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山と谷がある話  作者:
11.バカンス(仮)
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「ふむ。ここも私が行こう。戦えるのは私とエンデさんだけのようだし、恫喝してこない分、先程の者よりかは話が通じそうだ」


 車から颯爽と出て行くロドリック氏。さっきの盗賊達に、“勇者”だと全く認知されて居なかったのが少し思う所があったようだ。

 まぁ、でもここの奴等も街から遠く離れているし、知らない可能性は高いんじゃないだろうか。


 賞金首氏は車から出て来たロドリック氏を見て、ギョッとした顔をしている。まさか竜人が出て来るとは思っていなかったのだろう。それとも、ロドリック氏を知っているのか?


「あんたが代表者か? 恐らく知らないと思うが、ここは新しく出来た関所なんだ。………まぁ、余り建設が進んでいないのは大目に見てくれや。何せ急遽決まったからな。………まぁ、見た目通り、まだ未完成だから通行税は払わなくてもいい。ただ、ここの名目は“街道に増えつつある盗賊被害を軽減するため”なんでな。それの活動資金の献金をカンパしてくれると正直ありがたい」


 何だか普通にありえそうな話してるな。ツィルディエンデ氏から事前に詐欺で賞金首とか聞かされていなかったら、信じてしまうところだった。


「なるほど。ところで、何故キミ達がそんな国の衛兵のような真似事を? キミ達、犯罪者だろう?」


「あー、アンタも俺達を知っている口か。まぁ、確かに俺達は犯罪者だったが、少し前に国に捕まっちまってな。今はそれの罰としてこんな事をやっているんだ。相手は殺しを厭わない盗賊団だからな。衛兵隊より、命が軽い俺達の方が使い勝手がいいんだろ。………勿論、監視枠も居るぜ? でないと、堪え性の無い奴等はとっとと逃げちまうからな」


 うーん。これまた、説得力のあるような答え。犯罪者を消耗品かのように扱う倫理観の無さが拍車を掛ける。まぁ、元々生死問わずの賞金首だったからそんなモンか。


「アレって本当なんですか?」


 クオンが隣に居るゾンビーフ氏に尋ねる。それに対してゾンビーフ氏は渋い顔だ。


「うーん。難しいところですね。例え犯罪者とはいえ、命を失うかもしれないような危険作業をやらせるのは人権侵害も甚だしいですが、あり得なくもない話です。」


 星の文明力が低いとそういう事もしますよね。まぁ、それが高過ぎても消耗品の人的資産扱いされて更に低くなりがちのようだが。………オレの星? そもそも、オレしか居ないから人権も何も無い。


 さて、ロドリック氏はアレに対してどうするつもりなんだろうか。


「なるほど。新規の施設か。………では、とりあえず武器をしまって貰ってもいいかな? ほら、私は無手なんだしさ。ところで、ここの責任者は、その監視役の人なのかい? 出来ればその人に出てきて欲しいものだけど」


 ロドリック氏は物腰柔らかに言う。無手とか言ってるけど、あのヒトなら素手で目の前の元盗賊氏をボコボコに出来ると思う。竜人の身体性能の高さがね。


「そうしたいのは山々だが、こちらの安全面を考えてそれは出来ない。アンタ等が俺達に害を為す盗賊の類では無いって事はまだ分からないからな。だが、監視役を呼ぶ事は出来る。ここに誰かが来た事は、向こうにも知らされているから、そろそろ来る筈だ」


 さて、監視役とやらがここへ来るらしいが、どんな奴なのだろうか。盗賊等の賞金首を始めとした元犯罪者達を束ねる役職だ。嘸かし見た目も中身も強そうな奴が来るに違いない。



 *****



「やはり、テメェか。ロドリック………。やたらと強そうな竜人が来たとか言われたから、もしかしてと思ったが。テメェが例の街………イチバンに居た事は知らされていたからな」


 他の人相の悪そうな奴等に連れられて来たのは、普人族の男だった。ロドリック氏を知っているようだが、もしかして知り合いなのか? いや、先々代勇者ならば、オレのような余程疎くない限りは誰でも知っているか。


「やぁ、まさかここでキミに会うとは思わなかったよ。早々に降ろされたとはいえ、四代目勇者が犯罪者達の元締めとはどういう事なのかな?」


 犯罪者達の監視役という事で、てっきり住民(NPC)なのかと思っていたが、旅人(プレイヤー)だった。しかも、四代目勇者とな。

 確か、アレだろ。四代目勇者って、無謀にもイチバンの領地を取り戻すとか何とかで乗り込んで、TYPE_R_03に返り討ちにされた上に、その不祥事で“勇者”の称号を取り上げられた奴だろ。確か、“勇者”としての呼び方は“残虐系俺様勇者”とかそんな感じ。

 そんな奴が何でこんな所に?


この星の命の価値は低め。作者の胸先三寸で雑に殺す事が出来るのでとても楽。

まぁ、一番ポンポン死ぬのは主人公ですが。

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