに、アルに任せたら行き止まりに当たったら、とりあえずぶち抜きますね、とかになりそうで怖い。気軽に壁破壊してこの海水が流れ込んできたらどうなるのか分かっているのだろうか。

 しかし、乗り物ねぇ………。確かに有ったら便利そうだが、そう都合よく………ん?


「いや、待てよ? あるぞ。乗り物。使えるかどうかは分からんが」


『心当たりがあるのですか、お父様! 流石です!!』


 心当たりとは、上で見掛けた蜘蛛怪人氏の下半身だ。

 蜘蛛怪人氏の下半身が乗り物である説は、例のドローン戦でハッキリしている。アレを動かせる事が出来れば、踏破性は向上するだろう。

 大型ドローンの方でもいいかも知れないが、通路通れるかどうか怪しいしな。

 しかし、蜘蛛怪人氏の下半身は、ここから結構上にあるんだよなぁ。昇降設備が無い以上、あそこまで戻るのは骨がかかりそうだ。


「よし。とりあえず、上に戻るぞ」


『上? ですか? ならば、私をお使い下さい。このそこそこ広い空間ならば、飛翔する事も出来ますし』


 そういえば、アルにサイズ調整して上まで運んで貰えば早そうだな。

 さっきアルの提案を蹴ったばかりだし、ここは受け入れてみるか。上に戻るだけだし、酷い事にはならないだろう。


「じゃあ、ちょっと頼むよ何処に行けばいいかはオレが指示するから」


『はい! お任せ下さい! お父様!!』


 喜色満面、といった様子のアルが再度大きくなる。


『お父様、ちょっと失礼しますね』


 そう言うとオレを摘み上げ、ふわりと宙に浮く。

 ………何か想像と違うな。せめて掌の上に乗せて欲しい。これではまるで、オレは荷物扱いだ。



 *******



 少しの時間で、目的地まで辿り着く。やはり宙を飛べると早いな。


『お父様、これは一体?』


「多分ここの警備用のモンスターだと思うんだが、蜘蛛怪人みたいな奴が下半身として使っていた乗り物だ。オレ達が使えるかどうかは分からないが」


 蜘蛛怪人氏が乗り捨てて行った下半身だ。何となくここまで来たけど、そういえば彼等はどうやってこれを動かしていたんだろうか。


『蜘蛛怪人みたいなモンスター? 私の記憶容量(データ)にはありませんね………。外部から入り込んだか、私よりも後の時代に造られたのでしょうか』


「あー、知らない奴だったのか。とすると、この多脚戦車みたいな物の動かし方も分からないか?」


『いえ、私には特殊な兵装以外の機械ならば、優先的使用権が与えられていますので、生きている物なら大抵扱えるかと』


 アルはそう言いながら、蜘蛛怪人氏の下半身をジロジロと眺める。脚を持ち上げてひっくり返したり、蜘蛛怪人氏との接合部を見たりしている。

 小さくなっても出力(パワー)は強いままなのか。あの矮躯で金属の塊のような物体を悠々と持ち上げられる姿を見ると、正直引く。


『どうやら、この接合部で物理的に上半身と接続しているみたいですね。私にはコレに該当するコネクタは無いですが、何とか大丈夫そうですね』


 アルが何事かを念じると、蜘蛛怪人氏の下半身だった物は、ガシャガシャと音を立てながら立ち上がる。これって、アルが動かしてるんだよな?


『はい! 掌握完了です! これで、私の意のままに動かせます!』


「おぉ、本当に動かせるとは思わなかった。よくやったなアル」


 よしよしとアルの頭を撫でてやる。何だかつい、良さげな高さに頭があったので。アルは何だか嬉しげな雰囲気だ。多分。


「さて、どうやって乗っていくか………。これって今の所アルじゃないと動かせないんだよな?」


『はい。私が操作系統をハックしているので、私が動かすしかないですね。お父様にも同じ機能があれば、お渡しするのですが』


 ふむ。なら仕方ないな。

 搭乗しやすいように身を屈めた蜘蛛怪人氏の下半身に乗る。接合部は上半身がくっついていた所だが、思ったよりも広く、オレが座る程度には広かった。

 オレとアルの二人乗りになる訳だが、アルはコイツを操作する必要がある。しかし、コイツは広さ的に一人乗りっぽい。という事は、配置的にこうなる訳で。


『え? お父様? 何をなさるのですか?』


「コイツを使うためにはアルの力が不可欠だ。しかし、コレはどう見ても一人乗り。となると、こうするのが最適解だと思うが?」


 蜘蛛怪人氏の下半身の上にオレが座り、胡座をかいたオレの上にアルを座らせる。完璧だ。



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