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下へ行こうと思ったが、辺りを見渡してみても階段とかそれっぽい物が無い。下にも壁にへばり付くようにして通路があるにも関わらず、昇降設備だけ無いってどういう事だ。この施設を使っていた奴等はデフォルトで宙を飛べたのだろうか。
残念ながらオレに宙は飛べないので、下の通路へ行くためには、通路の端からぶら下がって降りるしか無い訳だが。しかし、オレには先程新たに生やした腕がもう一対ある。これを活かしてどうって事は………腕増えても余り関係ないな。
通路毎の高さはそんなでもないので、最悪飛び降りれば下の通路へ行けるのだが、オレの場合は打撃弱体がある。着地した衝撃で脚を骨折とか普通にやりそうで怖い。
そういえば、さっきのレベルアップ(仮)で打撃弱体もレベルアップしていたな。もしかしたら、この高さ程度だったら骨折はしないかもしれないが、今試すのはよくないな。
やはり、あの時脚を補修しておけばよかった。骨折した時に予備パーツとして使えるからな。
なんやかんやで、例のカプセルの様子が伺えるような所まで来れた。
カプセルの周囲に人影が見える。オレより先にプレイヤーが探索していたのか、もしくはヒトガタのモンスターか。人影の周りでチカチカと何かが光っているが、ここからだとよく分からない。もっと近付けば何をしているか分かるかもしれない。
アイツ等、何だか見覚えがあるような無いような………。カプセルの周囲に居るのは、蜘蛛怪人氏達だった。多分。
多分と付くのは、オレが見慣れた蜘蛛怪人氏の姿形では無かったからだ。今オレの目の前に居る奴等には、蜘蛛怪人氏の所以たる蜘蛛型の下半身が存在せず、二本の脚で立っている。アレ等は蜘蛛怪人氏の別規格なのか? それとも、蜘蛛怪人氏の下半身だと思っていた物は乗り物だった?
彼等の周囲が光っているのは、どうやらカプセルをそれぞれで攻撃していたからのようだ。各々が持つ兵器で間断なくカプセルに攻撃し続けている。
おや? 四本腕に火炎放射の奴が居るな。もしかしなくても、上で壁前待機していた奴か? となると、梯子の下で下半身を脱いでいった奴か。やはり下半身、乗り物説が有効のようだな。問題は何故、移動性能に優れている筈の蜘蛛脚をあの場に放置していたかなんだが。
『排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除』
蜘蛛怪人氏達は何だか物騒な言葉を繰り返しながら攻撃し続けている。
しかし、何でアイツ等は謎のカプセルを攻撃しているのだろうか。アイツ等は暫定的ではあるが、この施設の警備用モンスターの筈だ。にも関わらず、この施設の設備を破壊しようとしている。
しかし、あのカプセル硬いな。オレがここに来る前から攻撃している筈だと思うが、傷一つ付いていない。何で出来てて何が入っているんだ? まぁ、多分蜘蛛怪人氏が排除しようとする程のヤバい奴なんだろう。そんな奴を見てみたくもあるが、オレにあの蜘蛛怪人氏の集団を排除出来る実力は無い。とりあえず、様子見に徹しますかね。
蜘蛛怪人氏達が繰り出す騒音の中、何かが聞こえた気がする。聴覚を澄ましてみると、何かの機械音がこちらに近付いて来るようだ。他のモンスターかもしれない。オレは透明化と気配隠蔽を使い様子を窺った。
飛んで来たのは大型のドローンだ。目算だが、オレ二人分位の大きさの奴が三機、上空から飛んでくる。三機のドローンにはドローン自体の全長程もある砲身が付いている。物騒極まりないが、蜘蛛怪人氏達の増援にでも来たのだろうか。
三機のドローンはオレには気が付いていないのか、高速で蜘蛛怪人氏達の所へ向かい、そのまま奴等に体当たり。蜘蛛怪人氏を砲身にぶっ刺したまま通過し、カプセルから離れた所まで行き蜘蛛怪人氏の亡骸を下へと篩い落とした。
どうやら、蜘蛛怪人氏達のお仲間では無かったようですね。
蜘蛛怪人氏達はカプセルへの攻撃を止め、ドローン達への攻撃に切り替える。数では蜘蛛怪人氏達が勝っているとはいえ、制空権を取っているドローン達には為す術もなく、ドローンを一機落とす頃には、彼等はたった二体へと数を減らしてしまっていた。その後も奮戦虚しく全滅。蜘蛛怪人氏達はカプセル前から排除され、大型ドローンは上空へと帰って行った。
これは、チャンスですね。




