06
ログイン六回目。
いやぁ、(略)。
嫌な事件という訳ではないんだが、如何せん話が長すぎた。途中で何言ってんのか分からなくなって寝落ちしそうになったよね。種族的に睡眠不要な癖にな。
フレンド欄を見るに、ゾンビーフ氏はログインしているらしい。今回も元気にゾンビ狩りに勤しんでいるのだろう。
さて、オレの方は何をするかね。
前回は、ゾンビーフ氏のインパクトが強すぎて何をするとかなくログアウトしたからな。ゾンビ、エリアボス、ゾンビ犬、ゾンビーフと来て、今回は何と遭遇するだろうか。オレは共同墓地を後にした。
来ましたるは墓地外の森の中頃。前回はゾンビ犬に遭遇したのだが、今回は奴はスルーする。
何か普通の腐ってないモンスター居ないのかな。ゾンビーフ氏が言ってたように、同族とのエンカウント率が高いのだろうか。………いや、待てよ?同族と言っても遭ったのは、ゾンビとゾンビ犬じゃねぇか。不死族という括りの中での同族には未だに遭っていない。
これは、共同墓地周辺が単にゾンビタイプとの遭遇が高めに設定されているエリアなのではないだろうか。
まぁ、オレと同じようなスケルトンに遭ったら簡単に倒せそうではあるな。骸骨兵は種族特性として生命力半減と打撃弱体を強制的に持たされているからな。打ち所が悪ければ、その辺りの木の枝で一撃も出来るだろう。
森の獣道をガサガサいわせながら歩く。割と危険そうな草が飛び出ている場所を剥身で通ったら切り傷ばかりになるだろうが、オレの身体は骨のみだ。ついでに斬撃耐性も付いている。平気の平左で歩く事が出来た。
暫く歩いていると、ふと視線が高くなった気がした。
何だかいきなり一メートル程視点が上がったような………思わず下を見てみると頭が無いまま歩いている白骨死体。
何だこれ。
ん? 白骨死体? もしかして、オレの身体では? しかも頭が無い? オレの頭ってどうなってんの?
頭上からギチギチと何か軋むような音が聞こえる。恐る恐る上を目だけで見やると………目なんてものは無いが………白っぽい巨大な物体が八つの眼で見つめていた。
こめかみからギリギリと音がする。頭上の蜘蛛が巨大な牙でオレの頭を砕こうとしている音だ。刺突耐性を持っている筈なのに、牙の鋒が頭蓋骨を貫通してきたような気がする。痛覚は無いが、LPがガンガン減っていく。ベキリという音と共にオレの頭蓋は上下に寸断され、オレは死んだ。
フワっと幽体状態になってから、改めて蜘蛛の方を見やる。
白く巨大な蜘蛛だ。こんな奴が頭上から落ちてきたら気の弱い奴ならそのまま失神するだろう。
蜘蛛は青、白、赤のトリコロールカラーだ。何処ぞの主人公機みたいな彩色だな。無意味にセンスが良い配色なのが無駄にムカつく。
蜘蛛はオレの死体を見詰めた後、木々の茂みの中へ戻っていった。
因みにオレの頭蓋が蜘蛛に咥えられていた時、身体の方は頭が無いにも関わらず頭を取り返そうとピョンピョンと跳ねていた。オレはそういう風に動かしていた訳ではないのにな。
しかし、森の中はこの難易度。これってもしかして、墓地の中が一番平和なのでは…?
一抹の不安を抱えた中、オレはログアウトした。