表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山と谷がある話  作者:
02.海へ行こう
59/460

59

 


『─────────』


 音が小さすぎて何言ってるのかさっぱり聞き取れませんね。もっと大きな音でお願いします。


『────────?』


 ふと思ったけど、これ音じゃないな。多分だけど、コイツは脳内に信号を送ってる感じがする。残念ながら骸骨兵(オレ)には脳なんて物は無いので頭蓋骨の内部を反響してるだけだ。それで変な感じがするのか。


『───────音声出力に切り替えます』


 おや? 何処からか機械質な声が聞こえる。音声出力に切り替えるって事は、やっぱり思った通りの事が起きてたのか。


符牒(コード)R。情報管Lv1を確認────訂正。統制管Lv0を確認。お初にお目に掛かります。統制者(ご主人)様』


 ご主人様? もしかして、オレの事か? でも、オレは偶然にここへ辿り着いてしまっただけの一般スケルトンだぞ。誰かと間違えてないか? いや、長年放置されすぎてておかしくなっているのでは。

 とりあえず、折角音声出力してくれているようだし、言葉が通じるか試してみるか。


「あー………初めましてだな。オレの名前はトワ。そちらは………何者なんだ?」


『統制者個体名称、トワ、ですね。所有登録しました。これより、TYPE_Rはトワ様統括の兵器として運用を開始します』


「は? いやいや、ちょっと待ってくれ。TYPE_R? 何だよそれは? それより先に、まず説明を頼む」


『了承しました』


 了解を示す音声が流れ、不意にカプセル内に納まっている姿が顕になった。

 カプセル内に収容されていたのは、竜種(ドラゴン)だった。そりゃあ、竜種ならバカデカい収容装置が必要だわな。


『彼女は、対骸獣(ガイジュウ)殲滅用決戦兵器。TYPE_R_05です。統制権限Lv0の統制管のみ運用可能な生物兵器ユニットです』


「骸獣………?」


『骸獣とは、ご存知の通り我々の大敵であった“星冥獣”の死骸から湧き出て来た寄生虫の総称です。都市を喰らう獣、万物を汚す蟲等、侮蔑用語を含めた様々な呼び名がありますが、端的に表すのならば、世界の敵(ワールドエネミー)です。彼女はそれに対抗するために造られたRクラスの一体です』


「なるほど………? 世界の敵(ワールドエネミー)ねぇ? ん? Rクラスの一体? 他にもあんなのが居るのか?」


『はい。各地に散らばる我々の拠点に最低でも一体は配備されています。更に、この施設内にはTYPE_S_02も一体配備されています。』


 拠点毎に竜種が配備されてるって結構ヤバいのでは? 竜種ならば、確定でレイドボス扱いだ。最強種のレイドボスが無数に居るってちょっと頭が痛くなるな。まぁ、オレはレイドボスなんてどうでもいいけど、カイリ氏辺りが聞いたら発狂しそうだな。


「あんなのが、この施設内にまだ居るのかよ」


『はい。ただ、トワ様はTYPE_Rの権限Lv0のみをお持ちのようですので、TYPE_Sの方は別の統制管様が管理なされています』


 別の統制管? そんな者が居るのか。そもそも、何でオレが統制管扱いされてるのかも分からんのに、まだ他にも統制管が居るのかよ。しかし、さっきから喋っているのは一体誰なんだ? 妙に詳しい割には言葉の端々に他人事感が否めないんだが。


「カプセル内に入ってるのを、彼女って呼んでたけど………今オレと話しているアンタは誰なんだ?」


『私は、TYPE_R_05が開放されるまでの管理調整ユニットです。着任された統制管様への説明係も兼ねています』


「なるほど。コイツはこのままにしておくって事は出来ないのか?」


 見なかった事にしたい。コイツをこのままに出来ればヘンシェル氏のような事にはならないだろうし、厄介事は増えないだろう。


『既に凍結解放処理に入っておりますのでその命令の遂行は不可能です。新たに凍結処理をされる場合は、担当部署にお問い合わせ下さい』


 いや、担当部署って何処だよ。そもそも、既にそんな部署存在してないだろ。

 若干呆れの目線を込めてカプセルの方を見ると、カプセル内を満たしていた液体が徐々に減っているのが見えた。

 あっ、これは、もうどうにもならないですね。


『ハッチ解放。TYPE_R_05凍結解放完了しました』


 調整ユニットの機械質な声が響く中、カプセルから解放された竜種はズルリと内部から滑り落ち、台座の上に横たわった。

 横たわった竜種の目は閉じられ、ピクリとも動かない。………これって死んでいるのでは? 生死の確認はしてなかったんですかね調整ユニットさん?


「動かないけど………もしかして死んでる?」


 調整ユニットの返答は来ない。何だよ。想定外の自体が起こってフリーズしてるのか?

 そのまま竜種を見ていると、けほりという音と共に竜種の口が開いた。

 開いた口にはゾロリと鋭利な歯が並んでおり、あれだけで“黒疫”のキール辺りなら八つ裂きに出来そうだ。

 竜種の目が開き、辺りを目だけで見渡した後、ギロリとオレを見据える。視線だけで気の弱い奴なら殺せるレベルだ。ヤバいなんてもんじゃない。ここからとっとと逃げなければと思うが、脚が自由に動かせない。オレにこの感覚は覚えが無いが、これは噂に聞く威圧スキルって奴か。オレの精神は一切動じてないのに、身体が麻痺したように動かないのは、威圧スキルチェックでミスったか。


 竜種は身体を横たえたまま、オレを見て口角を上げた様に見えた。



『初めまして!お父様!!』




 …………………………はい?


 威圧にも動じなかったオレの精神がフリーズした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 初めましてお父様 ガイコツにドラゴンの娘が出来ました(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ