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本題だ。これから海底都市に行くのはいいが、どうやって行くつもりなんだろうか。オレは都市のテレポート機能で直接飛べるが、他の面子はそれを使えるのかどうかだ。
ゾンビーフ氏は海底都市に行った事があるようだし問題ないだろう。残りの面子、特にロドリック氏は無いだろうな。
テレポート機能を使わないとなると、例の湖から水中を通っての移動だろうか。確か、あの時はヒラメ氏に連れられて行ったから、行きの道なんてのは殆ど分からない。まぁ、地図を見ればいいんだが。真暗闇の水中を道順通りに移動出来るのかという疑念もある。
あの湖に再度行ったとしても、“海の呼び声”の面子に出会う事は無いだろう。やはり、地図を頼りに行くしかないのか。………いや、そういえば、ゾンビーフ氏はどうやって海底都市へ行ったのだろうか。
「私ですか? 第三の都市は海沿いにありましてね。そこからの船での直通便でしたね。まぁ、直通便と言っても、途中で船から落とされるんですけど」
その直通便とやらは“海の呼び声”が運営しているらしく、様々な旅人や住人を呼び込んでいるようだ。海底都市を観光地化でもしたのか?
まぁ、あの湖からの道を辿るよりかは簡単そうな道だ。じゃあ、その直通便の船を使う方向で行くか。
ところで、オレは第三の都市って所へ行った事無いんだけど何処ら辺にあるんだ?
「第二の都市………あぁ、今は街があった山が吹き飛んだお陰で麓に難民キャンプがあるんですが、そこから歩いて三日程度。ここからなら、大体一週間で着きますね。行った事無いのは………トワさんだけですかね?」
オレ以外はそれなりにゲームを進めている旅人だ。旧イッカクから王都への道は南下していくらしい。対してオレは、第二都市へ行った以外は殆ど北上している。いや、海底都市は南にあるらしいので南側に行った事が無いという訳ではないが。
ともあれ、第三都市へ行った事が無いのは事実だ。まぁ、行くだけならTYPE_R_03でカッ飛んで行けばすぐだからいいんだが。
「第二潰れたせいかは分かりませんが、第三都市行きの乗合馬車があります。………まぁ、車を牽くのは馬ではないですが。それに乗って行きましょうか」
オレ以上にイチバンに詳しいゾンビーフ氏が主導して案を出してくる。ツィルディエンデ氏は分からないが、オレもロドリック氏も街の機能に関してはさっぱりだから正直有り難い。
「あれ? トワ様こんな所で何してるんですか?」
後ろから声が掛けられる。オレの事を様付けするような奴は数える程度しか居ない。いや、様付けするのは止めて欲しいんだけど。
というか、この面子が居る中でよく話し掛けてきたな。
「もしかして、お取込み中でした? いやぁ、すみません。ウチのトワ様が迷惑掛けていません?」
若干失礼な物言いで、ずけずけと言うのは、思った通りのクオンだった。コイツとは“渋谷の星”で別れた以来だったか。こんな所で何してるんだ?
「いえ、トワ様の方が珍しいでしょ。基本こんな所には寄り付かないヒトが居るとか、一従者としては気になりますって」
まぁ、それもそうか。真っ当にこの星を楽しんでいるらしいコイツならば、冒険者組合に来るのは自然な事か。ところで、その、オレを上に立てるような言い方止めて欲しいんだが。
「えーと、トワさんのお知り合いですか?」
ゾンビーフ氏がやや困惑げにこちらへ聞いてくる。まぁ、クオンとオレの関係を推し量ねているのだろう。
「あぁ、コレはオレの知り合いで、謂わば同郷の友人みたいな関係ですね」
「申し遅れました。私の名前はクオン。友人なんてとんでもない。私はトワ様の物であり、トワ様の従者です。以後、お見知り置きを」
クオンさん? もっと言い方考えてくれない? 現にツィルディエンデ氏とロドリック氏の視線が痛いんだが?
「従者? 可愛い女の子を侍らせて………。トワさんはそういう趣味があるようだね?」
違います。
「トワっちがご主人様って事は、主従関係のRPって事ッスか? 違う? 元々の関係性がそう? なるほど。いやぁ、トワっちも隅に置けないッスね!!」
違います。いや、違くないのか?
クオンはオレの一部であるが、主体はオレだ。そういう意味では、主従関係と言えなくも無い………? いや、あの言い方は悪意があった。
「トワさんの身内という事ならば、今回の旅に同行しますか? 私達は構いませんが」
「え? トワ様、また何処か行くんです? しかも、他の旅人さんを連れて? 珍しい事もあるんですねぇ」
オレをぼっちみたいに言うな。まぁ、勝手に付いてくるTYPE機を含めなければいつも独りだけどさ。
クオンに斯々然々。これから第三都市へと行って、海底都市へ向かい、最終的には“南の島”へと行くんですよと。
「南の島ですか。いつ出発しますか? 私も同行しましょう」
クオンに食い気味に回答された。ついでに、肩をがっちりと掴んでいる。ただ、掴んでいるのはTYPE_R_03だが。
付いてくるのはいいんだが、向かう先は海底都市だぞ? 水圧耐性とか水中呼吸とか有るのか?
「え? 持ってますよ? いつでもトワ様の元へと駆けつけられるように、各種耐性は揃えています。仕える者として当然の義務です」
驚いた事に水圧耐性も水中呼吸も持っているという。レベル上げに勤しんでいる事は知っていたが、そんな事態になっていたのか。何なら、オレより強くなってるんじゃないか?
「まぁ、積もる話もあるでしょうが、とりあえず出発します? 先程、街まで行く乗合馬車と言いましたが、私の私物を出しましょう。いえ、最近作ったばかりの新作なんですが、それの試運転も兼ねている訳ではないですよ? 流石に、安全性は確認しました。まぁ、あの時は個人で行っていたので、今回のような複数乗った状態では確認していませんが」
それを試運転というのでは? まぁ、便利そうな代物を出してくれるのならば、素直に有り難い事ではある。えーと? 今旅へ同行するのは何体居るんだ? オレ含めて五体か。
乗合馬車とやらが何体乗れるのかは知らないが、場合によってはバラけて向かう事態になっていたかもしれない。そこをゾンビーフ氏の私物でどうにか出来るのだ。まぁ、自作の洗剤で旧イッカクの城壁に穴を開けるという前科があるゾンビーフ氏なので一抹の不安がある事は確かだが。………いや、アレってもしかしてわざとだったのか?
新作始めました。
乙女ゲーム的な世界線に転生した主人公が何やかんやする話です。
シリアス無し、戦闘シーン無しのほのぼの(当社比)話です。




